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相続新時代! 4つのリスクとその対策

相続

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2018年8月 7日

相続新時代! 4つのリスクとその対策

相続対策はライフスタイルや時代の変化と共に、注意すべきポイントが変わってきます。昨今は"人生100年時代"と言われ超高齢社会のライフプランをどうするべきか議論がなされていますが、相続においても超高齢社会やライフスタイル、市場環境の変化で対策を再考すべき局面にあると言ってよいでしょう。昨今、浮上してきた相続におけるリスクと対策について考えてみたいと思います。

リスク1ー認知症発症で、資産凍結リスク

日本人の平均寿命が、また更新されました。2017年の厚生労働省の発表によりますと、女性87.26歳、男性81.09歳で共に過去最高です。平均寿命は今後も延び続けると予想されています。
超高齢社会での課題の一つは、長寿でも健康でいられるかどうかです。これは相続においても、大きな問題です。特に懸念されるのが、意思の確認ができなくなる認知症等の病気です。
認知症は80歳を超えると、急激に罹患率が増え85歳以上の約2人に1人は認知症です。しかも潜在的な認知症患者も多数いると見られ、厚生労働省では2025年には65歳以上の5人に1人(2015年は7人に1人と推計)は認知症患者と推計しています。
認知症は、とても身近な病気として認識する必要があるでしょう。

相続における認知症リスクの課題は意思決定ができなくなるということです。意思決定ができないと、契約ごとなど本人しかできないことは法的に認められなくなる可能性が非常に高くなります。
遺言書の作成ができなくなる他、預金の引き出しや土地活用などの相続対策もできなくなるなど、事実上資産が凍結してしまう可能性があります。成年後見制度の法定後見制度を活用するようになりますが、資産などは保全が前提になりますので、積極的な土地活用や金融資産の運用はできなくなります。
また、認知症になって生命予後が10年以上のケースはたくさんありますが、それだけ資産凍結の期間が長くなるということも言えます。

このリスクに対応するには、遺産分割の計画を早めに設定し遺言書を作成する、また、認知症対策として、成年後見制度の任意後見制度や家族信託を併用するなどがあります。任意後見制度や家族信託はまだ事例が少なく、その内容をどうするかもケースバイケースです。専門家とよく相談して対策を講じるようにしてください。

認知症による資産凍結リスクはバックナンバー「相続対策の盲点 認知症のリスクを考える」でも解説しています。

■認知症の診断が降りるとできなくなること

長生きするにつれ、認知症の発症率は高まる。認知症になると資産が凍結し、相続対策ができなくなる可能性が高い。事前に遺言書、任意後見制度、家族信託で対策を講じる。

リスク2ー老老相続で、資産有効活用が遅れるリスク

相続における超高齢社会のもう一つの課題が老老相続です。
長寿が当たり前となり、被相続人の年齢も高くなっています。よく、老老介護が社会問題としてクローズアップされますが、その先にあるのが老老相続です。
財務省によると、相続発生のとき「年齢80歳以上」の被相続人は、1989年では38.9%でしたが、2013年には68.3%になっています。しかもそのうち90歳以上が23.7%です。今後も被相続人の高齢化は進むでしょう。

被相続人が90歳以上ということは、相続人の子どもは60歳〜70歳あたりです。もう老後のセカンドライフを準備、またはすでに送っているころでしょう。住宅資金や子どもの教育資金にお金のかかる30歳〜40歳に資産を受け継げば、有効に活用することができるのですが、セカンドライフではさほど必要にはなりません。資産を受け継ぐ相続人が高齢化し、資産が有効に活用されないのです。

■相続税の申告から見た被相続人の年齢の構成比

これは、受け継いだ資産が消費されず社会に流通しないという点で、日本経済にとってもマイナスの要因になっています。政府はこの問題の打開策として、生前贈与を促進するような税制優遇措置を打ち出しています。「教育資金の一括贈与制度」や「結婚・子育て資金の一括贈与制度」、「ジュニアNISA制度」などです。

また、相続年齢が高まれば、相続対策自体が後手後手になり、土地の有効活用などが遅れることもあるでしょう。相続対策として、最も有効な手段の一つである土地活用は、思いのほか気力・体力を伴います。高齢になってからでは、なかなか手をつけられないというケースが多くなります。できるだけ若いうちに、取り組むことがポイントになります。

資産を有効に活用するためにも、資産承継は相続を待たずにいつどうやって行うのか、また土地活用などで承継しやすくどう運用するかなど、計画を立てることが大切になってきます。生前贈与の活用も含め、将来の被相続人と次世代の相続人が協力して、土地活用などに取り組むことが必要でしょう。

老老相続に関しては、バックナンバー「老老相続の問題点とは?」でも解説しています。

老老相続で資産承継しても、相続人が高齢で資産が有効に活用できない可能性がある。資産を有効に活用するためにも、生前贈与や土地活用など、早めの対策を二世代で協力して行う必要がある。

リスク3ー二次相続で、自宅が空き家になるリスク

昨今の相続で問題視されているのが、二次相続における自宅の相続です。
一次相続では配偶者がそのまま自宅に住み続けるのが一般的です。そうすれば、小規模宅地等の特例により相続評価は8割減になり、大きな節税効果があります。
しかし、二次相続で子どもに自宅を相続させるとしても、子どもは持ち家で独立しているケースがほとんどです。そうなると、評価額が8割減になる小規模宅地等の特例が使えません。相続税の負担が大きくなるのは避けられないでしょう。

加えて、誰も住む人のいない自宅は空き家となってしまいます。
ニュースでもよく見かけるように、空き家は大きな社会問題の一つです。特に都市部の住宅密集地では、震災時の倒壊や火災などのリスクが問題視されています。防犯面や衛生面でも近隣に迷惑がかかります。
また、都市部に関しては土地の利用価値が非常に高いのが特徴です。利用価値の高い資産を放置しておくのは、得策ではありません。

相続税対策としては、自宅をアパート併用の自宅に建て替える方法があります。例えば、3階建ての1、2階を賃貸、3階を自宅にします。小規模宅地等の特例には自宅の土地の他、賃貸住宅など貸付事業用の土地に対しても相続評価額が5割減額されます(200m2まで)。アパート併用住宅の場合は、建物のアパートの割合分の敷地が5割減額になります。

5割減でもかなりの節税効果があります。また、賃貸部分の家賃収入は相続税の納税資金として確保することもできますし、相続後、空いた自宅は賃貸にすることもできます。土地の利用価値の高い都市部ならではの、資産の有効活用ができるのです。

自宅の空き家リスクについては、バックナンバー「知っておきたい実家の活用法〜空き家になる前に考える〜」でも解説しています。

■アパート併用の自宅を建てた場合の小規模宅地の特例の適用

自宅は二次相続で、相続税の負担が大きくなる可能性が高く、空き家になると近隣に迷惑もかかる。特定居住用の小規模宅地の評価減が適用にならない場合などは、アパート併用の自宅に建て替えるなど対策が必要。

リスク4ー地価上昇で、相続税の負担が増えるリスク

地価の上昇が続いています。
相続税の土地評価の算定基準となる路線価は、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、大阪府で5年連続の上昇、愛知県は6年連続の上昇です。要因は訪日観光客の増加、東京五輪、リニア新幹線などによる再開発ラッシュです。主に商業地の地価が高騰していますが、それに牽引されるように住宅地も上昇しています。

都市部での5年連続の路線価の上昇は、土地の相続税評価額を大きく上昇させます。路線価だけで見ても、この5年間に10万円上がっている住宅地も少なくありません。路線価は1m2の価格ですので、単純計算すると100m2の土地で1,000万円、200m2の土地なら2,000万円上がっている計算になります。
地価上昇による相続税の負担増は免れないでしょう。

また、2015年より相続税の基礎控除が4割縮小され増税となりました。基礎控除は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」です。これも相続税の負担を大きく押し上げる要因です。実際、2015年の相続税課税割合は東京国税局管轄で、それまでの7.5%から12.7%に大きく伸びています。これは基礎控除の減額で、今まで相続税の課税対象ではなかった人たちも、課税対象となったということを表しています。

地価上昇は今後も続くと見られています。加えて増税により、相続税の負担は確実に増えていくと見てよいでしょう。
まずは、地価上昇分が、相続税にどれだけ影響しているかを査定し直す必要があります。その結果によっては、相続対策の見直しを迫られるかもしれません。また、税負担だけではなく、地価が上昇しているということは、他の資産とのバランスが崩れ、これまで予定していた遺産分割の割合を変更しなければならないケースもあるでしょう。
なお、不動産の相続税上の評価については専門知識を伴いますので、必ず専門家に相談してください。

地価上昇については、バックナンバー「平成30年『路線価』、主要都府県で5〜6年連続上昇!」でも解説しています。

■主要都府県の標準宅地の路線価の対前年変動率の平均値推移(単位:%)

地価上昇、相続税増税により、相続税の負担増を余儀なくされている。相続対策の再考が必要かどうか、まずは土地の相続税評価額を再確認するところから始めたい。

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