I.背景 |
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国勢調査による世帯構成の変化では、4人以上の世帯が減少する一方、1人および2人世帯は増加傾向にあります。特に高齢夫婦のみ世帯および高齢単身世帯はほぼ同じペースで増加を続け、それぞれ300万世帯を大きく上回る現状にあります。このように、少子高齢化とともに世帯の少人数化・細分化が進む中、お互いの自立を保ちながらも何かあった時には協力し合える「親子同居」のあり方は、今後注目されるべき住まいのあり方であると考えます。
当社では昭和50年の商品化以来、建物における世帯間の分離度を高めて気兼ねや気苦労を減らす「二世帯住宅」を供給するとともに、その入居者を対象とした二世帯同居の住まい方の実態調査を続けてきました。しかし、現在のように少子高齢化・世帯の少人数化や細分化といった社会環境の変化が進む状況では、親子同居のあり方にも大きな変化が生じている可能性が考えられます。これまで当社が蓄積してきた二世帯住宅に関するノウハウを更に深め、これからの世の中のニーズに応え続けていくためにも、二世帯住宅という枠に捕われず従来以上に幅広い視点から現状を把握する必要を感じました。
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II.調査概要 |
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1.調査名称: |
親子同居スタイル・多様化の実態 |
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2.調査目的: |
二世帯住宅(キッチンが2ヶ所)・単世帯住宅という建物の形態に捕われず、親子同居をしている家族や建物の状況と同居スタイルや同居満足度との関係を把握し、今後の親子同居の方向性を探ること |
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3.調査期間: |
2007年3月 |
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4.調査対象: |
当社の供給した建物(ヘーベルハウス)の入居者のうちヘーベリアンネット(入居者限定Webサイト)登録者を対象に、Eメールにてアンケートを依頼。以下A〜Cのどれかに該当する方に回答してもらった。
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A.現在親子同居者: |
現在、親または子世帯と同居している方 |
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B.親子同居経験者: |
現在は同居していないが、過去に親または子世帯と同居していた方 |
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C.親子同居想定者: |
現在は同居していないが、将来に親または子世帯と同居する可能性がある方 |
なお、本調査における「同居」とは同じ建物内または隣接する敷地の別棟に住んでいる状態を指しており、また、回答者の住む建物形態は単世帯住宅・二世帯住宅・賃貸併用住宅のいずれでも構わないものとしています。 |
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5.回答者数: |
有効回答数は981件(A:631件、B:79件、C:271件)。 |
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6.分析方針: |
A.現在親子同居者(N=631)のデータを中心に実態分析。
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それに加えB.親子同居経験者のうち子世帯回答分(親との同居経験者、N=68)とC.親子同居想定者のうち子世帯回答分(親との同居想定者、N=176)のデータを比較対象として利用。 |
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7.建築年数: |
回答にあたって、回答者が住んでいる建物の建築年数は特に制限を加えなかったが、結果的にA.現在親子同居者の有効回答631件の平均築年数は8.1年(2000年以降建設のものが57%、1995年以降では77%)と比較的新しいものが多かった。従って回答における同居家族構成は、建設当時に想定されていたものを比較的反映していると推測できる。 |
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III.調査概要 |
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1.片親同居、4人以下の少人数同居、娘夫婦同居に注目すべき |
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当社では従来、二世帯住宅と言えば「親世帯2人+子世帯3〜4人」という家族構成のイメージがありましたが、今回の親子同居調査では、片親同居が43%、4人以下の少人数同居が28%を占めている実態がわかりました。片親同居、少人数同居は親世帯の高齢化とともに増加し、70歳代での片親同居/少人数同居の比率は45%/26%、80歳以上では80%/50%に達しています。
伝統的に息子(特に長男)との同居が当たり前であった続柄関係においても、親世帯の年代別に見ると若い世代ほど娘夫婦同居の比率が高くなっています。親世帯が70歳台の場合は27%であるのに対し、50歳台の場合は49%(息子夫婦同居の比率は62%、三世代同居による重複を含む)に達しています。これは、「娘夫婦同居」という同居スタイルがより若い世代で一般化し、息子夫婦同居と対等に考えられるようになってきたことを示すものと言えます。
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2.片親同居、少人数同居、娘夫婦同居では融合志向の同居スタイルが多い |
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平日最も多い夕食のパターンとしては、各世帯が独立して別々の場所で夕食をとる「夕食独立」の同居スタイルが57%、同じ場所で夕食をとる「夕食融合」の同居スタイルが43%を占めました。夕食の独立/融合の違いは、同居生活に関する志向と強い相関があります。「夕食の独立/融合」は朝食、洗濯、光熱費の負担など同居スタイル全般と深く関係しており、同居スタイルの指標となり得るものです。「夕食の独立/融合」と家族構成との関係を見ると、片親同居、少人数同居、娘夫婦同居ではいずれにおいても融合志向が強い傾向が見られました。 |
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3.世帯間の自立と「融合志向」同居スタイルとの両立 |
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同居家族を介護した経験を親世帯の年代別に見ると、高齢となるほど確率が高く、60歳台では19%、70歳台22%、80歳以上48%、更にB.親子同居経験者では72%に達し、ほとんどのケースで同居家族による介護が必要となることが窺われます。また、C.親子同居想定者では、親が自立できなくなった場合に同居を想定していることが多く、親世帯の高齢化に伴って同居スタイルが融合志向に向かうことが考えられます。
しかし、例えば「夕食融合」であっても必ずしも全ての行為が融合するわけではなく、洗濯や光熱費の負担など自分のことは自分でしたいという意識も感じられました。親世帯が最大限自立しながら、子世帯に適宜サポートされる同居スタイルが重要と言えそうです。
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4.夕食独立なら独立二世帯、夕食融合なら融合二世帯が満足度が高い |
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夕食独立/融合に分けて同居満足度を見ると、それぞれ90%/80%と高い満足度が得られています。建物分離度タイプ別に見ると、夕食独立者においては独立二世帯の満足度が高く、共用二世帯は種々の制約から共用二世帯とせざるを得なかったことが窺えます。更に独立二世帯の中では内部行来型を希望する場合が多く、不満も少ないという結果が出ています。
一方、夕食融合者においては、単世帯住宅居住者に比べ、サブキッチンを持つ「融合二世帯住宅」の満足度が高くなっています。夕食融合者の希望分離度は融合二世帯を中心に分布し、夕食独立者とは大きく異なる傾向にあります。これらのことから、夕食独立/融合といった同居スタイルに合った建物分離度の提案が重要と言えます。
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5.将来活用:独立二世帯では空いた世帯を賃貸化、共用・融合二世帯は一体利用 |
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親世帯の高齢化に伴う同居の解消は必然であり、長期的な視点では「空いたスペースをどう活用するか」が重要です。調査結果でも二世帯住宅として継承するという考え方が全体の約4割を占めるものの、独立二世帯の場合の3割近くが賃貸化を意識、共用・融合二世帯の場合は残った世帯が利用するという回答が5割を超えます。二世帯住宅の設計提案では、そのような建物形状(分離度)に合わせた将来活用のしやすさを検討しておくことが必要と言えます。 |
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IV.まとめ |
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伝統的な直系家族社会においては大家族同居(単世帯住宅での多世帯同居)が常識的でしたが、核家族社会化が進むにつれ、当社が提唱し始めた二世帯住宅(核家族の集合)という住まい方もすっかり一般的なものとなってきました。しかし、少子高齢化が進む現在の社会環境では、典型的な二世帯住宅のイメージとは異なる片親同居、少人数同居が今後増えていくと思われます。
実際、今回の調査では、片親同居や少人数同居が既にかなりの比率を占めていることがわかりました。また、まだまだ少数派と考えていた娘夫婦同居が、実はかなり一般化してきているという実態もわかりました。
片親同居、少人数同居、娘夫婦同居では、融合志向の同居スタイルが多いという傾向が見られます。少子高齢化が更に進み、これらの傾向が一層強まれば、今回の調査で注目した「融合二世帯住宅」のニーズが今後広がっていくものと考えます。
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(ご参考)旭化成ホームズ株式会社 住生活総合研究所について |
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弊社では、都市部を中心とする新しい住まい方の研究と提案のために昭和55年「二世帯住宅研究所」、平成元年「共働き家族研究所」、平成10年「ロングライフ住宅研究所」などを設立して活動を続けてきました。
本年5月1日の組織改正において、上記の3研究所を統括する組織として「住生活総合研究所」を新設しました。これにより住ソフト提案力を更に強化し、新しい市場を創出するために、住生活全般に関する調査・研究の一層の推進を目指しております。
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