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ここで言う「住ニーズ」とは、生活者の意識に顕在化している住まいに関する要求だけでなく、住まいがそれを備えていれば生活者の潜在的な要求を満たすことができると思われる配慮などを含めた、住まいに求められるべきニーズ全般を意味しています。 |
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1. 調査の背景 |
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住まいづくりの中で「家事の合理化」は大きなテーマの1つでしたが、NHK国民生活時間調査から1995年・2000年・2005年の家事の平均時間変化を見ると炊事・掃除・洗濯の時間はほぼ下げ止まっており、これ以上の家事合理化は限界に近い状況と考えられます。
また、以前に比べて夜間・深夜営業の店舗が増えた現在、家族での買い物をはじめ家族での外食、塾やお稽古事に通う子供、スポーツクラブに通う大人など、都市を中心にライフスタイルの多様化・夜型化が浸透しつつあります。
このような社会的環境の中、当社がロングライフ住宅として建築するヘーベルハウスが多様化する住ニーズに対応するためにも、「生活時間」という視点から住まいに求められるものを見直すこととしました。そのために、「子の成長」「共働き」「親同居」といった家族構成とその変化を軸に生活時間を分析し、それらが生み出す住ニーズの変化について考察します。 |
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2. 調査の全体構成 |
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本調査報告は、「生活バランス調査」「生活リズム調査」「ヒヤリング調査」の3つの調査結果から住ニーズを考察したものです。 |
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3. 「女性のライフスタイルと住生活研究会」について |
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首都大学東京と当社との産学共同による「女性のライフスタイルと住生活研究会」において、同研究会メンバーのうち大学研究者(下記の*参照)が家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」のデータを用いて行った「女性の居住実態とその変化に関する研究」、および、当社住生活総合研究所が行った調査研究などを参照し、「子の成長」「共働き」「親同居」といった家族構成とその変化による生活バランスの変化や家事・育児の支援状況を把握し、住ニーズに与える影響を考察しました。更に、その結果を検証するために「生活リズム調査」の対象者の一部への訪問調査と見識者へのヒヤリング調査を行いました。 |
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正式調査名称 |
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女性のライフスタイル変化に伴う住要求に関する調査研究 |
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研究期間 |
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平成20年5月~平成21年5月 |
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構成メンバー |
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伊藤 史子 |
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(首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 都市システム科学域 准教授) |
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松本 真澄 |
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(首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 建築学域 助教) |
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柳澤 一希 |
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(首都大学東京 大学院 建築学専攻 研究員)※平成21年4月より価値総合研究所勤務 |
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藤岡 泰寛 |
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(横浜国立大学 大学院工学研究院 講師) |
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松本 吉彦 |
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(旭化成ホームズ(株) 住生活総合研究所 共働き家族研究所 主席研究員) |
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入澤 敦子 |
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(旭化成ホームズ(株) 住生活総合研究所 共働き家族研究所 主幹研究員) |
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伊藤 香織 |
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(旭化成ホームズ(株) 住生活総合研究所 共働き家族研究所 研究員) |
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橘田 洋子 |
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(シトラス 主宰) |
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4. 「生活バランス調査」について |
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「女性のライフスタイルと住生活研究会」において「女性の居住実態とその変化に関する研究(東京大学空間情報科学研究センター、CSIS Discussion Paper Series,95)」に掲載された「消費生活に関するパネル調査(財団法人 家計経済研究所による調査)」に基づいて行った分析・検討のうち、2004年度(第12年度)のものを中心に抜粋し「生活バランス調査」としてまとめました。
一日(24時間)の生活バランスを「仕事・通勤」「家事・育児」「趣味・娯楽・勉学」「基礎時間(睡眠時間を含むその他の時間)」の4つに分類し、それらの時間配分(バランス)を正方形のチャートに表して比較しました。25~45歳で、結婚していて、長子が中学生以下の女性の一日の生活時間バランスを中心に分析・検討がされています。 |
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5. 「生活リズム調査」について |
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正式調査名称 |
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ヘーベリアンの生活リズム調査 |
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調査時期 |
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第一次調査 |
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平成20年3月 |
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第二次調査 |
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平成20年7月 |
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調査方法 |
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ヘーベルハウス居住者のうちネット登録者を対象に電子メールでアンケートを依頼。1) 同居中の配偶者がいる方、2) 家族の生活時間とそれに対応した夕食の調理や家事の様子がわかる方、という条件に該当する方にウェブサイト上のアンケート画面から回答してもらう |
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6. 調査結果の要約 |
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(1) 子育て期に生活時間のバランスが大きく変化する。 |
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核家族専業主婦世帯(パート含む)においては、長子出産時に家事・育児時間が急増し、幼児期には11時間以上を占め他の時間を圧迫します。学齢期(小学生・中学生)になると家事育児時間は次第に減少し、仕事や趣味などの時間に配分されていきます。 |
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■ 専業主婦(パート勤務含む)世帯の生活バランス |
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(2) 生活リズムは幼児期に早まり、生活リズムのずれが夕食時間を分散させる。 |
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核家族専業主婦世帯においては幼児期に急激に生活リズムが早まり、19時以前に夕食をとる世帯が7割を超えます。この時期は夫の帰りが21時以降となることがある世帯が半数を超える最も遅い時期であるため、夕食を分散してとる世帯が8割に達しています。
学齢期には夫の帰りが次第に早くなりますが、子の塾や習い事からの帰宅が遅くなり、夕食が分散する傾向は続きます。夕食の時間はリタイア期には再び早まり、夕食の分散傾向は独立期の子が家を出て夫婦のみとなると解消します。 |
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■ ライフステージの進行による生活リズムの変化 |
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(3) LDは生活リズムのずれた家族が集まり、キッチンは家族共用の空間となっている。 |
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家族が同時に夕食の食卓を囲むことは少なくても、夜のLDKは家族が多様な行為をしながら集まっている場となっています。学齢期には8割が別々に夕食をとっていますが、そのような分散夕食時でも約6割は「家族がLDKにほとんど居る」と回答しています。また、その過ごし方は家事、勉強、TV、ゲームなど多様な行為が夕食と並行して行われています。
夫や中高生の夕食関係の家事への参加は、共働き世帯の方が専業主婦世帯に比べ多い傾向が見られます。小学生では大きな差はなく、どちらも約7割が手伝いや片付けに参加しています。また、手元が見えるオープンキッチンの方が、子が手伝う比率は高く、LDK空間の在り方が家族の協力と関係している可能性を示しています。 |
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(4) 共働き世帯では妻の家事・育児時間が限られ、夫や親がサポートしている。 |
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核家族共働き世帯の妻の生活バランスを見ると、仕事・通勤に時間を割かれて家事・育児時間が限られており、幼児期には、専業主婦世帯では約11時間であるのに対して半分以下の約5時間となっています。夫の家事・育児時間は、共働き世帯では全般的に専業主婦世帯に比べて長く、幼児期には33分の差があります。
また、親との居住距離が近いほど妻の家事・育児時間が短い傾向が見られ、妻が働いている比率が高いなど、夫や親のサポートを感じさせる結果となりました。 |
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(5) 核家族共働き世帯は、家族の生活リズムのずれが少ない。 |
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核家族の場合、共働き世帯は専業主婦世帯に比べて子の生活リズムが遅く、夫の帰宅が規則的なため、夕食が家族一緒の割合が高いなど家族の生活リズムのずれが少ない傾向があります。親融合同居(※2)の場合は、共働き世帯では親が主婦役を務めるために核家族専業主婦世帯の生活リズムに比較的近く、逆に専業主婦世帯では子世帯妻のパート勤務が増えるため核家族共働き世帯の生活リズムに比較的近い傾向があります。
核家族共働き世帯では、夕食が家族一緒の割合が4割を占め、親同居や専業主婦世帯など他の場合の倍以上あります。 |
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■ 夕食の一緒・別々 |
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※2 |
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「親融合同居」とは、親世帯と子世帯が夕食を同じ場所でとる同居形態を指します。同一建物内の同居でも夕食の場所が分かれている二世帯住宅などの場合は「独立同居」として核家族に分類しました。 |
※3 |
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「19時前夕食率」とは、19時前に夕食をとる家族がいる世帯の比率を指し、一部の家族の夕食が19時以降となる世帯も含んでいます。同様に「21時以降夕食率」とは、21時以降に夕食をとる家族がいる比率を指します。 |
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(6) 夜洗濯が一般化し、室内干しスペースの確保に工夫が見られる。 |
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核家族の場合、夜洗濯は専業主婦世帯で5割、共働き世帯では8割が行っています。親融合同居の場合は夕食の生活リズムの傾向と同様に、共働き世帯では親のサポートにより夜洗濯が減り、専業主婦世帯では洗濯時間の重なりを避けて増える傾向があります。
夜洗濯の増加に伴い室内干しも一般化し、専用のコーナーを設けるケースも見られるようになりました。 |
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7. 調査結果から見た住ニーズの変化 |
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本調査から子育て期の住ニーズを整理すると、以下のような住ニーズの変化が挙げられます。ロングライフ住宅として、生活バランスとリズムにおける子の誕生・成長による変化や、共働きや親同居による違いを考慮しつつ、このような子育て期の住ニーズを満たし、その後の家族の変化にも対応できるような家づくりが求められています。 |
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リビングダイニングは家族一緒の食事や団らんだけではなく、子育て期には食事とともに家事・仕事・勉強など多様な行為を同時に行うことができ、生活リズムのずれた家族が集まる場であることが求められる。 |
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キッチンは「主婦の城」ではなく、主婦を中心として夫や子が手伝い、あたためや片付けを行うことを想定した家族共用の空間として考える。オープンキッチンは子の手伝いが多く見られ、子育て期に向いたキッチンの形式である。 |
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幼児期には妻と子が早く就寝するという生活リズムが生じるため、主寝室は夫婦だけの就寝場所、子供部屋は子供だけの就寝場所と考えるのではなく、主寝室や他の部屋が妻と子の就寝場所として使用されることを考慮すべきである。 |
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(4) |
共働きや親同居による生活リズムの違いを考え、日当たりや洗濯動線を考慮しながら、室内干しのスペースを計画すべきである。 |
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以上 |
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