2007年9月19日

各 位
旭化成ケミカルズ株式会社


世界最速性能の「リン吸着剤」開発に成功
−「リン吸着・回収システム」も開発し、世界の水環境問題・リン資源問題解決に貢献−


 旭化成ケミカルズ株式会社(本社:東京都千代田区 社長:藤原 健嗣)は、水環境の悪化の要因となっているリンを、世界最速のスピードで除去できる画期的「リン吸着剤」、および本吸着剤で除去したリンを資源として回収できる「リン吸着・回収システム」の開発に成功しましたのでお知らせします。
 本技術は、世界的な水環境問題やリン資源問題の解決に貢献できると期待されます。また、当社は本技術を重点戦略事業である膜・水処理事業の技術の柱の一つとする計画です。
 
 
1.背景
 世界各地の湖沼・港湾などの閉鎖性水域では、リンによる富栄養化により植物プランクトン等が増殖し、汚濁・悪臭・生態系崩壊などの水環境の悪化が進行しています。このためリンは、生活排水や産業排水の重要な規制項目となっています。
 排水等に含まれるリンを除去する方法には、生物学的脱リン法、凝集沈殿法、吸着法などがありますが、生物学的脱リン法や凝集沈殿法は、0.01ppmオーダーの低濃度まで安定して除去することが難しい、汚泥が多量に発生し処分費用が増加するなどの問題があります。吸着法は、低濃度までリンを除去可能ですが、従来の吸着剤では吸着速度が遅いため、大量の排水等の処理には多量の吸着剤が必要となり、装置が大きくなるなどの問題がありました。このように従来のリン除去法にはそれぞれ課題があり、低濃度まで効率よく排水中のリンを除去できる技術が求められています。
 一方、肥料等の原料であるリン鉱石は数十年以内に枯渇すると予測されていますが、従来の方法では排水等から回収されたリンには不純物が含まれる場合が多く、資源として再利用することが困難でした。このため、リンを資源として回収・再利用する技術ニーズも高まっています。
 当社は、こうした問題に早くから着目して研究開発を進め、排水等に含まれるリンを世界最速のスピードで除去できる「リン吸着剤」、および本吸着剤で除去したリンを資源として利用可能なリン酸塩として回収できる「リン吸着・回収システム」の開発に成功しました。
 
2.当社の新「リン吸着剤」及び新「リン吸着・回収システム」の特長
(1)「リン吸着剤」の特長
 本吸着剤は球形の粒で、球の表面と内部に数ミクロンの孔とサブミクロンの孔を持つ多孔構造を有しており、以下の特長があります。
  1) 排水中のリン酸イオンなどのリン成分を高速かつ低濃度まで吸着することができます。従来の吸着剤と比較して約10倍という世界最速のスピードで、リンが0.01ppm以下の低濃度の処理水が得られます。
  2) 排水中の他のイオンよりもリンに対する選択性が高い。
  3) リンの吸着容量が大きい。
  4) 吸着されたリンは容易に脱着でき、この吸着と脱着は何度でも繰返し行うことができるため、吸着剤の使用量を少なくすることができます。
 
(2)「リン吸着・回収システム」の特長
  本システムは次の3工程から構成されています。
 
  吸着工程: 排水はリン吸着剤を充填したカラムを通過しリンが吸着・除去されます。
  脱着工程: 吸着剤に吸着されたリンは脱着され、吸着剤は再び吸着工程に使用されます。
  回収工程: 脱着されたリンは、固液分離により固体のリン酸塩として回収されます。
 
  本吸着剤はリン選択性が高いので、排水のように種々の不純物が含まれる場合でも、回収されたリン酸塩は純度が高く、肥料等のリン資源として使用することができます。
 本システムは、下水や浄化槽などの生活排水、食品工場や化学工場などの産業排水、さらには湖沼などの水域からのリン除去への適用が考えられ、高速でリンを除去できるため、システムもコンパクトで低コストにすることができます。
 
3.今後の展開
 現在、日本下水道事業団との共同研究において、下水二次処理水からのリンの除去および回収を目的として、2008年度完了の予定で実証パイロット運転を実施しており、日本の下水処理場への展開が期待されます。さらに、日本国内だけでなく、水環境悪化や水不足が進行している米国や中国・アジアへの市場開拓も同時に進めています。
 当社では、今後の重点領域として環境貢献事業である膜・水処理事業の強化・拡大を図っており、中空糸ろ過膜「マイクローザ」を核として、大量水処理、エレクトロニクス、自動車、医療食品、環境関連および膜分離活性汚泥法(MBR:メンブレンバイオリアクター)などの分野において、国内だけでなく米国、欧州、中国、アジアを中心にグローバルに展開しております。
 今回の「リン吸着剤」、「リン吸着・回収システム」は、単独商品としてだけではなく、「マイクローザ」の膜分離技術を組合わせた複合商品としてビジネス展開を計画しています。また、「リン吸着・回収システム」で開発した吸着技術は、リン以外の吸着にも展開できるため、従来の「マイクローザ」で培った膜分離技術と、今回の吸着技術をコア技術として、膜・水処理事業を強化・拡大してゆく計画です。

※「マイクローザ」は、旭化成ケミカルズ(株)の登録商標です。
 
以上

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