2008年8月5日

各 位
旭化成ホームズ株式会社



地中熱と冷房排熱を熱源とする給湯機能を持つ戸建住宅用設備
「地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システム」の開発について

 

 旭化成ホームズ株式会社(本社:東京都 新宿区、代表取締役社長:波多野 信吾)は、北海道大学大学院工学研究科 長野 克則教授の協力のもと、日立アプライアンス株式会社、株式会社日立空調SEと共同して、戸建住宅用量産システムとしては初めて地中熱と冷房排熱を給湯熱源に利用する「地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システム」を開発しました。既に基本技術の開発と試作モデルによる検証を終えて、8月より量産モデルでの実証試験を開始し、来年1月を目処に当社商品ヘーベルハウスの設備仕様として発売する予定です。

 当社では、地中熱を熱源とすることで消費電力を削減してCO2の排出を抑制し、冷房排熱を外気に排出しないことから都市部のヒートアイランド現象の抑制効果が期待される「地中熱利用冷暖房システム」を、平成16年7月よりヘーベルハウスの設備仕様として販売してきました。これは、販売エリアの大部分が都市部である当社にとっては特に、環境貢献という面からも大変有効な技術と言えるものでした。 今回開発した新システムでは、地中熱冷暖房に自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯機(エコキュート)と同様の機能を組み合わせることで、戸建住宅用量産システムとしては初めて、地中熱を熱源とする給湯システムを開発しました。冬期は地中熱利用により、また、夏期は冷房排熱の有効利用により給湯効率や省エネ性を向上し、CO2排出量の削減を実現しました。
 なお、CO2排出問題に大きく影響する家庭部門におけるエネルギー使用の約6割は、冷暖房および給湯が占めています。今回の新システムは、その冷暖房と給湯の熱源に地中熱(および冷房排熱)を利用することでCO2排出量削減に貢献するものです。
  「エコキュート」とは、自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯機の愛称として一般的に使われている言葉で、関西電力の登録商標です。
  従来の「地中熱利用冷暖房システム」および「ヒートポンプ式給湯機(エコキュート)」については、末尾に添付した<ご参考>資料をご参照ください。
 
1.開発の背景
   最近は当社でも、オール電化住宅の普及とともに、給湯システムにエコキュート(ヒートポンプ式給湯機)が採用されるケースが増えています。特に地中熱冷暖房はオール電化・エコキュートと合わせて採用される傾向が強いと言えます。しかし、従来の当社地中熱冷暖房は給湯システムと全く別々であり、生活エネルギーの約3分の1を占める給湯エネルギーに関しては空気熱源を利用する形となっていました。そこで、冷暖房と合わせて給湯熱源も地中熱に変更することで、消費電力を抑えCO2排出量を更に削減できると考えて、環境省の平成18年度地球温暖化対策技術開発事業としての助成も受けて研究・開発を進めてきました。
 
2.新システムの特徴
   今回開発した地中熱利用ヒートポンプ給湯・冷暖房システムは、ヒートポンプ式給湯機を地中熱冷暖房と組み合わせて給湯熱源を空気から地中熱に変更することにより、ヒートポンプ式給湯機の省エネ性を更に高めました。冬期の給湯では、地中熱暖房と同じく、空気よりも温度の高い地中熱を熱源とすることで、空気と地中熱との温度差分だけ省エネ性が高まります。夏期の給湯では、従来は地中に捨てていた冷房排熱を給湯熱源として利用することで、エネルギーの有効利用により省エネ性が高まります。これにより、冷暖房と給湯を合わせたトータルでのランニングコスト・CO2排出量を低減しました。
 また、従来は冷暖房用と給湯機用の2台必要であったヒートポンプユニットを、機能を集約して1台の多機能システムとすることで、従来の地中熱冷暖房とエコキュートを組み合わせて設置する場合に比べて省スペース化するとともに、低価格化も実現できる見込みです。
 
3.新システムの構成
  新システムは、主に「地中熱交換器」「ヒートポンプ熱交換ユニット」「給湯機」「冷暖房室内機」から構成されます。
 
  【システム概念図】
 
 
(1) 地中熱交換器(従来システムと変わらず)
   従来システムと同じく地中熱交換器には、建物建設における軟弱地盤対策用に旭化成建材株式会社が製造・販売している旭化成独自の鋼管杭EAZET(イーゼット)を転用しています。これにより、一般的な地中熱冷暖房の場合に必要となる深度50~100メートルという大掛かりな掘削工事が不要となり、6~10メートル程度の鋼管杭を専用の小型重機で数本ねじ込むだけの簡易な施工で済みます。
 地中に埋設したEAZETの中に、熱交換器として金属強化ポリエチレン管のUチューブを通し、そのチューブの中に不凍液を循環させることにより熱交換を行います。
 
(2) ヒートポンプ熱交換ユニット
   ヒートポンプユニットの寸法は幅950×奥行315×高さ1,100ミリメートル。コンパクトなサイズですが、冷暖房機と地中熱、給湯機と地中熱、冷房機と給湯機の間の熱交換を全てこれ1台で対応できます。空気ではなく地中熱を熱源とするため、一般的な(従来のエコキュートも含めた)ヒートポンプユニットと違い冬期運転時の着霜がなく、霜取り運転による能率ダウンがありません。また、排熱ファンがないため効率ダウンを心配する必要がなく、隣地境界までの距離が短い狭小スペースなどにも設置しやすくなります。
 
(3) 給湯機
   給湯機の寸法は幅625×奥行730×高さ2,165ミリメートル(460リットル)、日立製エコキュートの貯湯層を転用しています。一般市販品をベースとすることで開発コストを抑えています。
 
(4) 冷暖房室内機
   冷暖房室内機は日立製ヒートポンプエアコンのマルチタイプ室内機(一般市販品)を利用しているため、開発コストが抑えられるとともに、壁掛け型、1方向天井カセット型、4方向天井カセット型、床置き型、埋込み型など多様な選択肢の中から間取りなどに合わせて選ぶことができます。
 
  【運転モード概念図】
 
夏期:冷房運転   夏期:冷房排熱・給湯運転
 
     
冬期:暖房運転   冬期:暖房・給湯運転
 
     
通期:給湯運転    
   
 
4.期待される効果
   比較として「A:一般的なヒートポンプエアコン+潜熱回収型高効率ガス給湯機(エコジョーズ)」と「B:新システム」を比べた場合の初期設置費用、CO2排出量、ランニングコストは下表のようになります。これにより、平成21年度(累積販売台数100台として)でのCO2削減効果は約54トン、平成23年時点(累積販売台数500台として)では約270トン削減されると期待されます。
 
  初期設置費用 年間CO2排出量 年間ランニングコスト
(万円) (比率) (kgCO2/年) (比率) (円/年) (比率)
A 150 100% 1,640 100% 149,000 100%
B 250 167% 1,100 67% 62,000 42%
 
  モデルプラン:延床面積132m2(40坪)、冷暖房室内機4台
  地中熱利用給湯冷暖房システムCOP(エネルギー消費効率)は冷房4.8、暖房4.6、給湯2.65を使用(メーカー定格値)。冷房時の排熱回収は40%と想定。
  エアコンCOPは冷房2.94、暖房3.27、エコキュートCOPは2.35を使用(平成18年度住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業における省エネエアコン、エコキュート基準を適用)。
  地中熱利用給湯冷暖房システムは電化上手、オール電化契約を適用。
  各熱源単価は平成18年5月現在を使用、金額は税込み、基本料込みの価格を使用。
  NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成金制度を利用すれば、現制度で設置費用の3分の1の補助が受けられます。
 
<ご参考1>地中熱利用冷暖房システムとは(平成16年発売の従来システムの概要)
   一般的なヒートポンプエアコンが空気(外気)を熱源とするのに対し、地中熱利用冷暖房システムは、年間を通して温度がほぼ一定な地中熱を熱源としています。夏期の冷房時には外気温よりも温度が低く、冬期の暖房時には外気温よりも温度が高い地中熱を熱源とするため、同じ量の熱を移動させる(ヒートポンプを動かす)ために必要な消費電力が削減され、結果的にランニングコストやCO2排出量が削減されます。
 また、地中熱冷暖房では、一般的なヒートポンプエアコンと違い冷房排熱を外気に放出しないため、大都市部において問題化しているヒートアイランド現象の抑制効果も期待されます。
 平成16年に当社が発売した地中熱冷暖房は、それ以前に存在していたシステムが概ね大規模施設などを対象とする戸建住宅に採用しづらいものばかりだったため、当社の供給する戸建住宅ヘーベルハウスの設備仕様として開発したものです。特に高額となりがちな地中熱交換器埋設のための掘削費用については、旭化成独自の鋼管杭EAZET(イーゼット、製造・販売:旭化成建材株式会社)を利用することで大幅に低く抑えています。
 
<ご参考2>ヒートポンプ式電機給湯機(エコキュート)とは
   エコキュートは、CO2を冷媒としたヒートポンプでお湯を沸かす給湯システムであり、通常はヒートポンプエアコンと同じく空気(大気)を熱源としています。一般的には、割安な深夜電力を利用して夜間に沸かしたお湯を貯湯タンクにためる仕組みであるためランニングコストが低く、燃焼型給湯器に比べて排出されるCO2が少ないことが特徴です。
 
以上
 

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