2025年の繁忙期(1月~3月)の家賃動向が不動産情報サービスのアットホームから発表されました。地価上昇とともに、家賃は上昇を続けています。エリアのニーズは郊外人気が定着する一方で、都心回帰も見られます。2025年繁忙期の最新家賃動向を見ていきたいと思います。
2025年3月のマンション平均募集家賃は、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県の全面積帯で前年同月比を上回りました。特にカップル向きは、首都圏5エリア(東京23区・東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県)で2015年1月以降の最高値を更新しました。家賃の上昇トレンドは強まっています。
グラフは2015年1月を100とした家賃指数の推移を示しています。
大型ファミリー向きを除いて、1年を通して家賃は上がり続け、今年の繁忙期に入り一段と上昇トレンドを強めています。3月には、大型ファミリー向きを除いた面積帯で前年同月比を上回っています。
特にカップル向きは28カ月連続で上昇し、3月の平均家賃は163,554円。前年同月比の上昇率は全国で見てもトップでプラス10.3%、家賃で見るとプラス15,281円です。
シングル向き・カップル向き・ファミリー向きは2015年1月以降の最高値となりました。
今年に入って、シングル向き、ファミリー向きが下落したものの、3月は全面積帯で前年同月比を上回りました。
カップル向き・大型ファミリー向きは、郊外人気の定着により大きく上昇し、3月の家賃指数は2015年1月以降の最高値となりました。カップル向きは3カ月連続、大型ファミリー向きは2カ月連続の最高値更新です。
昨年は一年通じてどの世帯面積も上昇基調を強めているようです。3月の平均家賃は、全面積帯で前年同月比を上回りました。
カップル向き、ファミリー向きは2015年1月以降の最高値となり、ファミリー向きは前年同月比でプラス6.7%、家賃はプラス8,535円の上昇です。
大型ファミリー向きは、3月の前年同月比でプラス1.5%にとどまりましたが、他の面積帯に比べ2020年始めから大きく上昇し、郊外人気の一端を伺わせています。
神奈川県同様、埼玉県も東京の郊外エリアとして、早くからファミリー向きを中心に家賃が上昇したエリアです。
3月の平均家賃は全面積帯で前年同月比を上回りました。カップル向き、ファミリー向き、大型ファミリー向きは2015年1月以降の最高値となりました。特にファミリー向きは11 カ月連続の最高値更新で、前年同月比の上昇率はプラス8.5%、家賃でプラス9,065円です。
シングル向きが前月比で0.2%下落しましたが、前年同月比ではプラス4.5%の上昇です。
千葉県は、東京圏の中でも地価上昇が著しく、家賃相場も他の郊外エリアである神奈川県、埼玉県同様、ファミリー向きを中心に2020年頃から上昇しているエリアです。
この一年、家賃は総じて上昇し、3月の平均家賃は全面積帯で前年同月比を上回りました。シングル向き・カップル向きは2015年1月以降の最高値となりました。
ファミリー向きは最高値とはならなかったものの、前年同月比の上昇率は高くプラス6.4%、家賃はプラス7,008円です。
名古屋市はやや一服感が見られます。大阪市は一年通じて上昇トレンドとなっています。
名古屋市は職住が近接し、シングルの家賃指数が一番高いのが特徴的でしたが、ファミリー向きが昨年の初めから上昇。秋にいったん落ち着きましたが、今年の繁忙期に入って急上昇しています。3月は2015年1月以降の最高値となり、前年同月比でプラス3.4%、家賃はプラス3,311円です。
カップル向きも2015年1月以降の最高値となりましたが、上昇率はプラス1.5%で、ファミリー向き以外は、やや一服感が見られます。
一年を通じて全面積帯で上昇。3月の平均家賃は全面積帯で上昇しました。
シングル向き、カップル向きは2015年1月以降の最高値となり、シングル向きは8カ月連続、カップル向きは4カ月連続の更新です。
カップル向きは前年同月比でプラス7.7%上昇、家賃でプラス7,544円と上昇率の高さが目立ちます。大型ファミリー向きは、今年に入ってやや下落傾向ですが、前年同月比でプラス5.3%、家賃はプラス13,413円です。大型ファミリー向きの家賃指数139.7は三大都市圏の中では最も高い指数です。
大阪はインバウンドの回復や万博の影響が公示地価の上昇に見られ、家賃上昇の一役となっていると思われます。
2025年3月の新築分譲マンション価格は、首都圏の平均で1億485万円です。牽引しているのは東京23区の1億4,939万円で依然、上昇傾向は衰えていません。
マンション価格の高騰が続く中、賃貸市場ではファミリー向きを中心に家賃が上昇してきました。特にこの1、2年は顕著に上昇しています。物価上昇、賃金上昇が続けば、この傾向は今後も続くと見られています。
家賃上昇の要因の一つに、高騰する分譲マンション価格の影響で、持ち家派から賃貸派へのシフトが上げられます。都市部のファミリーは共働きが多く経済的には余裕があります。そこで、そのニーズを踏まえた高品質のファミリー物件が多く供給されるようになりました。広いLDKや最新の設備・仕様など、付加価値のある物件です。
今、賃貸市場では家賃の上昇とともに高品質な物件の競争が激化し、家賃の上昇を牽引しています。既存物件の賃貸オーナーは、競争に負けないようにニーズをしっかりと捉え、対策を講じる必要があるでしょう。
懸念されるのは不安定な景気の先行きです。地政学リスクや米国の関税政策などの影響で景気が大きく後退すれば、不動産市場全体に何らかの影響があると思われます。今後も様々な経済動向や周辺環境に留意し、家賃動向への影響を探っていきたいと思います。