化学装置材料の基礎講座

第13回 炭素鋼製機器の配管や機器で問題となる、保温材下の腐食について発生の機構や要因について教えてください。

   この種の腐食は、保温材下の外面腐食(Corrosion Under InsulationでCUIと略す)と呼ばれています。機器や配管に保温材がかぶっているのでCUIの発生箇所を特定しにくいことや、保温材を剥離しての検査を行おうとすると、足場設置などに多大な費用が必要となるなどの問題があります。また、プラントを長期運転するほど、この腐食の顕在化可能性が高くなるため、長期間運転しているプラントの信頼性確保の観点から、CUIは見逃せない劣化現象です。

   以下のその発生機構、発生要因を説明します。

CUIの発生機構

   この現象は、保温材が吸水状態となり金属表面の濡れた状態が長期間保持されて発生します。また、その水分に溶解している塩化物イオンなどの成分の濃化が腐食発生の加速の要因となります。

CUIの発生要因

  • 保温材表面への水分の供給
  • 水分の浸入や水の保持(保温材の構造や施工)
  • イオン成分
  • 温度

   水分の供給源としては、屋外設置の場合に雨水が代表的ですが、プラント内では冷水塔の放散水や、冷却用の散水、蒸気の放出などが影響します。冷水塔近傍の風下や、散水している機器やその近傍では、外面腐食発生に特に注意する必要があります。また、金属表面が常温以下、0℃以上では結露が生じ、水分が存在することになりCUIの発生に至る場合があります。

   水分の浸入やその保持には、保温材系の設計や施工が影響します。機器や配管の形状不連続部や機器の配管連結部などは、保温材の外装の構造が複雑となり、内部への水の浸入しやすい箇所となります。また、外装の繋ぎ部の構造や施工品質も、水分の浸入に大きく影響します。

   一旦浸入した水分は、機器の強め輪や保温材受けや、配管の垂直配管から平行への移行部などに流れて集まり、外装板や保温材自体によりこの水分が保持されることになります。

   保温材受け部のCUIの模式図と、それを抑制するための保温材受け構造の模式図を下記に示します。

模式図1、模式図2

模式図1.保温材受け部の外面腐食                      模式図2.腐食抑制のための保温材受けの構造例

   イオン成分としては、海浜の場合には海塩粒子として供給される塩化物イオンが、外装板に付着し水とともに保温材内部へ供給され、腐食発生を加速します。また、化学プラントでは、焼却炉等から放散される可能性のあるSOXやNOX等の塩分も腐食加速要因として影響します。

   温度としては、金属表面温度が凍結していてはCUIは発生しない、また、表面が乾燥した状態となりやすい高温ではCUIは発生しにくいと考えられています。このため、内部温度で-10℃から120℃程度の温度域で、CUIは発生し易いとされています。内部流体温度が0℃以下でも、流れのない枝管等では、この部分が0℃以上となり結露を生じCUI発生に至ることがあり、注意が必要です。

   腐食反応は、温度が高いほど速度が大きいので、常温近傍より70℃から100℃程度の範囲が、最もCUI進行の著しい温度域とされています。

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