2015年2月23日
旭化成株式会社
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:浅野 敏雄)は、米国のバッテリーセパレータ及び医療・工業用膜関連の高分子ポリマー膜メーカーであるPolypore International, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、CEO:Robert B. Toth、米国ニューヨーク証券取引所(以下「NYSE」)上場:PPO、以下「Polypore(ポリポア)社」)と、当社の米国子会社による現金を対価とする合併(以下「本合併」)によりPolypore社を買収(以下「本買収」)することについて合意しましたので、お知らせします。
また本買収に関連して、Polypore社は同社の医療・工業用膜事業を、本合併の完了前に米国の3M Company(本社:米国ミネソタ州、CEO:Inge G. Thulin、NYSE上場:MMM、以下「3M社」)に対して譲渡(以下「本譲渡」)することについて当社及び3M社と本日合意しており、3M社はPolypore社の同事業を約10億米ドルで本合併の完了前にPolypore社より取得します。
したがって、当社は、本譲渡後にバッテリーセパレータ事業を行う会社としてのPolypore社を買収することとなる予定であり、その対価は約22億米ドルとなります。
本買収及び本譲渡は友好的なものであり、当社、3M社及びPolypore社の各取締役会で承認されております。なお、本買収及び本譲渡完了のためには、関連する各国競争法に基づく条件の充足その他一般的な前提条件を満たすことが必要となります。
本買収のスキーム図
1.Polypore社買収の目的
(1)本買収の背景
当社は創業以来、時代の変化や、社会的なニーズに応え、ポートフォリオを転換させることで持続的な成長を遂げてきました。2011年度よりスタートさせた中期経営計画「For Tomorrow 2015」では、グローバルにおいて競争力のある事業を積極的に展開することに加えて、「健康で快適な生活」「環境との共生」の視点で事業を推進し、「環境・エネルギー」「住・くらし」「ヘルスケア」の3つの分野において、既存事業のさらなる拡大と新しい社会価値の創出に取り組んでいます。
(2)本買収に至った経緯
当社の「環境・エネルギー分野」の一翼を担うエレクトロニクス事業領域は、電子部品系事業と電子材料系事業で「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」高度な技術による製品を提供しています。とりわけ電子材料系事業では、リチウムイオン二次電池用セパレータ「ハイポア™」を戦略的製品と位置付け、バッテリーセパレータ事業の拡大を図っています。
「ハイポア™」は、微小な孔を多数持つ高性能なポリオレフィン膜で、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコンなどのリチウムイオン二次電池に使用されています。今後は成長が期待されるハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車といった環境対応車用途や、電力エネルギーの効率的活用で需要の拡大が見込まれる電力貯蔵、蓄電システム用途での事業拡大を目指しています。
そのため、製品力をさらに高めるべく、顧客ニーズに適合した高機能膜の開発強化や海外加工体制の構築等に積極的に取り組んでいます。
Polypore社は高分子ポリマー膜における技術力を持ち、リチウムイオン二次電池及び鉛蓄電池のバッテリーセパレータ事業においてグローバルな供給体制と高度な製品開発力を有する企業です。今回の買収対象であるPolypore社のバッテリーセパレータ事業は、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用のセパレータ「Celgard™(セルガード)」に加えて、自動車や産業向け用途等で広く普及している鉛蓄電池用のセパレータ「Daramic™(ダラミック)」の両ブランドを展開しており、独自の製品群を有するとともにグローバルな供給体制を構築しています。当社のエレクトロニクス事業領域における電子材料系事業は、Polypore社のバッテリーセパレータ事業と協業を図ることで、「環境・エネルギー」分野での中長期的な技術力の向上及び事業の拡大が可能となるため、本買収の合意に至りました。
(3)当社と3M社で買収を提案するに至った経緯
上述の通り、本買収に関連して、Polypore社は同社の医療・工業用膜事業を本合併の完了前に米国の3M 社に対して譲渡することについて当社及び3M社と合意し、Polypore社と3M社の間で本譲渡に関する契約を締結しています。Polypore社は医療・工業用膜事業で使用される分離膜を主に「Membrana™」ブランドの下で製造・販売していますが、当社では、中長期的な成長戦略との適合性等に鑑み、本買収の対象から除外することとし、3M社は医療・工業用膜事業分野における拡大を目指していることから、本譲渡の合意に至りました。
(4)本買収の意義
本買収により、当社は以下のことが実現できると考えています。
なお、当社は本買収以降も、バッテリーセパレータ事業における成長戦略の実現及び加速のために必要な資源投入を図り、同事業での革新的な技術開発に取り組むことで、持続的な成長を目指してまいります。
2.本買収及び本譲渡のスキーム及び対価と今後の流れ
本買収は、本買収のために設立された当社の米国における買収目的子会社とPolypore社を合併させる方法により行います。本合併は、Polypore社の株主総会において承認が得られること及びPolypore社と3M社の間の本譲渡完了等を条件に成立し、合併後の存続会社はPolypore社となります。この手続きを通じて当社は、現金を対価としてPolypore社のすべての既存株主から同社株式を取得し、合併後のPolypore社はNYSEの上場を廃止するとともに、当社の完全子会社となります。
本買収価格は、1株当り60.50ドル、Polypore社の2015年2月20日までの過去1ヶ月の平均株価に対し28.4%のプレミアムを加えた金額になります。
尚、本譲渡は、本譲渡のために設立された3M社の買収目的子会社とPolypore社の間で締結された資産譲渡契約に従って、医療・工業用膜事業を譲渡する方法により行います。この手続きを通じて3M社は、Polypore社に現金対価を支払うことにより、Polypore社の医療・工業用膜事業を取得します。
本譲渡において3M社がPolypore社に支払う譲渡金額は約10億米ドルとなります。
したがって、当社は、本譲渡後にバッテリーセパレータ事業を行う会社としてのPolypore社を買収することとなる予定であり、その対価は約22億米ドルとなります。
今後速やかに手続きを進める予定であり、詳細が確定次第お知らせします。
買収完了に至るまでの必要プロセス
3. Polypore社の概要
(1)名称 | Polypore International, Inc. | ||
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(2)所在地 | 米国ノースカロライナ州シャーロット市 (11430 North Community House Road Suite 350, Charlotte, North Carolina) |
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(3)代表者の役職・氏名 | CEO:Robert B. Toth | ||
(4)事業内容 | 高分子ポリマー膜の開発、製造及び販売 | ||
(5)資本金 | 588百万米ドル(連結:2014年9月27日現在) | ||
(6)格付け | – | ||
(7)設立 | 1966年 | ||
(8)生産拠点 | 米国、ドイツ、フランス、インド、タイ、中国、韓国 | ||
(9)従業員数 | 約2,400名(2013年12月28日現在) | ||
(10)大株主及び持株比率 (2014年12月31日現在) |
PRIMECAP Management Company 13.8% Capital Research Global Investors 11.4% Fairpointe Capital LLC 10.2% Waddell & Reed Investment Management Company 7.0% The Vanguard Group, Inc. 6.1% Wasatch Advisors, Inc. 5.8% |
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(11)当社との関係 | 資本関係、人的関係、取引関係はありません | ||
(12)最近3年間の連結経営成績及び連結財政状態(注) | |||
決算期 | 2011年12月期 | 2012年12月期 | 2013年12月期 |
純資産(百万米ドル) | 499 | 583 | 620 |
総資産(百万米ドル) | 1,482 | 1,586 | 1,550 |
1株当たり純資産(米ドル) | 10.8 | 12.5 | 13.6 |
売上高(百万米ドル) | 686 | 649 | 636 |
営業利益(百万米ドル) | 170 | 124 | 88 |
経常利益(百万米ドル) | 137 | 85 | 48 |
当期純利益(百万米ドル) | 105 | 71 | 82 |
1株当たり当期純利益(米ドル) | 2.28 | 1.52 | 1.79 |
1株当たり配当金(米ドル) | 0 | 0 | 0 |
注:米国証券取引委員会に提出されている年次決算書(Form 10-K)ベース。
4. 取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況
(1)異動前の所有株式数 | 0株 (議決権の数:0個) (議決権所有割合:0%) |
---|---|
(2)取得株式数 | 45,856,695株(注1) |
(3)取得価額 | Polypore社の普通株式:約28億米ドル(注2) |
(4)異動後の所有株式数 | 45,856,695株(注1) (議決権の数:45,856,695個)(注1) (議決権所有割合:100.0%) |
注1:本日現在の完全希薄化ベースの株式数を基準としております(本件買収に伴う株式関連報酬の精算による希薄化等を反映)。
注2:本取得価額にPolypore社の純有利子負債を加え3M社への譲渡金額を控除して算出した、当社のPolypore社のバッテリーセパレータ事業買収額は、約22億米ドルになります。
5. 3M社の概要
(1)名称 | 3M Company | ||
---|---|---|---|
(2)所在地 | 米国ミネソタ州セントポール市 (3M Center, St Paul, Minnesota) | ||
(3)代表者の役職・氏名 | Chairman of the Board, President and CEO:Inge G. Thulin | ||
(4)事業内容 | 電子、通信、工業、消費・オフィス関連、ヘルスケア、保安事業 | ||
(5)資本金 | 4,286百万米ドル (連結:2014年9月30日現在) | ||
(6)格付け | S&P: AA- Moody’s: Aa3 | ||
(7)設立 | 1902年 | ||
(8)従業員数 | 約88,700名(2013年12月31日現在) | ||
(9)大株主及び持株比率 (2014年12月31日現在) |
State Street Global Advisors (US) 7.7% The Vanguard Group, Inc. 6.2% BlackRock Institutional Trust Company, N.A. 3.8% MFS Investment Management 3.1% State Farm Insurance Companies 1.8% |
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(10)当社との関係 | 資本関係、人的関係、取引関係はありません | ||
(11)最近3年間の連結経営成績及び連結財政状態(注) | |||
決算期 | 2012年12月期 | 2013年12月期 | 2014年12月期 |
純資産(百万米ドル) | 18,040 | 17,948 | 13,142 |
総資産(百万米ドル) | 33,876 | 33,550 | 31,269 |
1株当たり純資産(米ドル) | 48.8 | 49.2 | 48.2 |
売上高(百万米ドル) | 29,904 | 30,871 | 31,821 |
営業利益(百万米ドル) | 6,483 | 6,666 | 7,135 |
経常利益(百万米ドル) | 6,351 | 6,562 | 7,135 |
当期純利益(百万米ドル) | 4,444 | 4,659 | 4,956 |
1株当たり当期純利益(米ドル) | 6.40 | 6.83 | 7.63 |
1株当たり配当金(米ドル) | 2.36 | 2.54 | 3.42 |
注:米国証券取引委員会に提出されている年次決算書(Form 10-K)ベース。
6.今後の見通し
本買収が成立した場合、Polypore社(ただし医療・工業用膜事業を除く)は当社の連結子会社となります。これに伴う当社の業績に与える影響については、本買収完了後、必要に応じ、速やかに開示いたします。
なお、本買収の終了は本年4月以降となる見込みであるため、本買収が2015年3月期の当社連結業績に与える影響はありません。
(参考)当社の当期業績予想及び前期実績
(百万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | |
---|---|---|---|---|
当期連結業績予想 (2015年3月期) |
1,991,000 | 158,000 | 164,000 | 103,000 |
前期連結実績 (2014年3月期) |
1,897,766 | 143,347 | 142,865 | 101,296 |
注:2015年2月5日公表(連結決算短信)ベース。
7.将来見通しに関する注意事項
本プレスリリースは、米国1933年証券法(Securities Act of 1933)第27A条及び米国1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)第21E条で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの将来に関する記述には、本プレスリリースに記載された取引の完了予定時期、本買収終了後の当社によるPolypore社の事業の運営、同事業に関する将来の運営、指揮、成功等の記載が含まれますが、これに限られるものではありません。これらの将来に関する記述は、将来の業績に関する保証ではなく、かつ将来における当社、3M社、及びPolypore社の実際の業績、展開又は財務状況と大きく異なることとなるような知れたるまたは不知のリスク、不確実性その他の要素があります。当社、3M社及びPolypore社が認識しているところでは、これらの将来に関する記述は、「考えます」、「期待します」、「見込みます」、「計画します」、「意図します」、「はずです」、「するつもりです」、「予測します」、「将来」、その他、これらと同様の表現、又は特に「戦略」、「目標」、「計画」、「意図」等に関する説明という形で示されています。多くの要因によって、本文書に述べられている「将来に関する記述」と大きく異なる実際の結果が、将来発生する可能性があります。かかる要因としては、(i)本取引の完了時期に関わる不確実性、(ii)Polypore社の株主によって本取引が承認されない、(iii)本取引と競合する提案がなされる、(iv)本買収の完了に必要とされる規制上の条件または他の条件が充足されないリスク、(v)本取引の発表によって生じうる従業員、顧客、仕入先、その他取引先との関係維持に困難が生じる可能性、(vi)本取引に関する株主関係訴訟によって、本取引の完了のタイミングに生じ、又は防御のための多額の費用若しくは賠償の支払が生じうるリスク、(vii)当事者に関連する法制度、会計基準等またはその他の経営環境の変化が及ぼす影響、(viii)事業戦略を実行する上での課題 、(ix)金融の不安定性及び他の一般的経済状況または業界状況の変化が及ぼす影響、(x)取引費用、(xi)確定又は偶発債務、(xii)その他直近のForm 10-Kの形式によるPolypore社アニュアルレポートの「リスクファクター」セクションに記載されているものを含む、Polypore社が米国証券取引委員会(以下「SEC」)に提出した書類に記載されているリスク(SECのウェブサイトhttp://www.sec.govから無料で入手することができます)が含まれますが、これらに限定されるものではありません。当社も、3M社も、Polypore社も、法律によって明示的に必要とされる場合を除いて、新情報、将来の情勢又はその他の結果として将来の見通しに関する記述を更新する義務は負いません。本発表における将来に関する記述は、この注意事項に従うこととなります。
8.追加情報及びその取得場所
Polypore社はSECに本取引に関する委任勧誘状を提出する予定です。かかる委任勧誘状は、Polypore社の株主に送付又は提供されます。SECに提出されるPolypore社の委任勧誘状や3M社の関連資料には上記にて述べました買収取引に関する重要な情報が含まれることから、投資家及び株主におかれましては、利用可能になり次第、これらの書類を慎重にかつその全体をお読みになるようお願いいたします。投資家及び証券保有者は、Polypore社からSECに提出された委任勧誘状(利用可能になり次第)その他の文書を、SECのウェブサイトhttp://www.sec.govから無料で入手することができます。
9.勧誘への参加者についての事項
Polypore社、その取締役及び執行役員は、本取引に関して、投資家及び証券保有者への委任勧誘の参加者とみなされ得ます。Polypore社の取締役及び執行役員に関する情報は、2014年の同社定時株主総会における委任勧誘状及び直近のForm 10-Kの形式による同社アニュアルレポートに記載されています。これらの書類はSECのウェブサイトhttp://www.sec.govから無料で入手することができます。本取引に関する委任状勧誘に係る利害関係についての更なる情報は、SECに提供された委任勧誘状(利用可能になり次第)より入手可能です。
以上