セルロースナノ微粒子「ナノアクト」の本格生産・販売開始について
〜免疫クロマト診断薬等の発色剤として最適な素材〜

2014年12月16日
旭化成せんい株式会社

 旭化成せんい株式会社(本社:大阪市北区、社長:高梨 利雄)は、再生セルロース繊維「ベンベルグ」で培ったセルロース技術を基に、セルロースナノ微粒子「ナノアクト」を開発しました。「ナノアクト」はセルロースの着色性と親水性を活かした着色ナノ微粒子であり、免疫クロマト診断薬等(※1)の発色剤として使用することで、高感度化、迅速判定、判定ラインの多色化等が可能となります。

 今後この特長を活かして、免疫クロマト診断薬等の発色剤用途として「ナノアクト」の本格生産・販売を開始しますので、お知らせします。当社は今後、セルロースナノ微粒子ビジネスの展開を国内外で加速していきます。

「ナノアクト」電子顕微鏡イメージ
「ナノアクト」電子顕微鏡イメージ

「ナノアクト」製品サンプル
「ナノアクト」製品サンプル

1.背景

 当社は80年にわたり培ってきた再生セルロース繊維「ベンベルグ」のインフラ、ノウハウをベースにナノ微粒子化技術、濃染化技術を確立し、セルロースナノ微粒子「ナノアクト」の製品化に成功しました。

 従来の免疫クロマト診断薬は、採取した検体の抗原濃度が低い場合に発色ラインが十分確認できないといった問題や、判定時間の短縮、一つの診断キットで複数の検体を同時に測定する際の識別性を高めるといったニーズがありました。「ナノアクト」では、このような課題を解決できることが明らかとなり、このたび、インフルエンザ診断薬の発色剤として採用されることが決定しました。

2.免疫クロマト診断薬等の発色剤としての「ナノアクト」の特長

 現状では発色剤として金コロイド、ポリスチレンの微粒子が一般的に使われていますが、「ナノアクト」は従来の発色剤に比べ以下の4つの特長を有しています。

(1)高視認性

 従来の発色剤である金コロイドは色が濃いものの粒子が小さい、一方、ポリスチレンは粒子が大きいものの色が薄い、という性質を持っているのに対して、「ナノアクト」は粒子の大きさと色の濃さを両立することにより、視認性の高さを実現することに成功しました。

(2)高感度化(低い抗原濃度での検出が可能)

 「ナノアクト」は発色度が高いため、テストラインに集積した際に視認性が他の発色剤と比較して優れており、低い抗原濃度での検出が可能です。hCG(妊娠検査)モデル試験で比較した場合、「ナノアクト」は金コロイドの10倍、またトロポニンT(※2)試験では8倍の感度であるという結果を得ました。

 高感度化により、抗原濃度が低く、発色しないことによる陽性の見過ごし(感度未満)の低減等が期待でき、更には疾病等の早期発見に繋がります。将来的には被検体の採取方法を咽頭拭いや血液採取といった方法から、(抗原量が低い)唾液等の採取に切り替えることで、患者様の肉体的負担の軽減に役立つことも期待されています。

  • (※2)トロポニンT試験:「心筋マーカー」の一つで血液中の出現有無を測定することにより、心筋梗塞など心筋が何らかのダメージを受けているかを判定します。

(3)迅速判定が可能(判定ラインの出現時間が早い)

 「ナノアクト」は発色度が高いため、他の発色剤を使用した場合よりも早く判定ラインが現われます。これにより従来よりも診断時間を短縮することで、患者様の待機時間が短縮され、同時に医療関係者様は多くの患者様を診断することが可能です。

(4)判定ラインの多色化(異なる対象物の同時診断が可能)

 「ナノアクト」は標準品として赤2種類、青2種類、緑1種類、黒1種類の計6種類をそろえているため、異なる対象物の同時診断が容易になり判定者にわかりやすい製品設計が可能です。

3.「ナノアクト」の発売について

(1)製品名 セルロースナノ微粒子「ナノアクト」
(2)発売日 2014年12月中旬より
(3)製品規格  
平均粒径(nm) OD(※3) 分散媒体 濃度(Wt%)
330 赤2種類、青2種類
緑1種類、黒1種類
Max.270
(色によって異なる)
1
  • 記載データは測定値であり、保証値ではありません。
  • (※3)OD:optical density (光学濃度)=色の濃さを表す指標。
(4)販売目標 数年内に売上高10億円

 なお、12月15日より「ナノアクト」を使用したインフルエンザA/B型の同時診断薬キットが国内診断薬メーカーであるアドテック株式会社が製造販売元、株式会社LSIメディエンスが販売元として発売されます。2015年度以降も「ナノアクト」を使用した診断薬が国内外の診断薬メーカーから順次、市場投入されることが見込まれています。

以上


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