建替え前の空き家率「24%」、60歳以上「70%」
高経年マンションにおける、区分所有者とコミュニティの高齢化
〜空き家問題は戸建てだけではない!“限界集落化”するマンションの実像〜

2015年3月4日
旭化成不動産レジデンス株式会社

 旭化成不動産レジデンス株式会社 マンション建替え研究所(所在:東京都新宿区、所長:向田 慎二)は、高経年マンションにおける区分所有者とコミュニティの高齢化などについて、その実態を分析し調査報告書にまとめました。

 今回の報告書では、建替えマンションにおける「空き家率」の詳細のほか、区分所有者の「年齢」や「世帯構成」、「再建後の再取得率」などを分析しています。

 調査結果では、建替え前のマンションの空き家率は「24%」にも上り、区分所有者の年齢は60歳以上が「70%」を占めており、いわゆる“限界集落化”と呼ばれる現象が、過疎地に限らず大都市部の高経年マンションにおいても発生している実態が明らかとなりました。

 また、再建前のマンションに居住していた75歳以上の高齢区分所有者の、再建後のマンションの再取得率は70%以上と高いことがわかり、一方で転居した高齢者の理由は、長い仮住まいや引越しの不安など心情的な抵抗であることがわかりました。当社では今回の調査結果をもとに、高齢者サポートを含めた今後の事業推進に活かしてまいります。

T.調査の背景と目的

 高経年マンションにおいて、住民の高齢化と空室化の問題があることは、当研究所が2011年に発表した「当社マンション建替え事業における区分所有者の実態調査」においても報告しました。高経年マンションにおける高齢者問題は、近年はいろいろな場面で議論され、また空き家問題もここ数年大きな社会問題となりつつあります。

 これらの問題は今後も進行するものと思われます。管理組合での対応には限界があり、行政を含めた対策の検討も不可欠ですが、まずは、建替えマンションにおける高齢区分所有者の状況についての、より細かな分析をするとともに、区分所有者本人のみならず世帯構成等の面でも掘り下げ、その実態を把握することが肝要と考え今回の調査をいたしました。

U.アンケート調査実施概要

■調査方法 過去社内資料の解析
■実査期間 2014年11月〜2015年2月
■調査対象 当社参画の建替えマンションの中で、従前戸数が50戸以上のマンションの中から以下6棟のマンション(=従前戸数ベースで計704戸)を対象に、個別面談記録等の社内資料やマンション建替法に関する書類を分析。
諏訪町住宅(2004年)国領住宅(2006年)野毛山住宅(2007年)下連雀住宅(2008年)池尻団地(2012年)調布富士見町住宅(2013年) ※カッコ内は解体時期

W.主な調査結果・主旨

<1:区分所有者の高齢化が顕著>

(1)区分所有者(マンション内に居住・マンション外に居住問わず全体)の平均年齢

=60歳以上が「70.7%」(70歳以上は「41.9%」)39歳以下はわずか「5.7%」

 管理組合の運営が困難となるマンションも生じると思われ、昨今議論されている第三者管理の問題を含め、今後のマンションの在り方について真剣な議論が必要になっていると思われます。

<2:限界集落化ともとれる高経年マンション>

(1)従前の空き家率=実に「24%」。また、自身や親族による「自宅」利用は50%未満。

 住宅の空き家率の全国平均は13.5%、一番高い都道府県は山梨県で17.2%となっています。(2013年 総務省「住宅・土地統計調査」より)今回調査した6つのマンションがいずれも東京都内もしくは横浜市内の利便性の高い立地であることを考えると、24%という空き家率の高さは深刻であるといえます。

(2)3人以上の世帯=わずか「12.8%」。単身世帯は「41%」

 世帯の人数構成では、3人以上世帯の比率は非常に少なくなっています。その原因は高齢化のほかに、例えば40〜50年前に建築された当時の建物には、脱衣スペースも洗濯機置き場も無いなど、あまりにも今日の住まいと比べて生活しにくい状況であることも想像されます。なお、高齢者については世帯人数が更に減少し、75歳以上では46%が単身世帯になっています。

 高経年マンションの居住者の高齢化、また、世帯の少人数化が顕著であるとともに空き家率も高くなりつつあることから、「マンション」あるいは「団地」を集落単位として見た場合に、限界集落化しつつあることを確認することができました。

<3:高齢者も積極的に再建後に居住>

(1)再建前のマンションに居住していた区分所有者の再建後の再取率
=75歳以上の方の「70%」以上が再取得するケースも

 マンション内に居住されていた区分所有者の再建後の再取得率は76%でした。(区分所有者全体では68%)2011年の調査と同じく、内部居住者の再取得率の高さが確認できました。

 この傾向はマンション内に居住する高齢区分所有者にも共通しており、「75歳以上の内部居住者」についても、仮住まいが3年弱に渡ったことで再取得率が極端に低かった「調布富士見町住宅」を除けば、71.4%が再取得しています。このことから「高齢者だから転出せざるを得ない」という状況ではないことがわかります。

(2)再取得時に追加金を拠出した割合
=約「80%」。自己負担をしてでも再建前より広い住戸を取得する傾向。

 対象の6棟では、追加金を拠出してより広い住戸を取得される方の比率が高かったことがわかりました。再建前のマンションの評価よりも評価が安い住戸を取得した区分所有者は約20%にとどまり、約80%の区分所有者は建替えに際して自己負担(追加金)をしていました。(この傾向は、マンション内居住者もマンション外居住者も大きな違いはありませんでした。)

 なお、全体で再取得率が低かった「調布富士見町住宅」のケースで、75歳以上の高齢区分所有者の方が再建後のマンションを取得せずに転出した理由は、経済的理由よりも「長い仮住まいについての不安」、「二度の引っ越しが負担」といった心情的な抵抗が複数聞かれました。このことからも、建替えの際には高齢者を体力や心情の面でいかにサポートしていくかが大きな課題といえます。

以上


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