2008年7月28日

各 位
旭化成ホームズ株式会社



「低層集合住宅の侵入被害部位に関する実態調査」結果について
〜侵入パタン分析からの防犯対策提案〜

 

 旭化成ホームズ株式会社・ロングライフ住宅研究所(所長:熊野 勲、ホームページアドレス http://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/longlife/data/index.html)は、集合住宅の防犯に対する関心や犯罪不安の高まりを踏まえ、明治大学理工学部 山本俊哉准教授と共同で、自社が供給した低層集合住宅の修理依頼記録から侵入被害に関する記録を抽出し、建物図面との照合や実地調査により分析することで、被害実態を明らかにしました。この調査は、2006年4月に発表した「戸建て住宅の侵入被害開口部に関する実態調査」に続き、低層集合住宅設計時の防犯対策を検討する際に貴重なバックデータとして活用が見込まれることから、広くお知らせするものです。
 今回の調査結果によると、侵入被害を受けた開口部の91%が1階窓に集中し、その86%がバルコニー面の掃き出し窓でした。被害窓は道路から見えないものが68%を占め、プライバシー確保のニーズが死角の一因となっていました。また、侵入ルート上の門扉やフェンスの未設置や未施錠、高さ不足などのため、その部位への接近制御 (侵入者の開口部への接近を外構で防ぐこと)が充分でない例が多く見られました。
 被害件数は側面向き住戸が全体の65%を占めますが、背面向き住戸も存在比率が少ない割に被害リスクが高く、道路向き住戸はこれらの半分以下の被害リスクでした。
 今回の調査報告では、住戸の向きによって異なる侵入パタンに対応して、住戸の向き別に防犯設計手法を具体的に提案し、集合住宅における「ゾーンディフェンス(敷地の防犯環境設計)」を進化させています。
 
I.背景
   集合住宅の防犯についての指針は、各都府県においてマンションの防犯対策に関する指針などがあるものの、大規模な団地やマンションを対象としたものが多く、2〜3階建ての低層集合住宅に対しての指針は少ない状況にあります。
 「ロングライフ住宅の実現」を目指す当社は、戸建て住宅だけでなく集合住宅(賃貸住宅)ヘーベルメゾンについても、竣工時の建物図面や修理依頼記録などのメンテナンス履歴、あるいは旭化成不動産株式会社の物件管理情報などをデータベース化して保有することで、お客様へのアフターサービスの充実や入居者の満足向上に活用しています。今回の調査は、これらのデータベースを保有していたことで、被害内容を実際の建物図面と照合し、侵入パタンを分析することが可能となったものです。
 
II.調査の概要
 
1.調査名称 「低層集合住宅の侵入被害部位に関する実態調査」
 
2.調査目的 安心して暮らせる低層集合住宅の住まいを実現するために、侵入被 害箇所の実態を把握し、それに基づく対策を提案すること。
 
3.調査対象期間(侵入被害修理依頼ベース)
  A. 侵入被害修理記録調査/2004年〜2007年の4年間
  B. 侵入被害物件図面調査/2006年7月〜2007年12月の1年半
  C. 侵入被害物件実地調査/2006年7月〜2006年12月の半年間
  D. 被害なし物件図面調査/1991、2001、2006年(各3月)竣工侵入未被害物件
(調査Bとの被害比率比較のためにサンプル年代を設定して実施)
 
4.調査方法
  東京都および神奈川県が建設地である2〜3階建てのヘーベルメゾン、ヘーベルハウスの賃貸住戸部分を調査対象として、修理依頼記録の中から侵入被害に関連するものを抽出し、被害件数を把握するとともに、被害箇所と図面を照合しました。実地調査については、道路からの見通しや周辺状況を確認し、侵入ルートを推定しました。
 
5.調査結果要約
  (1) 近年の仕様改訂による防犯性能の向上により、玄関の被害は減ってきましたが、1階の窓の被害が約9割を占めており、防犯ガラス導入による被害リスクの減少は顕著ながらも、1階窓の防犯対策が課題となっています。
    【被害開口部の種類・界別構成】
   
     
  (2) 道路から被害窓が見えないものが約7割を占めています。その死角要因としては、目隠しフェンスや密生した植栽、住戸間のパーティションなどプライバシー確保のためのものが多く見られました。また、門扉やフェンスなどにより接近が制御されているように見えても、反対側に容易に侵入できる別のルートがあったり、門扉が低く見通しの悪い箇所にあるため乗り越されて侵入されたと推定される例も見られました。
    【道路面、側面の1階被害窓の死角要因】
   
     
  (3) 道路から見た住戸の向きによって侵入パタンは異なるため、その対策のポイントも違ってきます。道路向き住戸では、道路向きの窓のプライバシーに配慮しながら、その部位への接近制御を強化すること。側面向き住戸では、パーティションによる死角をなくして見通しを良くし、道路から直接のルートおよび共用廊下から回り込むルートの両方に対して接近制御を合わせて実施すること。背面向き住戸では、被害が集中した背面の開口部に近づけないよう接近制御をすることが防犯性を高めるポイントです。
    【側面向き住戸の防犯対策提案】
   
     
 
III. 明治大学理工学部 山本俊哉 准教授 略歴(ご参考)
 
昭和34年生まれ。千葉大学大学院修士課程(建築学専攻)修了。博士(学術)。 (株)マヌ都市建築研究所取締役主席研究員を経て、平成17年4月より明治大学理工学部建築学科助教授。国土交通省「防犯に配慮した共同住宅に係わる設計指針」策定などに携わる。
2001年 「共同住宅の防犯設計ガイドブック」(共著)創樹社
2004年 「防犯セキュリティガイド」(共著)日経BP社
「狙われない防犯住宅」(共著)日経BP社
2005年 「防犯まちづくり〜子ども・住まい・地域を守る」ぎょうせい
「安全・安心のまちづくり」(共著)丸善
2007年 「安全・安心の手引き〜地域防犯の理論と実践」(編著)ぎょうせい
 
 
以上
 

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