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知っておきたい実家の活用法~空き家になる前に考える~

相続

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2015年4月21日

知っておきたい実家の活用法~空き家になる前に考える~

空き家が社会問題としてクローズアップされています。特に地方の空き家が問題視されていますが、都市部でも深刻です。「今は両親が住んでいるが、いずれは誰も住まなくなる実家」は、少なくないでしょう。都市部の場合、相続税も関係してきますので、事前に対策を考えておく必要があります。今回は実家の活用法について考えます。

「空家対策特別措置法」が施行!

2月26日、「空家対策特別措置法」が施行されました。これにより、倒壊の恐れがあるなど防災・防犯の面で問題のある「特定空家」と判定された場合、行政の権限で撤去することも可能になりました。また、「特定空家」は、固定資産税が更地の6分の1になる優遇措置を適用除外とすることも決まりました。
そもそも固定資産税の優遇措置は、空き家を生む原因の一つとも言われています。更地にすると固定資産税が最大6倍になる可能性があるため(実際は負担調整があり3〜4倍と言われています)、家の取り壊し費用も含めて考えると、空き家のまま放置しておくほうが、税金面での負担が少ないからです。空き家対策に関する自治体条例は従来からありましたが、社会的問題の大きさから、国としてもいよいよ本格的な対策に乗り出したということです。

今後、「特定空家」の調査は、5月末までに行われ、具体的な指導が行われていくとのことです。よほど、老朽化が進んでいない限りは「特定空家」には指定されないと思いますが、だからといって、問題が解決したわけではありません。空き家を放置しておくと防災や防犯面で近隣に迷惑がかかるのは歴然としています。特に都市部の住宅密集地では、震災時の倒壊や火災などのリスクが、地域レベルで問題視されています。さらに、予想外の例として、東京都心の空き家にハクビシンが住み着いて繁殖していると話題に上りました。老人や子供が噛みつかれる被害もあり衛生面でも問題ですが、有効な解決策は講じられていません。空き家問題は、バックナンバー「空き家が抱える問題点を解消するには?」でも紹介しています。

実家にかかる相続税に注意!

今後も、この空き家は増加していくことが予想されます。今は両親が揃って住んでいても、いずれ空き家となる可能性は少なくありません。核家族化や少子化で、引き継ぐべき子供がいなかったり、他に自宅を構えた子供が実家に戻らないケースが増えているからです。

そして、都市部の場合は、他にも注意すべき問題があります。実家を誰も引き継がない、つまり誰も住まないまま相続した場合、相続税が発生する可能性が高くなることです。なぜなら、敷地の評価額が8割減額される「小規模宅地の特例」が使えないからです。

小規模宅地の特例を使える基本的なパターンは3つです。まず、配偶者が相続する場合です。次に、配偶者がいない場合は、同居している子供(親族)が相続する場合です。もう一つが、同居していない子でも、相続前3年間以内に持ち家に住んでいない場合です。
配偶者がいる場合は、この特例が使えますが、二次相続では、同居しているか賃貸暮らしの子供が引き継ぐ場合にしか適用できません。

また、今年から相続税が大幅に増税されました。相続税の基礎控除額は(3,000万円+600万円×相続人の数)です。相続資産がこの基礎控除額を越えると、相続税が発生します。例えば、子供3人が相続する場合、(3,000万円+600万円×3人=4,800万円)です。3大都市圏の都市部であれば、実家の土地の評価額が4,800万円を越える土地はたくさんあるでしょう。小規模宅地の特例が使えなければ、自宅の土地だけで相続税の課税対象になってしまうのです。
これにより、これまで相続税とは無縁だった人も、実家の相続に対して、何らかの相続対策をする必要が出てきました。もちろん、売却してしまう方法もありますが、都市部の場合、土地の利用価値が高く、活用次第で収益を生むことが可能ですから、ここは相続が発生する前にしっかり考えたいところです。

都市部では、空き家になった実家を相続すると、相続税発生の可能性が大きい。何らかの相続税対策が必要。

活用法その1・二世帯住宅に建て替える

一軒家の実家にそのまま親世帯と同居することは無理でも、二世帯住宅なら可能だという人は多いでしょう。そこで、実家を二世帯住宅に建て替えることで、小規模宅地の特例を適用させて、相続対策をする方法があります。

以前は小規模宅地の特例の要件が厳しく、玄関が別で内部で行き来できない二世帯住宅は適用外でした。しかし、平成26年1月1日より要件が緩和され、それぞれ玄関が独立した二世帯住宅でも特例が適用できるようになりました。

ここで注意したいのが登記です。例えば住宅ローン控除を受けるために、親世帯と子世帯を区分登記している場合がありますが、その場合は特例が十分に使えません。区分登記していると、親世帯の居住部分に対する敷地だけしか適用できないのです。例えば、建物の2分の1を親世帯、残りの2分の1を子世帯で区分登記していると、敷地の2分の1しか特例を適用できません。
特例を十分に活用させるには、親の単独登記か、子世帯との共有登記にする必要があります。そうすれば、敷地全体に、特例を適用することができます。ただし実際の出資比率と違うと贈与税が発生したり、子供が複数いる場合は遺産の分割でもめることもあるので、よく検討しましょう。

■二世帯住宅で小規模宅地の特例を受けるには登記に注意

実家を二世帯住宅に建て替え、小規模宅地の特例を活用するためには、親の単独登記か共有登記にすること。ただし、子供が複数いる場合は、遺産分割でもめないようによく検討した方がよい。

活用法その2・賃貸併用住宅に建て替える

もう一つの有効な対策として、アパート併用の自宅に建て替えるという方法があります。将来、実家を誰も引き継がない可能性が大きいのなら、小規模宅地の特例を適用させる手段としては、これが現実的かもしれません。

小規模宅地の特例が適用される土地には、自宅の土地の他、事業用地、そしてアパートの建っている貸付事業用の宅地があります。貸付事業用の宅地は相続評価が50%減額されます(200m2まで)。アパート併用住宅の場合は、建物のアパートの割合分の敷地が50%減額になります。
例えば、1、2階がアパート、3階が自宅の場合、敷地の3分の2が50%評価減になるのです。

■アパート併用の自宅を建てた場合の小規模宅地の特例の適用

この50%の相続評価減でも、かなりの節税効果がありますので、相続税対策としては有効です。また、アパート経営による収益がありますので、建築費のローンの返済や相続資産が多い場合は納税資金の確保にも活用できます。相続後は、空いた自宅も賃貸にしやすいと思いますので、アパート経営としての収益がさらにアップします。

計画のポイントは、親が元気なうちに建て替えることです。この場合も家族間での話し合いが必要です。アパート経営では収益が生まれますので、その活用方法なども話し合って確認するのがよいでしょう。この場合の相続シミュレーション等は専門性が伴いますので、税理士やコンサルタントなどに相談することをおすすめします。

実家をアパート併用の自宅に建て替えると、小規模宅地の特例の50%評価減が活用でき、相続税対策になる。さらに、賃料収入があるので、活用の幅が広がる。

活用法その3・実家を貸家にする

将来、実家が空き家になってしまった場合の活用法として考えられるのが、人に貸すという方法です。国としても、空き家を賃貸として流通させる方法を推し進め、「借主負担DIY型」賃貸借契約のガイドラインを作成しています。(「空き家対策の「借主負担DIY型」賃貸借契約とは?」で紹介)。
このガイドラインでは、従来の賃貸借契約では難しい入居者の自由なリフォームを認め、原状回復の義務を免除するとしています。これにより、貸す方もリフォームなどの手間や費用をかけずに、現状のまますぐに貸し出すことができるというメリットがあります。

しかし、いくら入居者が自由にリフォームできるとはいえ、大規模なものは資金が難しい場合もあります。そこで、今年の3月に「個人住宅の賃貸流通の促進に関する調査報告について〜借主の意向を反映して改修を行うDIY型賃貸借の活用に向けて〜」として、資金調達法や協議・合意すべき内容についてまとめたものが、新たに発表されました。
特にリフォームの資金調達については、オーナーが行う場合、入居者が行う場合の他、間に事業者が入り、事業者がリフォームして入居者にサブリースするというスキームも提示されています。しかし、この方法がどこまで普及するかは、まだこれからでしょう。

空き家となった実家を賃貸する場合は、「借主負担DIY型」賃貸借契約を活用する。

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