第12回 中国で化学プラント用の容器や熱交換器等の機器や、配管やボルト・ナット等の汎用部材を調達する場合の注意点を教えてください。
中国での調達を考える場合に、容器や熱交換器等の機器と、配管やボルト・ナット等の汎用品(コモディティ)を分けて考える必要があります。
- a.機器(容器、熱交換器等)
素材金属に関しては、材料の種類により中国製を採用するか、海外品を輸入するかを分けて考える必要があります。汎用の炭素鋼やステンレス鋼(SUS304、SUS316等)は、中国製の採用も可能ですが、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)を含む低合金鋼や、ニッケル(Ni)基合金、チタン(Ti)等のリアクティブ金属は、中国での生産実績が少なく、海外品を購入される場合が多いです。
また、汎用素材でミルシートが付属されていても、化学成分、強度、金属組織に関して、抜き取り検査を行うことが妥当です。写真1に例示すように異材や、熱処理の不適切な材料が、納入される場合があるためです。
溶接や成型を含む機器の製作の品質管理に関しては、工場の技術や管理能力を評価した上でベンダーを選択する必要があります。また、日本では常識と思われることでも、施工要領書で詳細に確認し、製作条件を明確化する必要があります。
製作過程での検査や立会いは、日本国内で製作する場合に比較して、検査等の頻度や範囲、手法、結果報告を頻度高く実施する必要があります。検査に関しては、社内やグループ会社内の専門家による立会いや、第3者機関による立会いも、頻度高く行う必要があります。
なお、ベンダーの評価や検査の第3者立会いに、中国内のエンジ会社や認証機関(欧米の中国支社等)を利用することも、考慮する必要があります。
- b.汎用部材(パイプやボルト・ナット等のコモディティ)
中国製の汎用部材に関しては、全数を検査することが困難であり、また実際に材料欠陥や品質不良で問題が顕在化する事例もあり、採用に当たっては十分な注意が必要であす。欧米の化学会社が、ボルト・ナットに関して、中国内の主要な20社よりサンプルを調達し、加工、成分、機械的強度、欠陥の有無を評価した所、一社も合格しなかったとの報告もあります。このため、汎用部材として中国製を採用した場合のリスクを評価して、リスクの高い部材(例えばアンカーボルト等)に関しては、実績のある欧米品を採用するなどの使い分けを行うことが妥当です。
写真1は、ステンレス鋼(SUS304)製と指定されていたⅠボルトが、実際はマンガン鋼であり、大気中での使用で割れの生じた部材の外観です。
写真1.大気中の使用で破断の生じたⅠボルト外観
(ステンレス鋼と指定されていたが、実際はマンガン鋼製であった)