メディア向けフォーラムレポート

第16回 くらしノベーションフォーラム

子どもの自立における子ども部屋の意義


報告

子どもの学習・就寝の個室移行についての考察

講演:北浦氏 報告:木戸

はじめに

近年、子育て世代の半数以上が共働きとなったことなどを背景に、不足しがちな親子のコミュニケーションを促進するリビング学習が話題となり、関連する研究や提案も盛んに行われてきました。その一方、同じように子育て世代にとって重要な課題であるはずの成長期における子どもの自立を意識した住まい方提案はまだそれほど多くはみられません。
乳幼児から小学生にかけて子どもの主な居場所はLDKで、就寝も含めて親と共に生活します。ところが子どもは成長するにつれ自立をし、就寝の場や学習の場は子ども部屋へと移行していきます。
これまで当研究所ではLDで勉強する子どもの実態を捉えた+NESTをはじめ、川の字就寝の場所、子育て期の共用収納のあり方など家族の共用空間での暮らしの提案をしてきました。一方、成長に伴う子どもの生活空間の移行については現状で捉えきれておらず、まずは第一段階として就寝と学習の場が子ども部屋へ移行していく実態について調査しました。

  • 拡大

ページのトップへ戻る

子どもの就寝の移行についての考察

「子どもの成長に伴う母子同寝、別寝の割合」
持ち家一戸建てに居住する30代から40代、小学生の子どもがいる母親にWEBでアンケート調査を実施しました。(2017年)
母子同寝の割合は小学校1・2年生で約8割、5・6年生で5割、中学生で2割と学齢が上がるにつれ減り、別寝の割合は小学校1・2年生で1割弱、5・6年生で3割、中学生で7割と学齢が上がるにつれ増えます。この結果から子どもの成長に伴い、母子別寝が進んでいることが分かります。
しかし子どもの就寝の場は即座に変わる訳ではないようです。調査結果から同寝と別寝の割合は足して10割になりません。このことから、子どもには親の寝室で寝たり、子ども部屋で寝たりという併用期が存在することが分かります。併用期は小学校の6年間に見られ、早い子どもは低学年から始まり、中学年、高学年では4人に1人の割合になります。数字は決して高くはありませんが、併用期をたどる家族がいるということが分かりました。

「第一子、第二子の母子別寝の時期の比較」
次に第一子と第二子とで母子別寝の時期の比較をします。
1・2年生ではそれほど差は見られませんが、3・4年生になると第二子は19%が別寝、第一子は9%と10ポイントの差が生じます。この差から第二子は第一子に比べ別寝への移行が早いと言えそうです。

  • 拡大

  • 拡大

  • 拡大

  • 拡大

ページのトップへ戻る

子どもの学習の移行についての考察

「子ども部屋への移行の時期・その理由」
子どもがリビングから子ども部屋へ学習の場を移行した時期とその理由について8邸の定性調査を行いました。その結果、リビング学習をした子ども17人中、子ども部屋に学習の場を移行した子どもは10人でした。移行をしていない子どもの多くは小学生です。移行のタイミングは進学と受験で、中学進学と高校進学とで移行する学齢に3年の差がみられます。
移行した理由は学齢によって異なり、中学進学では子どもの環境を整えようと移行を促す親の意思が強く感じられます。また高校受験では子どもが学習に集中できる環境を自ら求め子ども部屋を勉強部屋と捉えている感があります。高校進学では移行の明確な理由が薄い印象を受けます。

「リビングダイニングの学習コーナーの役割」
今回の調査で学習の場が子ども部屋へ移行した後も子どもの意思によりリビング学習を行う「併用型」が確認されました。リビング学習をする理由として「環境が変わると勉強に集中できる」、「テーブルが広く、教材を広げやすい」といったリビング学習をポジティブに捉える子どもの様子が伺われます。

  • 拡大

  • 拡大

  • 拡大

  • 拡大

ページのトップへ戻る

まとめ

子どもの就寝と学習の場は成長に伴い移行が存在します。
就寝の場において完全な移行は短期間で行われるものではなく、親の寝室から子ども部屋へと段階をふんでいくと考えられます。また第二子が第一子に比べ別寝の移行が早く進むのは入居宅訪問調査から兄弟(姉妹)が同室に居ることの安心感が考えられます。子どもが別寝に向かう移行期には「ならし」が必要なようです。
学習において場の移行は進学・受験時に行われ、中学校に進学 するタイミングが多いようです。そこには子どもの環境を整えようとする親の意向が強く感じられます。学習の場を移行した後もリビング学習を行う併用型というものが存在し、リビングダイニングに学習コーナーを設けることで、子どもの居場所の選択肢が広がる可能性があるのではないかという仮説に到っています。
当研究所では、子どもの成長を長く受け止める家としてその要件は何なのかという問題に今後、答えていきたいと考えています。

ページのトップへ戻る