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空き家となった実家は、売却、活用 どちらが良いか?

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2016年8月 9日

空き家となった実家は、売却、活用 どちらが良いか?
安藤匡税理士

空き家問題が深刻化しています。子どもが独立し、誰も実家を引き継がず空き家となってしまうケースが増えているのです。今は母親一人が住んでいるものの、やがては空き家になることが想定されるケースも少なくないでしょう。都市部では、空き家となる実家を相続すると相続税の発生も十分考えられます。実家は売却してしまうのがよいのか、また土地活用するのがよいのか、そのメリットやデメリットについて、税理士法人トップ会計事務所の安藤匡税理士に伺いました。

税金面から考えると相続税、固定資産税に注意。

─空き家が問題となっていますが、どんな問題点がありますか?

安藤:一般論で言うと、防災・防犯上の問題、景観・衛生面などの問題が指摘されています。
税金面では、まず固定資産税に気をつけなければなりません。これまでは空き家でも、住宅用地の特例で200m2以下の部分は、固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されています。しかし、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された後、「特定空家等」に指定されると、特例の対象外になってしまいます。
その場合、固定資産税は、更地並みの課税が行われます。
「特定空家等」とは「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」など、いくつかの条件があります。それらの条件を満たすとなると、かなり老朽した家屋になります。しかし、国も空き家をなくすことに様々な施策を考えている、ということに注目すべきです。今後、要件の緩和ということもあるかもしれません。

─最近は地価が上昇していますが、その影響はありますか?

安藤:地価が上昇すると「特定空家等」に指定されなくても、固定資産税の負担が心配です。固定資産税は3年に一度評価が見直されますが、次の評価替えは平成30年度(2018年度)です。固定資産税は、負担調整がありますので、急激に上がることはないと思いますが、じわじわと上がっていくことが予想されます。

─地価上昇は相続にも影響すると思うのですが。
安藤匡税理士

安藤:最も注意しなければならないのが、空き家となった実家を相続する場合の相続税です。
土地の相続税評価は路線価を元に算出しますが、地価が上がれば当然路線価も上昇します。路線価は毎年改定しますので、固定資産税より影響が大きいでしょう。
もう一つ、空き家の相続の大きな問題点は、小規模宅地等の特例が使えないことです。通常、実家を相続して実家に住めば、小規模宅地等の特例が使えますので、その敷地の評価は8割減額になります。1億円の評価でも2,000万円ですむのです。5,000万円の評価なら1,000万円です。これなら相続税の基礎控除の範囲内ですむでしょう。
しかし、引き継いで住む相続人がいなくて、空き家となる場合は小規模宅地等の特例は使えません。なおかつ、平成27年から相続税の基礎控除が4割も縮小になっています。基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の人数です。仮に相続人が子ども3人の場合は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。先の5,000万円の評価の敷地は、特例が使えなければ5,000万円のままで、これだけで基礎控除オーバーとなり相続税発生となるのです。
これまで相続税がかからなかった人が、相続税課税の対象者となると話題になっていますが、まさにこのケースのことです。実際、昨年あたりから、そういうケースでの相談件数が、私のところでも増えてきました。

空き家となった実家を売却することのメリットとデメリットは?

─アットホームが「もし実家が空き家になったら」という調査を全国の30代、40代にしたところ、最も多かったのが「売却する」で41.6%でした。この結果をどうご覧になりますか?

安藤:やはり、一番手っ取り早いというイメージがあるのかもしれません。理由の一番の「将来、その家に住むことが無いから」というのは当然として、「現金収入がほしいから」「固定資産税を払いたくないから」という答えが多い。相続の観点で言うと、現金の方が分割がスムーズというメリットがあります。
しかし、都市部の土地なら、損得で言っても活用した方がメリットは大きい。簡単に売却と言っても、実はデメリットもあるのです。

■30代・40代男女に聞く

─売却する場合のデメリットは何ですか?

安藤:例えば、5,000万円の土地家屋があっても実際は5,000万円では売れないことの方が多い。ましてや遺産分割で売却するとなると急いで売りたいので、つい安値で売ってしまうこともよくあります。また、仮に5,000万円で売却できても譲渡所得税や仲介手数料、測量費用、その他登記費用、家財の撤去費用または取り壊し費用などを含めると、売却価格の約4分の1程度の諸費用がかかってしまうこともあります。5,000万円の価格なら手残りは、3,750万円くらいになってしまいます。
ただし、譲渡所得に関しては、平成28年度の税制改正で「空き家売却の譲渡所得の特別控除」が創設されました。相続した空き家を売却する場合は、譲渡所得から3,000万円を控除できます。これは、老朽化した空き家を増やさないための制度です。したがって、対象となる家屋は昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋で、耐震改修して売却するか、解体し更地にして売却するなど、いくつかの条件があります。

■空き家の実家を5,000万円で売却した場合のイメージ

空き家となった実家を、土地活用で収益を生む優良資産に

─土地活用することのメリットは?

安藤:土地の持っているポテンシャルを最大限引き出す活用をすれば、ストックとしての土地が、さらに収益を生むフローになり、資産価値は向上していきます。
100の価値のものを長い時間をかけて、150、200にしていくことができ、さらにそれを元手に、また不動産を購入して収益を膨らませることも可能になっていきます。資産運用としての土地活用は、長期間、安定的に運用できるのがメリットです。売却してしまえば、それまでですから。特に、都市部の土地は活用する価値を十分に持っています。地価が上昇するのは、その現れです。

空き家となった実家も、土地活用で相続対策

─相続対策としての土地活用のメリットはありますか?

安藤:はい、相続にとっても有効な対策が打てます。先ほど相談が増えたと言いましたが、よくあるのは、相続税課税の認識がまったくなく、相続したら相続税がかかることが分かったと相談にくるケースです。
しかし、相続してからでは残念ながら遅いのです。できれば、空き家になる前に対策を立てておくことが重要になります。例えば、今は母一人が住んでいる実家で、将来引き継ぐ人がいない場合です。この場合も小規模宅地等の特例は使えません。そこで、生前に自宅併用のアパートを建てれば、建物の賃貸割合に応じて、敷地の評価が200m2まで50%減額できます。相続後は、自宅部分も貸し出すことができますので、さらに収益性は上がります。
また、すでに空き家を相続していて、次の代に相続する場合でも、土地活用でアパートを建てることによって、敷地の評価が200m2まで50%減額できます。これで、かなり相続評価が圧縮できますので、相続対策にはかなり有効になります。

■引き継ぐ人がいない実家の相続対策

─土地活用をする上で注意することはありますか?

安藤:先ほどの調査で気になったのが、売却の理由の中に「賃貸住宅は大変そうだから」というのがありましたが、これは少し誤解があるようですね。今アパート経営には、「一括借上げ」というシステムがあります。一括借上げを活用すれば、日々の管理・運営は一切ノータッチ。所有と経営を分離できます。つまり、経験のない方でもアパート事業に参入でき、日々の管理業務に煩わされることもなく、不動産オーナーになることができます。
ただし、事業である以上、しっかりとした事業計画が必要です。ただ、作ればいいというものではありません。エリアのニーズをしっかり見極めたプランニングが必要です。アパート経営は20年、30年の長期事業ですから、長期間競争力が保てるプランニングが必要となってきます。
また、アパート経営の最大のリスクは空室リスクです。しかし、一括借上げなら、空室のリスクはありませんから、長期間、安定した収益を確保することができます。

将来の実家の土地活用について、家族で話し合うことが大切

─土地活用をすることを前提に相続する場合、遺産分割はどのようにすればよいですか?
安藤匡税理士

安藤:まず、やってはいけないのが不動産の共有です。これは、のちのちトラブルを生む要因になりますので避けるべきです。この場合は代償分割にするのがよいでしょう。
例えば、相続人が二人で、実家と現金を相続する場合でも、一人が実家、一人が現金となりますが、現金が少ないと当然不公平になります。そこで、代償分割となります。実家の相続人が一方に相応の代償金を支払うのです。しかし、すぐには代償金が用意できない場合もあります。足りない分は、土地活用後の賃料収入で補塡するなどの方法もあります。このあたりは、よく話し合って遺産分割協議書に明確に書いておくのがよいでしょう。

─相続人同士の話し合いが大切ですね

安藤:はい。相続では、遺産分割協議がとても大切になります。土地活用するのは、長男なのか次男なのか、しっかり話し合って決めることが大切です。さらには、遺産分割協議をしっかりまとめるための下話を、相続前にご家族で話し合われることが大切なのです。ここが、できているかできていないかで、いざ相続が発生したときに大きな違いが生まれます。とはいえ、なかなか話す機会もないとは思います。お盆など家族が集まる時期に、話を一歩踏み出せるかどうかです。実際、新年やお盆明けは、私どもへの相談が増える時期です。
税制は非常に難しいものです。勘違いして理解していらっしゃる方もたくさんいます。何か疑問や不安が生じたら、すぐに専門家に相談することをお勧めします。

税理士法人 トップ会計事務所
代表社員 本社所長 税理士・中小企業診断士
安藤 匡 (あんどう ただし)
トップ会計事務所は、川崎・新宿に2拠点を構えています。問題の発見だけでなく、解決方法のご提案を的確に行い、相続対策から資産管理全般までトータルに手掛けます。健康管理をトータルサポートする主治医のような、アドバイススタイルを目指しています。トップ会計事務所のホームページはコチラ
安藤匡税理士

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