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開発の背景 |
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AKMは、2003年度に世界で初めて携帯機器用として開発された3軸電子コンパス「AK8970」を量産出荷し、以来今日まで 国内外で15機種を越える携帯電話にご採用いただいております。
当社の3軸電子コンパスがこれほど普及した第一の理由は、携帯電話の内部に起因する磁気オフセットを自動的に補正するDOEアルゴリズム(*3)を実現・提供したことに依ります。この技術的背景には、感度のリニアリティが非常に高くて測定範囲の広いホール素子で、3軸の感度を全て均等に揃えるという、DOEアルゴリズムのために最適化された当社独自のアーキテクチャが、使いやすく優れた電子コンパスとして、広く認められたものと考えております。
また第二の理由として挙げられることは、2003年度の発売時に世界最小であった「AK8970」(5.9mm×6.3mm×1.0mm)を、2004年度には体積で67%にまで縮小した「AK8970N」(5.0mm×5.0mm×1.0mm)、2006年度には更に体積で45%に縮小した「AK8973」(4.0mm×4.0mm×0.7mm)を量産出荷した実績が表すような、常に小型化・薄型化の改良を続ける最先端技術開発力と、その間変わらぬ先進のアーキテクチャでソフトウエア資産の互換性を保つ当社の姿勢が、お客様の大きな信頼を得たものです。
今回新たに開発した3軸電子コンパス「AK8973S」(2.5mm×2.5mm×0.5mm)は、市場での更なる小型化・薄型化へのご要望・ご期待にお応えすべく、3軸電子コンパスをチップサイズパッケージ( CSP )で実現し、これまで最小(当社比)だった「AK8973」と比べても更に体積で28%に縮小したものです。これを最初の量産製品「AK8970」と比較した場合、4年間で体積はわずか8%にまで縮小されています。
この改良の背景には磁気センサそのものの変更も含む大きな技術進歩があります。
従来製品の内で、3軸電子コンパス「AK8970」「AK8970N」および、加速度センサ用インターフェース付き3軸電子コンパス「AK8971N」の3製品は、旭化成電子株式会社( 社長:鴻巣 誠、本社:東京都新宿区 )の化合物半導体ホール素子3個をX・Y・Zの各軸にひとつずつ使い、AKMの信号処理LSIと合わせて4チップを立体的に実装するマルチチップモジュールでした。つまり「AK8970」から「AK8970N」への体積縮小は、ホール素子とLSIを変えないで、実装技術だけ変更する方法で達成したものです。
しかしながら、マルチチップモジュールでの体積縮小に限界があり、昨年発表した「AK8976A」「AK8973」から既に、当社の電子コンパスはSiモノリシックホール素子を使うワンチップ製品へと世代交代を果たしております。
その上で今回は、この新技術を体積縮小に最大限生かしたチップサイズパッケージ( CSP )の製品「AK8973S」を開発いたしました。
(*3) |
DOEアルゴリズム : 携帯電話を持つ人の自然な動きの中で得られるセンサ信号から、携帯電話内部の磁気オフセットやセンサ自身のオフセット・感度を自動調整する技術。 |
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DOE / Dynamic Offset Estimation は、旭化成エレクトロニクス(株)の登録商標です。 |
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2. |
本製品の特長 |
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今回開発した3軸電子コンパス「AK8973S」には、次の大きな特長があります。 |
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(1) |
3軸の磁気センサをSiモノリシックホール素子で実現し、信号処理回路と一体化してワンチップのLSIにしました。
ホール素子に限らず、どのような種類の磁気センサも1つのセンサで1つの軸しか測定できません。そのためX・Y・Zの3次元で地磁気を検出する3軸電子コンパスは従来、3つの独立した磁気センサを立体的に組み合わせるマルチチップモジュールとして作られてきました。特に感磁面に垂直な磁場を検出するホール素子は、感磁面に平行な磁場を検出する他の種類の磁気センサと比べ、垂直に実装する磁気センサ素子が2つになるという意味で、むしろ不利ではないかと思われることもありました。
しかし当社は逆転の発想により、ホール素子ならではの垂直磁場検出を生かして、Siウェハの1平面上に3軸検出の磁気センサを作成したものです。
この技術の測定原理に関しては、3月17日(土)に行われる「電気学会全国大会」のシンポジウム講演の中で、説明・発表をいたします。 |
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(2) |
3軸電子コンパスがワンチップで実現したことを生かし、従来のQFNパッケージ(*4)をチップサイズパッケージ( CSP )に代えた小型化製品を開発しました。
携帯電話など高密度実装基板を採用する用途では、チップサイズパッケージ( CSP )と呼ばれるベアチップサイズのパッケージング技術による部品が、ここ数年急速に用いられ始めています。
今回「AK8973S」で採用したのは、ウェハレベルチップサイズパッケージ( WL-CSP )と呼ばれるウェハ状態のままLSIを樹脂封止してしまうパッケージング技術であり、2.5mm×2.5mm×0.5mmの体積中に、デジタルインターフェイスの3軸電子コンパスを実現したものです。
(*4) |
QFNパッケージ : Quad Flat Non-leaded package |
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ICチップのパッケージング技術の一つ。入出力用のピンがパッケージ外部に出ていない。 |
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(3) |
特許出願中のオフセット自動調整アルゴリズムや傾斜補正計算など、各種ソフトウエア資産の互換性を継承しています。
当社は、最初の3軸電子コンパスを量産する前から、DOEと呼ぶ磁気オフセットの自動調整アルゴリズムを考案し、お客様に提供してまいりました。
「AK8973S」は、従来製品と全く同様に、この実績あるオフセット自動調整ソフトウエアを利用することができます。これによって、携帯機器の工場出荷検査時に電子コンパスのオフセット調整工程が不要となるので、大幅な生産性向上を達成できます。また、市場に出荷された後で磁気オフセットが変化した際にも、携帯機器ユーザは、煩わしい調整動作から解放されます。 |
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(4) |
携帯電話に適した数々の機能を搭載しています。
・ADコンバータを内蔵したデジタルインターフェイス : 2線I2Cバス |
・発振回路内蔵 ( クロック入力不要 ) |
・低動作電流 : |
センサ動作時 |
6.4 mA |
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100ms周期測定時の平均電流 |
0.8 mA |
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・磁気センサ(ホール素子)の感度調整データ等を記録したEEPROMを内蔵 |
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3. |
主な用途 |
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・携帯電話や携帯情報端末(PDA)の歩行者ナビゲーション用途。 |
・ゲーム機などのモーション入力用途。 |
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4. |
型番・仕様 等 |
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(1) |
型番 |
「AK8973S」 |
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パッケージ |
15ピンCSP 2.5mm×2.5mm×0.5mm |
(3) |
サンプル価格 |
2,000円 |
(4) |
サンプル出荷時期 |
2007年10月 |
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5. |
「電気学会全国大会」でのシンポジウム講演について |
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Siモノリシックホール素子を用いる3軸電子コンパスが、1平面で3軸測定を実現する原理に関しては、「電気学会全国大会」で具体的に説明・発表をいたします。
(1)学会名: |
平成19年電気学会全国大会 |
(2)日程: |
3月17日(土) |
(3)場所: |
富山大学五福キャンパス |
(4)講演: |
シンポジウム S4「 磁気利用センシング技術の高度化とその応用 」の中で、S4-5『 携帯機器に搭載する電子コンパス技術とその応用 』と題して講演いたします。 |
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6. |
「センサエキスポジャパン 2007」出展について |
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「AK8973S」のサンプルおよび「AK8976A」の応用例、Siモノリシックホール素子による3軸測定原理などの各種展示を「センサエキスポジャパン 2007」にて行います。
また、4月5日と6日には会場にてセミナーも開催いたします。
(1)展示会名: |
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センサエキスポジャパン 2007 ブース番号:S-22 |
(2)会期: |
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4月4日(水)~ 4月6日(金)の3日間 10時~17時 |
(3)会場: |
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東京ビッグサイト 西1ホール |
(4)セミナー: |
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(A) |
4月5日(木) 16時~16時45分
『 S-cubeの電子コンパスについて 』 |
(B) |
4月6日(金) 16時~16時45分
『 旭化成エレクトロニクスのセンサビジネスについて 』 |
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