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空室率データの正しい見方

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2018年7月 3日

空室率データの正しい見方

賃貸住宅経営の収支計画を作成する際、空室率をどう設定するかは重要です。いくつかの不動産関連会社から空室率の発表がありますが、どれも算出の仕方が違います。今回は代表的な3つの空室率データを取り上げ、それぞれの見方や空室率を見る上でのポイントを解説します。

1.タス空室インデックス(空室率TVI)ー募集物件の空室傾向を示す指数

不動産調査会社の「タス空室インデックス(空室率TVI)」は、日本銀行の金融システムレポートでも取り上げられ、有名になりました。一時はマスコミでも頻繁に取り上げられましたが、残念なことにマスコミが単位やデータの意味を誤って伝えているケースも少なくなく、報道に惑わされた賃貸オーナーもいたことと思います。
単位については空室率TVIとありますが、パーセントではなくポイントです。データの持つ意味合いも一般的な空室率ではなく、あくまで募集物件の空室傾向を示す指数ということです。

具体的に計算式を見てみると、一般的な空室率を求めるものとは違います。分母となる戸数は入居を募集している物件のみの総戸数で、満室稼働している物件の戸数は含まれません。下の例で見ると、A〜E棟の5棟のうち、空室があるA〜C棟の3棟の18室を分母にしているということです。一方、一般的な空室率はA〜E棟の5棟33室を分母にします。
つまり、同じ4室の空室でも、タス空室インデックスでは22.2ポイント、一般的な空室率は12.1%と、一般的な空室率と比べると当然高い数値になりますので、あくまで傾向を見る指数として単位はポイントになっているのです。
例えば、C棟が満室になると分母から外され、12室中3室が空室となるため、指数は25ポイントと上昇してしまいます。この例でいうと空室が減ると空室率TVIは上昇してしまうわけです。このあたりは、この数字を賃貸住宅の空室率として使用している日本銀行の「金融システムレポート」(2016年10月〜2018年4月までの4回)でも注意を促しています。

■タス空室インデックス(空室率TVI)と一般的な空室率の違い

2018年3月期のタス空室インデックスは、東京都のマンション系(S造、RC造、SRC造)は前年同月比+0.41ポイント、神奈川県で同▲0.26ポイント、埼玉県で同▲1.38ポイント、千葉県で同+0.54ポイントです。
賃貸市場全体に対しては、現況は好転しているが、今後の見通しについては悲観的との見解を示しています。

タス空室インデックス (空室率TVI) は、空室率ではなくて募集物件の空室傾向を示す指数である。インデックス指数の上昇が空室率の上昇というわけではない。

2.見える!賃貸経営ー総務省統計局「住宅・土地統計調査報告」から算出

不動産情報サイトのLIFULL HOME'Sの不動産投資サイトでは、総務省統計局「住宅・土地統計調査報告」から、賃貸住宅の空室率を算出したデータを掲載しています。
データについては、「空室率は、住宅の数(又は借家の数)に対する空家数(又は賃貸住宅の空家数)の割合をエリア毎に計算したものです」とあります。ただし、6月26日時点で、「平成20年度住宅・土地統計調査報告より」とありますので、10年前のデータということです。現時点のデータとしては、古いのでご注意ください。

「見える!賃貸経営」のコーナーから、賃貸用住宅の空室率の関東圏のデータを見てみると東京都14.5%、神奈川県16.1%、埼玉県18.4%、千葉県20.5%となっています。現場の感覚からすると、かなり高めの数値のように感じられるのではないでしょうか。もちろん平均値ですので、築年数の経った老朽アパートの影響が大きく出ているとは思います。
また、この調査方法の一つに調査員の目視によるものが含まれています。外観から空家に見えても実際は入居者がいるケースもあり、実態より過大に算出されている可能性も少なからずあるでしょう。

さらに、このコーナーでは全国の市区町村ごとに、空室率を見ることができます。「東京都の賃貸用住宅の空室率一覧」を見ると、トップは意外なことに千代田区で36.5%です。続いて目黒区28.2%、中央区27.7%となっています。
ここでの空室率は、不動産投資を行う上での地域性の比較という意味で空室率を見ていくとよいと思います。空室率の他にも、想定利回りや家賃相場も合わせて見ることができます。
LIFULL HOME'S不動産投資「見える賃貸経営」は、コチラからどうぞ。

■LIFULL HOME'S不動産投資「見える!賃貸経営」

「住宅・土地統計調査報告」からも空室率は算出できるが、平均値ということもあり高めの数値となっている。他のエリアとの比較という意味では有効な数値。

3.日管協ー管理会社による管理戸数ベース

賃貸住宅管理の業界団体である公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会では、半期に一度、賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観」を発表しています。
「日管協短観」は、首都圏、関西圏を中心とした不動産管理会社に対して行った、賃貸住宅の景況感を調査したものです。調査は半期(4〜9月、10〜3月)ごとに行われ、来客数、成約件数、成約賃料の他、様々な市場動向を調査・分析しています。この中に、入居率の調査データがありますので、それを見てみたいと思います。

回答は、現場の管理会社による管理戸数ベースですので、通常稼働している賃貸住宅の空室率(データは入居率)としては、かなり実態に近いと思われます。
入居率は、直近のデータは2017年10月〜2018年3月のものです。全体的に前年同期比で下がっていますが、おおむね高い水準を保っています。
首都圏のサブリース物件の入居率は96.8%、つまり空室率は3.2%ということになります。関西圏のサブリース物件の空室率は3.3%です。
前年同期比で、注目されるのは関西圏の委託管理で入居率が大きく伸び、首都圏を抜いて96.4%になりました。ただし、その他のエリアは91.6%、空室率8.4%と苦戦しています。

これらの傾向を見ると、首都圏、関西圏の空室率はおおむね3〜5%といったところです。新築の間は満室でも、新築後5年も経つと入居者の入れ替わりが出始めるかもしれません。10年目以降の収支計画は、この数値を参考にシミュレーションをするのがよいでしょう。
「日管協短観」はコチラから。

■入居率の推移

首都圏、関西圏の空室率は3〜5%が目安。収支計画立案の際の目安として考慮する。

空室率はエリアの賃貸市場動向で見極める

一般的には、どういった状況を空室というのかは、特に定義があるものではありません。入居者の入れ替え時でも、メンテナンスなどで1カ月近くは空いてしまいます。その程度であれば現実的には、空室とはいわないかもしれませんが、2〜3カ月も空いたままだと空室と認めざるを得ません。

家賃相場と同じで、空室率はエリアの賃貸市場の状況により異なります。そのあたりは、エリアの市場を熟知した不動産会社にヒアリングするのがよいでしょう。数字のデータだけでは分からない、その時々の需給関係が分かり、賃貸経営の参考になると思います。

賃貸住宅は個別性が高いので、周りの経営状況が良くても所有物件が良いとも限りませんし、その逆もあります。仮に空室が続くようであれば、なんらかの理由があります。それを見極めて対応していくのが、賃貸経営では大きなポイントとなります。

賃貸経営にとって、空室が一番のリスクであることはいうまでもありません。前回のこのコーナーでも取り上げましたが、空室リスク回避の一番の方法は信頼できる管理会社による「一括借上げ」です。
最近では、既存の物件でも「一括借上げ」を受けてくれる管理会社もあります。満室の時はもちろん、空室が続いている場合でもリノベーションして、それを期に「一括借上げ」を検討するというケースもあります。

なお、「一括借上げ」にしたからといって、空室対策をしなくていいというわけではありません。空室対策とは、長期にわたりエリアでの競争力を維持するということです。管理会社との情報交換を密にし、メンテナンスや入居者が希望する設備には気を配り、家賃の下落を防ぐということも必要です。

最終的に空室率はエリアの不動産会社などで確認する。空室を出さないことが、長期安定経営にとっての最大の課題。「一括借上げ」も検討する。

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