第23回 装置内部の腐食状況を運転中に知る方法を教えてください。
発生している腐食が全面腐食か局部腐食かによって対応が異なります。局部腐食の場合は、発生する可能性のある局部腐食の形態を推定し、それに応じた検出手段が必要となりますが、一般的に運転中に局部腐食の発生を知ることは困難です。
ここでは、全面腐食の状況を把握する方法を述べます。
装置内部の全面腐食の状況を稼働中に把握する代表的な手段として以下があります。
- 1)超音波厚さ計による装置の構成部材の肉厚測定
- 2)溶液中の金属イオン分析
- 3)特定のセンサーを用いた腐食モニタリング
これらの方法の特徴は次のとおりです。
1)超音波厚さ計による装置構成部材の肉厚測定
測定点を決めるケースと決めないケースがありますが、超音波厚さ計を用いて、肉厚を測定する方法です。目的とする部位の肉厚を直接測定できます。ただし、超音波肉厚計の測定精度は約0.1mmですので、0.1mm以上の肉厚変化がないと腐食状況を捉えられません。長期的な視点で装置の減肉傾向を把握するには有効な手段ですが、短期間で腐食を把握するにはやや不向きです。また、高温部では測定ができなかったり、ジャケットなど多重構造の内側は測定できない欠点があります。
超音波厚さ計による定点肉厚測定では、エロージョンや磨耗など腐食以外の減肉についても検出することが可能です。
2)液中の金属イオン分析
内部溶液をサンプリングし、液中に溶け出した、もしくは同搬される金属イオンや濃度を分析する方法です。液中の金属イオン濃度は、原子吸光法やICPにより測定します。測定感度が高いため、肉厚測定に比較して、腐食状況を高精度で把握できる可能性があります。ただし、液分析のみでは、どの位置で腐食したのかを特定できません。また、腐食した金属のすべてがイオンとして液中に溶け込んだり、液に同搬されたりするわけではない(さびとして金属表面に付着している場合もある)ため、腐食速度を定量的に把握することが困難な場合があります。
ある程度の広範囲の部位を対象にマクロ的な視点で腐食の有無や腐食程度の経時的な推移を把握するには有効な手段です。
3)センサーによる腐食モニタリング
環境中に目的に応じたセンサーを挿入し、センサーの電気的な出力で腐食状態を監視する方法です。オンラインで高精度の測定が可能です。いくつかの原理のモニタリングが利用されていますが、全面腐食を監視するには、電気抵抗法や分極抵抗法が良く利用されます。電気抵抗法は、センサーの減肉を抵抗変化としてとらえる方法です。また、分極抵抗法は、センサーにわずかな電流を流し、金属がイオンとして溶出する際の抵抗(腐食速度に対応)を測定する方法です。詳細は別の機会にご紹介したいと思いますが、センサーによる腐食モニタリングは、オンラインで高精度に腐食状態を測定できる特徴を生かし、他の方法では把握困難な、環境変化に対する腐食性の変化を捉えることが可能です。
以上、装置内部の全面腐食の状況を稼働中に把握する代表的な手段を簡単に紹介しました。腐食把握の目的、装置の構造やプロセスの特徴などに応じ、適切な手段を選択する必要があります。また、複数の方法を用いたり、開放検査により実際の腐食状況を調査したりすることで、測定の信頼性を確保することが重要です。