土地活用による賃貸住宅の建築は、資産運用や相続対策など様々なメリットを生みます。しかし、その土地にどのような賃貸住宅が向いているのかを見極めるのは難しく、プランニングに迷ってしまいます。賃貸住宅の建築プランにあたって、ニーズの選定から、最近の入居者動向や失敗しない管理方法について解説します。
賃貸住宅の建築にあたっては、まずどの入居者層をターゲットとするかを決めなければなりません。今は、単身者向けか、ファミリー向けかといった単純な分類ではなく、さらに細分化して考える必要があります。
例えば単身者も年齢層が広がり、30~50代の単身者が増えてきました。当然、20代社会人とは、違うプランニングが必要です。また、単身の高齢者も今後は増えてくると予想されています。ファミリー層も、家族構成やライフスタイルの違いによりプランニングは変わってきます。
入居者ターゲットを決めるのは、その立地の特性と賃貸住宅の供給バランスです。学生に人気の街、若い社会人に人気の街、ファミリーに人気の街など、エリアには特性があります。ただし、20代単身者に人気のエリアでも、すでにワンルームが供給過剰の場合は避けたほうがよいでしょう。
また駅から遠いと賃貸住宅のニーズがなくなると思われがちですが、今はそうではありません。ライフスタイルの多様化から、駅から遠くてもニーズのある建築プランはあります。逆に特定の入居者層をターゲットにすることで付加価値も生まれます。
例えば「ペット共生型賃貸住宅」。入居者は駅からの距離よりも、ペットと快適に暮らせる生活環境を重視します。駅前の密集した住宅街ではなく、公園や緑道などの散歩コースが近いほうが、ペットとの生活には好まれるのです。
ペット共生型賃貸住宅は、まだまだ供給が追いつかず、どのエリアも不足しています。周辺環境が良ければ、駅からの距離に関係なく需要はあるでしょう。
また郊外人気にも表れているように、テレワークの普及で部屋数や部屋の広さが求められるようになりました。つまり、駅から遠くても部屋数が多い、広いといったプランはファミリーだけではなく、単身者にもニーズが広がってきました。
このように、立地の特性と賃貸住宅の供給のバランスを見極めながら、入居者ターゲットを設定することが大切です。立地のニーズを見極めるのは難しいので、地元の不動産会社に相談するのもよいでしょう。
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立地環境と入居者ニーズについては、「アパート経営の基礎知識:経営環境編」でも解説しています。
建築プランは、まず立地の特性を見極めること。エリアの特性、駅からの距離、周辺環境、そして賃貸住宅の供給とのバランスを見極めて入居者を設定する。そのため、専門家のアドバイスを有効に活用することが重要。
賃貸住宅に求められる基本性能は、地震や火災、豪雨などによる浸水被害など災害に強いことです。
災害に強いことに加えて、被災後の在宅避難の場合にも安心感が与えられる設備があれば、大きなアピールポイントとなります。
例えば共用部に、太陽光発電と蓄電池により停電時にも使える非常用コンセントを設置するなどです。
そして、今後大きな注目を集めるのが省エネ性能です。高断熱・省エネ・創エネによって、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)でおおむねゼロ以下を目指すZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が進むでしょう。東京都では、賃貸住宅を含む新築住宅に太陽光発電設置の義務化を検討しています。
防災力と省エネ性能については、バックナンバー「環境貢献と防災力強化を実現する賃貸住宅とは?」でも解説しています。
賃貸住宅に求められる基本性能は、災害に強いこと。それに加えて災害後の生活や省エネ性能も必要になる。
賃貸経営を長期に安定させるには、他の物件にはない付加価値をどのようにつけるかがポイントになります。つい汎用性のあるプランにしがちですが、ライフスタイルなどで、特定の入居者層にターゲットを絞ることで付加価値をつけることも可能です。
例えば、ペット飼育者、子育て世帯、女性の1人暮らし、高齢者にターゲットを絞ったプランニングです。ペット飼育者や高齢者については、かつては敬遠されていた入居者層です。また、子育て世帯や女性の一人暮らしは、それぞれの暮らしの課題を賃貸住宅で解決することができます。
これらの特定のターゲットに絞ったプランニングのポイントは、それぞれの入居者に特有なニーズに対し、専用の設備や管理システムでしっかりと応えることです。
例えばペット飼育者向けには、ペットと共に楽しく暮らせるペット共生型の賃貸住宅にすること。ペットの足洗い場、ドッグランなどを整え、ドッグトレーナーなどによるペット審査や、専属獣医師やドッグトレーナーの無料相談など、専門のスタッフによる安心のサポートがあることです。
子育て世帯向けには、快適に楽しみながら家事や育児ができる間取りや室内外の空間、コミュニティが自然に育まれ、入居者家族や地域が助け合って子育てできるサポートが必要です。
そして、これらの賃貸住宅に共通するのは、賃貸住宅では不要と考えられていた「ゆるやかなコミュニティ」があるということです。これが大きな付加価値となって、人気物件となっています。
コミュニティ賃貸の詳細についてはコチラをご覧ください。
これまでの賃貸住宅にはなかった「コミュニティ」が付加価値となって、長期安定経営を実現する。
建築プランを立てるのと同時に考えておきたいのが、建築後の管理です。賃貸経営は30年以上にわたる長期事業です。長期間安定して経営していくには、この管理が大きなポイントになります。
管理には「一般管理」と「一括借上げ」があります。一般管理の場合、管理会社との契約内容によって、どこからどこまで管理を依頼するかが決まります。一括借上げと比べると管理料は低く抑えられますが、すべてお任せではないため、少なからず管理に携わることになります。しかし、近年の管理は専門性も高く、素人では関与することは難しい一面もあります。
そこで、「所有と経営(管理)」を分離できる「一括借上げ」が管理の主流になっています。一括借上げであれば、管理業者が一切の管理・運営を代行します。オーナーが入居者募集や審査、契約の更新、退室時の手続き、修理、クレームなど賃貸経営の管理業務に煩わされることはありません。一括借上げであれば、初心者でも賃貸経営ができるのが大きなメリットの一つです。先のコミュニティ賃貸は、専門の管理体制があってこそ実現する賃貸住宅です。
また、一括借上げのもう一つの大きなメリットが、空室でも借上げ賃料が支払われることです。賃貸経営の大きなリスクでもある空室リスクを回避できるのもメリットです。
※30年一括借上げシステムの注意事項
●2年毎に賃料の見直しを行います。また、借地借家法第32条の規定により、賃料は減額されることがあります。
●一括借上げ契約期間中においても、当社等から解約することができます。オーナー様から解約をする場合には、借地借家法第28条の規定により、正当な事由があると認められる場合でなければ解約することができません。
賃貸管理については、バックナンバー「賃貸住宅経営は「所有と経営の分離」へ」でも解説しています。
長期安定経営を実現するには管理が決め手。近年は、一括借上げで管理はプロの手に委ねる時代。初心者でも賃貸経営が可能。