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2021年「路線価」、6年ぶりに下落

市場動向

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2021年7月15日

2021年「路線価」、6年ぶりに下落

相続税・贈与税の土地評価の算定基準となる路線価が7月1日、国税庁より発表されました。昨年の路線価は、2020年1月1日のもので、新型コロナウイルスの影響を受けていませんでしたが、今回は全国平均が6年ぶりの下落、三大都市圏では8、9年ぶりの下落となりました。ただし、住宅地は比較的影響は少ないようです。あわせて、最新の地価LOOKレポートも見ながら、今後の地価動向を考えます。

三大都市圏は8、9年ぶりに下落も千葉県は上昇

2021年の路線価はコロナ禍での影響が顕著に表れ、全国平均は前年比0.5%下落で、6年ぶりに下がりました。
都道府県別に見ると東京都1.1%、大阪府0.9%の下落で8年ぶり、愛知県は1.1%下落で9年ぶりに前年を下回るなど、39都道府県が下落しました。下落率が大きかったのは、訪日客が激減した観光地、繁華街です。都道府県庁所在地の最高路線価で見ると、下落率のトップは世界遺産のある奈良・大宮通りで12.5%下落。その他、神戸・三宮センター街9.7%、昨年は35.0%も上昇した大阪・御堂筋は8.5%下落でした。

一方、大規模開発「天神ビッグバン」が進む福岡県は1.8%、沖縄県1.6%、住宅需要が高い宮城県1.4%、北海道1.0%など7道県が上昇しています。三大都市圏では、郊外の住宅ニーズの高まりで千葉県が0.2%とわずかながら上昇しました。コロナ禍でも再開発が進むエリアや住宅需要が底堅いエリアでは上昇するなど、二極化も見てとれます。

下落トレンドが強いと、実勢価格が路線価より低くなることがあります。2020年に発表された路線価については、まだコロナの影響が出る前でしたので、2020年1月1日と比較して地価が20%以上下落した場合は、路線価の減額補正をするとされていましたが、実際、大阪の心斎橋、道頓堀などで減額補正が決まりました。2020年7月~9月分で3地点、10月~12月分で13地点、その間に相続等が発生した場合の減額補正です。
今年の路線価は、コロナ禍の影響が反映された結果なので、今後補正されるほどの値動きはないと思われます。

■主要都府県の標準宅地の対前年変動率の平均値推移(単位:%)

東京圏の動向-浅草11.9%下落、神奈川・千葉の郊外は上昇

全国最高価格で話題の銀座中央通り「鳩居堂前」は7%の下落で、1㎡あたり4,272万円となりました。それでも価格としては、バブル期を超えた2017年の4,032万円を上回っています。象徴的な地点だけに今後の動向が注目されます。

下落が大きかったのは、前年33.9%も上昇した浅草「雷門通り」で11.9%下落。コロナ前は訪日客が10年間で5倍に急増するなど、インバウンド需要で地価を大きく押し上げていたエリアでしたので、その反動が表れるのは仕方がないでしょう。

東京国税局内で、上昇率トップ10を見ると、神奈川が5地点、千葉県が4地点、東京都が1地点です。上昇した地点は18地点ですが、多くは神奈川県と千葉県で、郊外人気が表れています。例えば、神奈川県の郊外エリアでいうと、本厚木2.4%、鎌倉2.0%、鶴見駅1.8%、海老名1.3%が上昇しています。これらのエリアは郊外人気で、住宅ニーズが高まり、街の開発が進んでいるエリアです。
東京都で最も上昇したのは北千住駅1.9%です。学生の街のイメージが定着し、今後も発展の期待が大きいといわれています。

■「鳩居堂前」最高路線価推移

■東京圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

名古屋圏の動向-最高路線価9年ぶり下落、上昇地点なし

愛知県としては9年ぶりの下落、名古屋国税局管内での上昇地点はゼロ(昨年は16地点)でした。名古屋圏で最も路線価が高いのが名古屋駅前の「名駅通り」で、昨年は13%の上昇でしたが、今年は1.3%の下落です。下落は、リーマン・ショックの影響が出始めた2010年以来11年ぶりです。リニア中央新幹線開業への期待から、全国でもいち早く地価が上昇していましたが、コロナ禍でオフィス需要が減少したことが大きな要因の一つです。

下落幅が大きいのは、飲食店などの繁華街でもある名古屋市の「栄」「金山」で6%を超える下落でした。最も下落率が大きかったのは、訪日客にも人気のあった観光地、岐阜県高山市の「上三之町下三之町線通り」で12.7%の下落でした。

一方、新築建て売り住宅や中古マンションの動きはよく、地価回復の兆しは住宅地ではあると見られています。

■名古屋圏の最高路線価変動率(1平米あたり)<昨年の上昇率トップ5の地点>

大阪圏の動向-大阪ミナミ「心斎橋」の下落率は全国最大

コロナによる路線価の減額補正が昨年行われたのは、大阪のみで、東京、名古屋では行われませんでした。昨年、44.6%と最高路線価上昇率トップだった大阪ミナミの「心斎橋」は、26.4%の下落。全国で最も大きい下落率となりました。最高価格の大阪キタ「御堂筋」は8.5%の下落(前年は35%上昇)です。

昨年の最高路線価上昇率を見ると6地点で35%以上の上昇で、訪日客の賑わいとオフィス需要の高まりのあったエリアは、過熱感がありました。今年は、訪日客の大幅な減少とテレワークの増加によりオフィス需要が減少。東京都心同様、オフィスの空室率は上昇しています。過熱感の反動が大きく出た結果となりました。

一方、人気の住宅地エリアでは上昇も見られます。高級住宅地としても知られている兵庫県川西市の「阪急川西能勢口駅前」は駅前の大規模再開発により街が新しくなり、最高路線価のトップで4.0%上昇しました。その他、人気の住宅エリア「JR芦屋駅前」が3.6%、「阪急高槻市駅前」が3.4%、関西圏の住みたい街ランキングで1位の「阪急西宮北口駅南側」1.4%、合わせて4地点が上昇。それ以外では31地点が0%でした。

■大阪圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

今後の動向-主要都市では回復の兆し―地価LOOKレポート

国土交通省では、主要都市の高度利用地地価動向報告「地価LOOKレポート」を四半期毎に調査発表しています。最新のものは、令和3年第1四半期 (令和3年1月1日~令和3年4月1日)の動向で、今回の路線価後(令和3年1月1日)、3カ月間の地価動向ということになります。

最新の調査では、上昇した地区が28地区(前回 令和2年第4四半期 令和2年10月1日~令和3年1月1日は15地区)、下落地区が27地区(前回38地区)、横ばいが45地区(同47地区)。早くも上昇地区数が増加し、下落地区および横ばい地区が減少。地価回復の様子がうかがえます。
特に住宅地では「マンションの販売状況が堅調な中、事業者の素地取得の動きが回復している地区が増加している」とのこと。用途別に見ると、住宅地では下落地区がゼロとなり、上昇は18地区(同9地区)と2倍に増加しています。

商業地も「法人投資家等による取引の動きが戻り、横ばい・上昇に転じた地区が見られる」とのことで、海外の投資マネーの動きも出始めているようです。大阪・道頓堀のランドマークでもある「住友商事心斎橋ビル」は、今年4月下旬、ドイツの不動産投資会社が取得し話題となりました。

今後は、コロナワクチンの普及や東京オリンピック・パラリンピック開催によるコロナ感染拡大の懸念など、日本経済にとっても、まだまだ先が見通せない状況です。
今のところ、コロナが不動産に与えた影響は、主に商業地とオフィス需要で、住宅地は思ったほど大きな影響はないといってよいでしょう。しかし、ニューノーマルといわれるようなライフスタイルの変化で、郊外が人気になるといった現象は地価動向にも現れています。

路線価は、土地・賃貸オーナーにとって、将来の相続税の負担に大きく影響するものです。地価や経済状況の変化にうまく対応し、資産管理をしていく必要があります。今後も地価動向、経済動向に注視していきたいと思います。

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