2008年2月18日

各 位
株式会社トクヤマ
旭化成ケミカルズ株式会社



高性能直接メタノール型燃料電池用炭化水素系電解質膜の開発について
〜高出力タイプと低メタノール透過タイプの2種類の新規電解質膜を開発〜


 株式会社トクヤマ(本部:東京都渋谷区 社長:中原 茂明)と旭化成ケミカルズ株式会社(本社:東京都千代田区 社長:藤原 健嗣)は、直接メタノール型燃料電池(以下、DMFC)用カチオン型炭化水素系電解質膜※の共同開発をおこなってまいりましたが、このほどDMFC用電解質膜の性能を大幅に改善することに成功しましたのでお知らせいたします。
 今回開発に成功した新規電解質膜は、高出力タイプ、低メタノール透過タイプの2種類です。高出力タイプは、130mW/cm2以上の出力が可能で、また低メタノール透過タイプは、メタノール透過性をフッ素系電解質膜の1/20にする画期的な炭化水素系電解質膜です。
 なお、今回開発した新規電解質膜は2月27日から東京ビッグサイトで開催される「FCEXPO 2008」で展示いたします。
 
 
1. 背景・経緯
   燃料電池用材料について、トクヤマではさまざまな種類の燃料電池に向けて炭化水素系電解質膜の研究開発を進めており、一方、旭化成ケミカルズも、定置用途や自動車用途などに向けてフッ素系電解質膜、DMFC用途向けに炭化水素系電解質膜の研究開発を進めております。
 なかでもDMFC用カチオン型炭化水素系電解質膜につきましては、両社の電解質技術、膜技術、生産技術、電池評価技術などの融合を図ることで、開発スピードを加速させるとともに更なる高性能電解質膜の研究、将来の事業化推進を目指すことで一致し、2年前より共同で開発をおこなってまいりました。
 
2. 今回開発した新規電解質膜について
 
(1) これまでの技術
  DMFC用電解質膜はフッ素系電解質膜が主流となっていますが、メタノール透過性が大きいという欠点があるため、近年炭化水素系電解質膜が多く開発されてきました。しかし、これらの炭化水素系電解質膜はフッ素系電解質膜に対し、メタノール透過性は1/2〜1/10まで到達しておりますが、一般に以下の課題を有しております。
  1) DMFCを作製した場合、セル抵抗が高く電池出力が低い
    2) メタノール透過性についても更なる改良が求められている
 
(2) 今回開発した新規電解質膜の特長
  両社で新たに開発した電解質膜は、膜の複合化技術、電池評価技術、膜解析技術などにより、これらの欠点を大幅に改良することに成功した膜で、以下の特長を有しております。
  1) 高出力タイプ
      電解質膜の膜厚を10ミクロン以下とすることにより、現行フッ素系電解質膜の5倍以上のプロトン伝導性を実現し、さらに膜/電極層界面の特殊な制御技術により発電性能でも60℃条件の自社評価DMFCセルで130mW/cm2の出力が可能で、炭化水素系電解質膜の中では最高レベルとなっています。
  2) 低メタノール透過タイプ
      電解質膜のミクロ構造制御や改質処理により、30%以上の高濃度メタノール水溶液の使用が可能で、メタノール透過量は現行フッ素系電解質膜の1/20以下を達成しました。
   
  新規開発した電解質膜は、高出力タイプで1,000時間以上、低メタノール透過タイプで3,000時間以上の耐久性を確認し、既にDMFC開発メーカー各社へのサンプルワークを共同で開始しております。
   
3. 今後の進め方
  メタノールを利用するDMFCは、携帯電話やノートパソコンなどのモバイル電子機器の電源として小型化や長時間使用が可能となるなど、今後の市場成長が期待されております。
 両社は、今回開発した新技術をベースに、今後も共同でDMFC用カチオン型炭化水素系電解質膜の性能向上(高出力化、低メタノール透過性、高耐久性)、量産化、低コスト化、将来の事業化に向けた検討を進めてまいります。
 
 
  カチオン型炭化水素系電解質膜
    水素やメタノール等を燃料とした固体高分子型燃料電池において、燃料から生成したプロトン(水素イオン、H)を燃料極から空気極に伝導する炭化水素系高分子電解質膜。
 
以上

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