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防災・減災、賃貸住宅オーナー5つの心得

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2018年9月 4日

防災・減災、賃貸住宅オーナー5つの心得

9月は防災月間です。賃貸住宅オーナーとして、何に気をつければいいのか?また、被災してしまったら、その後の賃貸経営はどうなるのか?注意しなければならないポイントを確認したいと思います。

心得その1-地域の災害危険度を把握する

今年は、観測史上第一位の豪雨が猛威を振るっています。「平成30年7月豪雨」では岡山県、広島県で大きな被害がありましたが、瀬戸内海地方はもともと雨の少ないエリアだっただけに、想定外の大雨で災害がどの程度になるかを予想するのは大変難しかったと思います。

それでも台風や豪雨は、天気予報や各種の注意報・警報などからある程度は事前に察知することができます。大切なのは、物件のある地域の災害危険度がどの程度なのかを把握することです。それを表したのが「ハザードマップ(災害予測図)」です。
ハザードマップは「国土交通省ハザードマップポータルサイト」で調べることができます。

■国土交通省ハザードマップポータルサイト

各市区町村の洪水ハザードマップでは過去の災害を元にシミュレーションを行っています。例えば東京都の一部地域では平成12年9月の東海豪雨(総雨量589mm、時間最大雨量114mm)を想定して、浸水エリアや浸水の深さについてシミュレーションしています。また、大きな河川の荒川の場合は3日間の総雨量632mm、多摩川は2日間の総雨量588mmを想定してシミュレーションしています。

これらのハザードマップを読み取り、災害時にはどのようなリスクがあるのかを理解することは、災害への心構えができ、災害が発生する前の迅速な避難活動につながります。特に単身入居者の場合、地域とのつながりがあまりないので、台風などが近づいている時は事前に想定される被害の状況・避難場所等を、賃貸オーナーがその都度入居者にも知らせることが、被害を最小限にくい止めることにつながります。

地域の災害危険度をハザードマップで確認し、台風などが近づいてきた場合は、その都度入居者にも注意を促す。

心得その2-建物・外構の安全性を確保

ハザードマップには地震が起きた際の揺れやすさマップや建物被害を表す危険度マップを作成している自治体もあります。建物について、まずチェックしたいのは耐震性です。今の新耐震基準は1981年(昭和56年)に改正された建築基準法によるので、それ以降の建築であれば大丈夫でしょう。新耐震基準は東日本大震災クラスでも倒壊しないということが前提ですが、最近は倒壊しないだけでなく、揺れを少なくしたり、外壁のひび割れ等もしないなど、建物への被害を最小限に抑える建物へと進化しています。

例えばヘーベルメゾンの2階建てでは、制震フレーム「ハイパワードクロス」を採用し、地震時や台風時に、建物の揺れを抑え、柱や梁などの骨組みの損傷を防ぎ、繰り返しの余震にも耐える力を発揮します。3階建てでは超高層ビルでも制震装置として採用されているオイルダンパー制震システム「サイレス」により、システムラーメン構造の制震化を実現しています。

加えて、気をつけたいのがブロック塀などの外構です。大阪北部地震でのブロック塀倒壊は記憶に新しいところです。賃貸住宅でも耐震性を満たしていないブロック塀が倒壊し、通行人に被害が出た場合は、オーナーの管理責任が問われることもあります。今一度、チェックしてみましょう。

建物の安全性を確保するのは、オーナーとしての義務。また建物だけではなく、ブロック塀などの外構も十分に耐震性などをチェックする。

心得その3-二次災害の火災を防ぎ減災を意識する

都市部で起きた阪神・淡路大震災で得た教訓の一つは、二次災害での火災に備えることです。特に古い木造家屋の延焼は被害を大きくします。減災という観点からも建物の耐火性能は、非常に大きな役割を示すのです。
例えば首都直下地震が起きた場合、首都圏全体で最大23,000人が亡くなり、その約7割は火災によると予測されています(首都直下地震対策検討ワーキンググループ)。
気をつけたい地域は木造住宅が密集している地域、いわゆる木密地域です。東京都にも山手線外周部から環状七号線にかけて、木密地域が広範囲に分布しています。
東京都では、5年ごとに地域の危険度を調査していて、この2018年には第8回の結果が発表されました。町丁目ごとに「建物倒壊危険度」「火災危険度」、災害時活動困難度を加味して総合化した「総合危険度」を測定しています。危険度ランクの高い地域にある老朽アパートなどは、注意する必要があるでしょう。

■地震に関する総合危険度ランク

東京都にとっても都市の不燃化は喫緊の課題です。現在東京都では、「木密地域不燃化10年プロジェクト」に取り組んでいて、特に重点的・集中的に改善を図るべき地区を「不燃化特区」として指定、都と区が連携して不燃化を強力に推進しています。
不燃化特区では、次のような助成があります。
・老朽建築物の除去費用の助成
・準耐火・耐火建築物への建替えに際して、建築設計及び工事監理に要する費用の助成
・老朽建築物の所有者又は借家人の住替えについて、費用の一部を助成
また、名古屋、大阪でも同様の不燃化促進に取り組んでいます。

阪神・淡路大震災では、激しい揺れに耐え、倒壊せずに残った「ヘーベルハウス」が防火壁としての役割を果たし、延焼による被害が拡大するのを防いだという例が各所で見られました。
不燃化特区にある老朽アパートなどは、この制度を活用して建て替えることで、ご自身の建物を守るだけでなく、近隣の防災・減災としても大きな意義があります。

東京都「木密地域不燃化10年プロジェクト」や火災に対する防災については、バックナンバー「火災に耐える賃貸住宅とは-都市の不燃化を考える」でも解説しています。

都市の震災で注意したいのは、二次災害の火災。延焼をくい止めることができる建物の不燃化は、社会貢献としての意義もある。

心得その4-万一の備え、保険の内容を確認する

賃貸住宅では入居者が入る保険とオーナーが入る保険があります。
入居者の場合、建物は自分のものではないので必要なく、「家財の補償」+「借家人賠償責任」+「個人賠償責任」になります。一般的に管理している不動産会社が、入居時に入るように用意していると思います。

オーナーの場合は、まず「建物」を補償する火災保険が必要です。補償の内容は「火災、風災、水災、盗難、水濡れ、破損等」がセットになっているものがお勧めです。
特に昨今、水災・風災は必須の補償内容です。ハザードマップで水災のリスクがある場合はもちろんのこと、そうでなくても集中豪雨などで想定外の事態が起こることもありますので、水災リスクはカバーしておくのが良いでしょう。ただし同じ保険でも様々なタイプに分かれていて、水災リスクがない場合がありますので、気をつけてください。

また、周知の通り地震による火災は「地震保険」でなければカバーされません。今や地震保険は必須です。2017年から地震保険の災害区分が3段階から4段階に改定になり、より実態に即した補償を受けることができるようになりました。

■地震保険の損害区分の改定(2017年1月1日)

この他、「家賃補償」「施設賠償責任」の特約をお勧めします。
例えば火災が起き、復旧に3カ月要したという場合、その間家賃はもらえません。その場合の家賃の減収を補償するのが「家賃補償」です。
さらに、自然災害以外でも、配水管の老朽化などで水漏れ事故が発生し、入居者の家財を汚してしまった場合は、オーナーが損害賠償責任を負うことになります。それを補うためには、「施設賠償責任」の特約が必要です。
ただし、どちらも地震の場合は免責になっています。

火災保険については、バックナンバー「アパートオーナーのための火災保険の基礎知識」でも解説しています。

オーナーとして「火災保険」、「地震保険」の加入は必須。水災をカバーしているかは要チェック。加えて「家賃補償」「施設賠償責任」の特約がお勧め。

心得その5-BCP(事業継続計画)を意識した賃貸経営を行う

一般の事業では、災害対策の一つとしてBCP(事業継続計画)を準備します。自然災害で被災した場合でも、いかにすみやかに事業を再開させるか、その善後策を計画しておくということです。賃貸経営も同じです。これまで解説してきた心構えをしっかりと把握し、管理会社とも連係をとれるようにしておくということです。

仮に賃貸住宅が被災してしまった場合はどうなるでしょうか。
外階段やブロック塀が壊れ、入居者や通行人がケガをした場合、オーナーや管理会社の過失、つまり震災に耐えられる管理を怠っていたとして損害賠償責任を負います。具体的には、新耐震基準の震度6~7に耐えられる安全性を確保していたかどうかが問われます。

建物の設備が故障し修繕が可能な範囲であれば、すみやかに修繕する義務がオーナーにはあります。その間、入居者は避難所にいるかもしれません。その場合、使用できない割合に応じて、賃料の一部または全部の減額がなされる場合もあります。
建物の損傷がひどく、床上浸水など修繕レベルでの復旧が不可能な場合は、賃貸借契約は終了します。

また、「平成30年7月豪雨」では、住居が全壊・半壊等した被災者に対し、みなし仮設住宅として、民間の賃貸住宅が活用されています。被害の大きかった岡山県倉敷市では7月31日時点で2,135件の申し込みがあったといいます。手続きの煩雑さや、近隣での賃貸住宅の確保の問題などがありますが、賃貸オーナーとしても空き部屋があるのであれば、提供することも社会貢献の一つとなるでしょう。

賃貸経営でもBCP(事業継続計画)を念頭に置き、建物の安全確保、被災した場合の早期復旧などを想定しておく。

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