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2021年「公示地価」コロナ禍で6年ぶり下落

市場動向

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2021年4月 6日

2021年「公示地価」コロナ禍で6年ぶり下落

2021年1月1日時点の公示地価が発表になりました。今回の公示地価は、コロナ禍の影響がまだ少なかった1年前との比較になります。コロナ禍では数カ月単位で経済環境が変化していますので、そこも考慮しつつ傾向を見る必要があるでしょう。三大都市圏ごとに見ていきます。

三大都市圏は8年ぶりに下落、2020年下半期は下げ止まり

全国の公示地価は、全用途平均が前年比0.5%と6年ぶりの下落、三大都市圏は商業地、住宅地そろって8年ぶりの下落となりました。逆に言うと、これまで7年間地価は上昇してきました。特に商業地は上昇率も年々拡大し、毎年のように過熱感が懸念されていましたが、コロナ禍を機に一気に下落に転じました。ただ、全国・全用途で見ると、リーマンショック、東日本大震災の2009年~2012年は2.6%~4.6%の下落でしたので、今のところ今回の全国・全用途の0.5%下落は、さほど大きな落ち込みではないと言えます。国土交通省では、「全体的に弱含みとなっているが、地価動向の変化の程度は、用途や地域によって異なる」としています。大幅に下落したのは、インバウンド需要などで過熱していた地域です。東京の浅草、大阪の道頓堀は大きく下落しました。

住宅地に関しては、名古屋圏が1.0%下落でしたが、東京圏、大阪圏は0.5%の下落で、少し踏みとどまっている感はあります。住宅地に関しては、在宅ワークの浸透により、都市近郊が堅調です。また、軽井沢町では10%の上昇を見せているところもあり、一部ではありますが、二拠点居住や地方への移住といった新しいニーズもあります。

また、2020年を前半(2020年1月1日~7月1日)と後半(2020年7月1日~2021年1月1日)で分けてみた場合、三大都市圏の前半はどの用途も下落しましたが、後半になると大阪の商業地を除けば、住宅地も商業地もややプラスの横ばいとなっています。

そんな中、プラスを維持したのは、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方四市です。上昇幅は落ち込んだものの、インバウンド需要などがなくなっても人口増が望め、再開発が進んでいます。

■三大都市圏公示地価の変動率推移

■2020年公示地価対前年比変動率(単位:%)

東京圏の傾向-都心は大きく下落、郊外はプラスをキープし堅調

商業地は、浅草、銀座、新宿が大きく下がりました。インバウンド需要などがほぼゼロに近く、飲食店への時短営業要請で、かつての活気はなくなってしまいました。いつになったら活気がもどってくるのか見通せません。
ただし、都心から少し離れた沿線の住宅が多い駅前の商業地は堅調でした。今回上昇率のトップは杉並区阿佐谷の駅前です。この他、足立区、世田谷区などの駅前商店街も上昇しています。その他、再開発が進む横浜駅周辺、みなとみらいが堅調な動きを見せています。

住宅地は、変動率上位10地点のうち、横浜(7位)を除いて全て千葉県のエリアです。房総半島の木更津市や市原市、君津市、袖ケ浦市の他、東京都に隣接・近接する市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市で上昇が続いています。コロナ禍の在宅ワークによる郊外ニーズの影響もあるでしょう。
東京23区で見ると、港区と目黒区で上昇、それ以外は下落に転じました。港区、目黒区は「高級住宅地を中心に環境・利便性の良好な地点が多く、コロナ禍の影響が小さい高所得層が需要者の中心となることから、上昇地点が相対的に多く見られた」とのことです。

■東京圏公示地価の変動率推移

■東京圏変動率上位ー住宅地 ■東京圏変動率上位ー商業地

■東京圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

名古屋圏の傾向-下落エリアが多いものの、上昇維持のエリアも

名古屋圏は、昨年から上昇率が鈍化していましたが、商業地で1.7%下落です。中部最大の歓楽街といわれる錦三丁目「錦三(きんさん)」は15.2%の下落で、全国の下落率で見ても7位です。ただ、隣接する錦二丁目は2.0%の上昇。飲食店よりオフィス中心のエリアのためコロナ禍の影響が少なかったと見られています。その他、繁華街の栄地区、名古屋駅、金山周辺の繁華街で大きく下落しています。

住宅地は1.0%下落し、東京、大阪圏よりも下落幅は大きくなりました。ただし、割安感のある名古屋市南部の港区、南区は大型商業施設が開業するなどの影響でやや上昇。中心部の中区についても0.1%ながら上昇を維持。要因は「市中心部のマンション需要は、昨年までのホテル開発業者との競合がほぼ消滅したこと」としています。

■名古屋圏公示地価の変動率推移

■名古屋圏変動率上位ー住宅地 ■名古屋圏変動率上位ー商業地

■名古屋圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

大阪圏の傾向-訪日客で賑わった商業地は大幅下落

三大都市圏の中で最も商業地が下落したのが大阪圏です。全国の変動率下位10地点を見ると、7位の名古屋の他は、大阪が8地点、京都が1地点です。最も大きく下落したのが、大阪ミナミの繁華街、道頓堀1丁目で28%下落。創業100年の老舗ふぐ料理店「つぼらや」が昨年9月に閉店し話題になりました。大阪は繁華街を中心に、この数年間訪日客で賑わい、地価も高騰していただけに、コロナ禍の影響を大きく受けました。
ただし、北大阪急行延伸部沿線の箕面市を始め、豊中市、池田市、高槻市、茨木市及び島本町で上昇が継続しているなど、東京圏、名古屋圏同様、インバウンド需要などの影響がもともとなかったエリアでは、堅調な動きを見せています。商業地、住宅地共に上昇率1位の箕面市船場は、北大阪急行線延伸事業で2023年度開業予定の「箕面船場阪大前駅」の大規模再開発が進むエリアです。

住宅地は、ほぼ横ばいで推移していましたが、0.5%の下落です。鉄道駅徒歩圏でのマンションや大阪・京都への交通利便性が高い住宅地の需要は堅調で、池田市、茨木市、箕面市及び島本町で上昇を継続しています。

■大阪圏公示地価の変動率推移

■大阪圏変動率上位ー住宅地 ■大阪圏変動率上位ー商業地

■大阪圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

新型コロナウイルスの今後の地価への影響は?

今後の地価動向は、新型コロナウイルスの感染状況次第であることに違いはないでしょう。そういう意味では、先行きは不透明です。

今回、商業地で地価が大きく下落したのはインバウンド需要などで過熱していたエリアです。商業地でも、インバウンド需要などの影響が少なく、再開発が進んでいるエリアは、上げ幅は小さいものの上昇を続けました。また、名古屋のように隣接した商業地で、一方は大きく下げ、一方は上昇した地域もあり、用途の違いで明暗が分かれています。今後は、コロナの影響で経済全般がどのように回復するかにもかかっているでしょう。

住宅地も下落しましたが、三大都市圏では商業地に比べると下げ幅は小さく、思ったほどは下がらなかった印象です。住宅地も高級住宅街や再開発のエリアは上昇を続けています。
また、コロナ禍でライフスタイルや働き方を見直す動きが出てきました。東京圏では、千葉県木更津市のアクアライン周辺の住宅地が上昇するなど、郊外のニーズが高まっているように見えます。
企業もコロナ禍の長期化で、働き方だけではなく、密のリスクが自然災害リスクをも想起させ、東京一極集中の是非があらためて問われています。大手人材派遣会社が淡路島に本社を移転した例も見られます。

都市部の地価に関しては、世界的な投資マネーも影響します。コロナ禍で地価に割安感が出れば、国内外の投資家が不動産購入に動くとの見方もありますし、コロナが収束すればまた都市に回帰するという見方もあります。
まだまだ、withコロナの状況は続きそうですが、土地オーナーにとっては、地価は資産価値に影響しますので、今後も地価動向に注視したいと思います。

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