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路線価の上昇傾向続く!相続税への影響も懸念

市場動向

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2015年7月21日

路線価の上昇傾向続く!相続税への影響も懸念

7月1日、国税庁より相続税・贈与税の土地の評価基準となる路線価が発表されました。今年3月に発表された公示地価では、三大都市圏で2年連続の上昇となりましたが、路線価も同じく上昇傾向が鮮明となり、相続税への影響も懸念されます。

三大都市圏が路線価上昇をけん引、上昇地点も増える

国税庁発表の路線価(2015年1月1日時点)は、大都市圏での上昇傾向が昨年に続き顕著になりました。東京都、大阪府など主要都市圏で2年連続、愛知県は3年連続の上昇となりました。上昇した都府県は8カ所から10カ所に増えています。全国平均では0.4%のマイナスでしたが、下げ幅は0.3%縮んでいます。

大都市圏では大規模再開発が進み、オフィス需要も堅調。また、分譲マンションについては、都市部はもちろん郊外でも高額物件が売れています。不動産研究所の発表によると2014年度の首都圏の分譲マンションの平均価格は5,060万円、東京区部に限ると5,994万円です。加えて、最近ニュースでもよく取り上げられる訪日外国人増加の影響で、商業施設やホテルの開業が増え、路線価上昇にも影響しているようです。

路線価は、相続税・贈与税の土地の評価基準となるものです。路線価の上昇は、土地オーナーにとっては、資産価値が上がると同時に評価額が上がり、将来の相続税・贈与税の負担増加も意味します。今年から相続税の増税もあり、それを見越して土地活用に踏み切るオーナーも多く、大都市圏ではそれらも地価上昇の要因となっているようです。

■主要都府県の標準宅地の対前年変動率の平均値(単位:%)

都府県

平成26年

東京都

 1.8

神奈川県

 0.8

千葉県

 0.1

埼玉県

 0.1

愛知県

 1.2

大阪府

 0.3

兵庫県

▲0.8

平成27年

 2.1

 0.6

 0.3

 0.1

 1.0

 0.5

▲0.7

東京圏の動向─路線価上昇は郊外にも波及

今、東京都心ではホテルの建設ラッシュが続いています。予想を超える訪日外国人の増加や東京オリンピック・パラリンピック開催を見越してのことです。昨年、大手町で温泉が出たことが話題になりましたが、2016年度には星野リゾートが温泉付き日本旅館「星のや東京」を大手町にオープンする予定です。あえて「旅館」と名付けたのも、外国人旅行者をターゲットに、日本文化体験を売りにしているからです。この他、新宿通り周辺でもホテルの開業やリニューアルが相次ぎ、路線価を押し上げています。

分譲マンションでも、「億ション」と呼ばれる超高級マンションの売れ行きが好調です。これは、富裕層が相続対策や投資目的で購入する他、海外投資家による日本の不動産取得が活発になっているのが原因です。特に地価が高騰している台湾、香港、シンガポールから見れば、東京都心のマンションは安い買い物だと思われているようです。

路線価上昇率1位は、中央区銀座5丁目銀座中央通り(鳩居堂前)で、最高路線価も30年連続1位。1平方メートルあたり2,696万円です。上昇率の上位4位までは、10%を超えています。昨年1位だった川崎駅前は、6位となりましたが、9.6%と依然高い上昇率です。

また、東京の路線価上昇は郊外の多摩地区にも広がっていて、最近商業施設の進出が多い立川の北口大通りは、5.2%もの上昇です。東京カンテイの調べでは、2014年の多摩地区のマンション平均坪単価は210万円で、前年比9.6%の上昇となっています。この他、武蔵野市吉祥寺本町1丁目サンロード5.2%、府中市宮町1丁目府中駅前通り5.3%の上昇となっています。

■東京圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2当たり)

順位

所在地

対前年増減率(%)

平成27年

平成26年

1

中央区銀座5丁目 銀座中央通り

14.2

9.7

2

港区北青山3丁目 青山通り

11.2

8.1

3

新宿区新宿3丁目 新宿通り(四谷)

10.5

9.8

4

港区新橋2丁目 新橋西口駅前広場通り

10.4

5.7

5

新宿区新宿3丁目 新宿通り(新宿)

9.4

9.8

(6)

川崎市川崎区駅前本町 川崎駅東口広場通り

9.3

11.8

(6)

渋谷区宇田川町 渋谷駅側通り

9.3

7.1

名古屋圏の動向─リニア中央新幹線で上昇、横浜を抜く

名古屋圏では、昨年からリニア中央新幹線の着工が始まった名駅通りが大きく上昇しましたが、今年も引き続き11.5%の高い上昇率となりました。名古屋圏の最高路線価として11年連続1位、都道府県庁所在地の中でも、横浜を抜いて、東京、大阪に続く3位です。
リニア中央新幹線の開業予定は12年先の2027年です。この急騰ぶりは一時的な過熱ムードに過ぎないとの声もありますが、本格的な影響はリニア開業後からとの予想もあり、このまま上昇傾向は続くかもしれません。
また、名古屋駅へのアクセスに便利な尾張一宮駅前通り2.6%、勝川駅前広場通り3.1%なども分譲マンションや戸建て開発が進み路線価は上昇傾向にあります。

■名古屋圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2当たり)

順位

所在地

対前年増減率(%)

平成27年

平成26年

1

名古屋市中村区名駅1丁目 名駅通り

11.5

10.0

2

名古屋市西区牛島町 広井町線通り

8.1

8.8

3

名古屋市東区久屋町8丁目 久屋大通り

6.9

6.0

4

名古屋市中区栄3丁目 大津通り

6.9

4.4

5

名古屋市熱田区金山町1丁目 新尾頭金山線通り

5.7

4.8

大阪圏の動向─大規模再開発エリアが堅調。京都、滋賀はマイナス脱出

大阪圏では、「あべのハルカス」、「うめきた」エリアの大規模開発による波及効果が続いています。
あべの筋は、一昨年35.1%、昨年20.8%も上昇し、今年は少し落ち着いたものの10.2%上昇です。上昇率1位は同じく「あべのハルカス」エリアの天王寺で12.8%の上昇でした。もう一つの大規模開発エリアがJR大阪駅北側の商業施設「グランフロント大阪」前で10.3%増加しました。また、大阪も訪日外国人増加の影響で、繁華街の御堂筋、難波が上昇しています。
府県別に見ると大阪は0.5%増と前年の0.3%より、わずかに上昇幅が広がりました。その他、京都が0.1%増、滋賀が横ばいで、マイナスは脱しています。

また、新たな傾向としては、オフィス需要が梅田や淀屋橋といった御堂筋沿いにシフトしていることです。御堂筋は、一昨年、ビルの高さ規制が大幅に緩和されました。その影響もあるでしょう。そしてオフィスが移転してできた大阪の中心部の空き地には、分譲・賃貸マンションが建設され、職住接近傾向が進んでいるようです。

■大阪圏の最高路線価上昇率トップ5(1m2当たり)

順位

所在地

対前年増減率(%)

平成27年

平成26年

1

大阪市天王寺区悲田院町 谷町筋

12.8

10.4

2

大阪市北区大深町 JR大阪駅北側

10.3

14.1

3

大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目 あべの筋

10.2

20.8

4

大阪市北区角田町 御堂筋

10.1

6.2

5

大阪市中央区難波5丁目 南海難波駅前

8.9

3.1

今後の動向─アベノミクスは、外部要因の影響で陰りも

この2〜3年の間、アベノミクスが始まって以来、ゆるやかな景気回復とともに地価も上昇しはじめました。アベノミクスは、いよいよこれからが正念場と言われ、アベノミクス第三の矢「成長戦略」がうまく軌道に乗るかが注目されています。しかし、最近の懸念事項は、それとは別に外部要因にあります。
特に、ギリシャ情勢と中国景気減速です。特に中国の景気減速のほうが、日本への影響は大きいとされ、7月8日の中国株暴落では日経平均も暴落しました。もちろん、この状況が続けば影響は世界中に広がり、全世界的に景気低迷に落ち込むことも考えられます。

日本国内に限って言えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックやリニア中央新幹線開業への期待感から、景気回復ムードがさらに高まっているとも言えます。
しかし、路線価で見た場合の懸念事項は、都市部と地方の二極分化でしょう。成長戦略でも地方創生は大きなテーマです。これはすぐに結果が出るものでなく、中長期的な視点で見ていく必要があります。
9月には、基準地価(7月1日時点)の発表があります。その時点では、まだ地価は上昇傾向を示しているものと思われますが、今後も決して予断を許さない経済状況にあると言わざるをえないでしょう。土地オーナーとしては、相続税の増税もあり、土地活用や生前贈与等による不動産の移転など、タイミングをどう見極めるのか難しい局面が続きます。外部要因も含め、地価動向に注視していく必要があるでしょう。

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