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2025年「公示地価」と賃貸市場の景況感

市場動向

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2025年4月17日

2025年「公示地価」と賃貸市場の景況感

2025年1月1日時点の公示地価が発表になりました。全用途の全国平均は前年比2.7%上昇し、4年連続上昇となりました。上げ幅はバブル崩壊後の1992年以降で最大です。不動産仲介業における賃貸市場の景況感調査も合わせてお送りします。

三大都市圏、住宅地・商業地 4年連続上昇

今回の地価上昇を牽引したのは、三大都市圏です。住宅地は3.3%、商業地は7.1%上昇し4年連続の上昇です。住宅やオフィスの需要が根強く、上げ幅が拡大しました。また、地方の観光地も訪日客の増加で、ホテルや別荘の需要が増え、全体を押し上げています。
圏域別に見ると東京圏、名古屋圏は住宅地、商業地のいずれも4年連続上昇。大阪圏は住宅地4年連続、商業地3年連続上昇しました。

「住宅地」については、価格が高騰しているものの低金利環境の継続で、引き続き住宅需要は堅調、特に東京圏、大阪圏の中心部で高い上昇を示しています。東京都心では分譲マンション価格が高騰し、郊外に住宅需要が広がっている半面、コロナ禍の在宅勤務から出社に切り替える企業も多く、都心回帰の傾向もあります。

「商業地」では、店舗・ホテルなどの需要が堅調で、オフィスについても空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収益性が向上していることなどから、地価上昇が継続しています。この状況から今回の地価上昇はバブル期とは違い、実需を伴っていると見られています。

全国で見ると、昨年に続き、外国人に人気の高い北海道や沖縄のリゾート地、また半導体メーカーの工場進出エリアで大きな上昇が見られます。全国の「住宅地」変動率トップ3はいずれもリゾート地の富良野31.3%、白馬29.6%、宮古島23.1%でした。「商業地」変動率トップ3は、半導体メーカーが進出する北海道のJR千歳駅周辺が独占しました。

■三大都市圏公示地価の変動率推移

■2025年公示地価対前年比変動率(単位:%)

東京圏の傾向-再開発、訪日客増加で東京都心を中心に地価上昇

三大都市圏の中でも地価上昇をけん引したのが、東京圏です。特に東京23区は住宅地、商業地ともに全て上昇しています。

■住宅地

全国住宅地の最高価格は東京都港区の高級住宅地「赤坂1-14-11」。8年連続トップで、1㎡あたり590万円、上昇率も前年比10.3%でした。昨年の4.5%から上昇幅も約2倍になっています。
東京圏上昇率のトップは、「目黒区青葉台4-6-19」、18.9%の上昇です。23区で見ると、中央区13.9%、港区12.7%、目黒区12.5%の上昇です。総じて住宅需要は堅調であり、とりわけ都心区及びこれに隣接する利便性や住環境に優れた区では、マンション・戸建住宅とも需要が旺盛で、上昇幅が拡大しています。
東京圏全体の上昇率トップ10を見ると、昨年同様、千葉県流山市が7地点入っています。

■商業地

東京圏では8.2%上昇、東京23区では11.8%の上昇でした。東京圏の上昇率トップ10は全て東京23区です。再開発が進む「渋谷駅周辺」や「中野駅周辺」がそれぞれ2地点、訪日客で賑わう「浅草駅周辺」が4地点入っています。
トップの「渋谷区桜丘町14-6(黒松ビル)」は32.7%の上昇で、全国で見ても5位の上昇率です。マンション利用が可能な地域や再開発事業等により、さらなる利便性や賑わいの向上が見込まれる地域を中心に上昇幅が拡大しています。

■東京圏公示地価の変動率推移

■東京圏変動率上位ー住宅地 ■東京圏変動率上位ー商業地

■東京圏住宅地

※国土交通省「令和7年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

名古屋圏の傾向-中心部は一服感、周辺部が上昇

名古屋圏の上昇率は、三大都市圏では唯一、上昇幅が縮小しました。訪日客の回復が東京、大阪に比べて鈍いことや名古屋中心部に割高感が出始め、上昇に一服感が出ているようです。

■住宅地

上昇率は2.3%、名古屋市で見ると全16区のうち、2区で上昇幅が拡大、14区で上昇幅が縮小となりました。
上昇率トップ10を見ると中心部から少し離れた地域の上昇が目立ちます。「熱田区」が4地点、「千種区」が4地点入っています。これらの地域は、名古屋中心部と比較して割安感のある地域で、駅徒歩圏における需要が底堅く、地価上昇が継続しています。
名古屋市近隣の「大府市」は6.4%、「長久手市」でも4.9%上昇し、交通利便性が良好な地域を中心に需要は堅調に推移しています。

■商業地

上昇率トップは「名古屋市千種区今池1-8-8(今池ガスビル)」で、14.2%上昇です。住宅地同様、ベストテンには、中心部から少し離れた「千種区」が9地点入っています。千種区や熱田区では、旺盛なマンション用地需要により地価上昇が継続しています。
名古屋中心部の「中村区」は5.7%、中区は4.7%上昇していますが、建築費高騰などにより踊り場感が生じており、上昇幅は縮小となりました。

■名古屋圏公示地価の変動率推移

■名古屋圏変動率上位ー住宅地 ■名古屋圏変動率上位ー商業地

■名古屋圏住宅地

※国土交通省「令和7年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

大阪圏の傾向-住宅地・商業地ともに上昇率は拡大

住宅地、商業地ともに上昇幅が拡大。訪日客の回復が昨年に続き顕著で、大阪の繁華街や京都の観光地が地価上昇を牽引しています。

■住宅地

上昇率トップは「東山区高台寺南門通下河原東入桝屋町353番5」は、清水寺に近く、首都圏などからのセカンドハウス需要もあって大幅に上昇しています。
京都市東山区は6.6%上昇、区内の多くが住商混在の観光地で、旺盛な店舗・ホテル用地需要が波及し上昇幅が拡大しました。京都駅周辺の地価の上昇率が高く、京都駅北側に存する下京区は6.1%、南側に存する南区は6.1%と上昇幅が拡大しました。
大阪の上昇率が大きい地点はいずれもマンション需要が旺盛な地点です。特に大阪市中心6区の富裕層向け物件は需給が逼迫しており、中央区は7.7%、阿倍野区は7.3%、福島区は7.2%上昇するほか隣接する地域での地価を押し上げています。

■商業地

商業地は6.7%上昇し、上昇幅は3年連続で拡大しています。訪日客の回復に加え、大阪駅や京都駅など再開発が活発な地域の上昇が目立ちます。
上昇率トップ10のうち6地点が京都です。2位、4位、5位の3地点は「南区東九条」。京都駅南側の地域で、駅北側と比べて地価は安かったのですが、訪日客の増加を受けて外資系ホテルの建設や開業が相次いでいるようです。
上昇率1位は、大阪ミナミの繁華街「大阪市中央区道頓堀1-6-10」です。京都同様、訪日客の増加の影響が大きい地域では、店舗用地やホテル用地価格が上昇しています。
また、JR「うめきた2期」の再開発による影響で、マンション・ホテル用地需要が増加し、北区は13.4%、福島区は12.5%、西区は13.9%と10%を超える上昇率となっています。

■大阪圏公示地価の変動率推移

■大阪圏変動率上位ー住宅地 ■大阪圏変動率上位ー商業地

■大阪圏住宅地

※国土交通省「令和7年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

不動産仲介業による賃貸市場の景況感調査

米国の相互関税政策により、世界的な景気後退が懸念されています。不動産業界も建設資材の輸入など間接的な影響は少なからずあると思われます。それでも日本の不動産は世界的に見て割安と見られ、海外の投資マネーが流入。都心部の地価上昇の一端を担っていると言われています。
この数年、地価の上昇に合わせ、家賃相場も上昇していますが、現場の不動産業者は賃貸市場の景況感をどのように見ているのでしょうか。不動産情報サービス・アットホームの「地場の不動産仲介業における景況感調査(2024年10~12月期)」から見てみます。
この調査は居住用不動産流通市場の景況感(仲介店の営業実感)を四半期ごとに調査・分析したものです。DI値は前年同期に対する動向判断を指数化したもので、50を境にそれよりも上なら「良い」、下なら「悪い」を意味します。

■首都圏・近畿圏における直近1年間の業況の推移(賃貸)

景況感は通常繁忙期のⅠ期(1~3月)に強まり、年末にかけて弱まる傾向にあります。Ⅳ期(2024年10~12月期)は年末ですが、首都圏・近畿圏とも3 期ぶりに上昇に転じています。

前年同期比でいうと首都圏は12期連続のプラスとなったものの0.7ポイントのプラスにとどまっています。近畿圏の前年同期比は8期連続で、3.0ポイントのプラスとなりました。また、来期の見通しは業況DIが50を超えず、やや悪い方向になっています。

■14エリアにおける直近1年間の業況の推移(賃貸)

エリア別で見ると首都圏では、埼玉県・千葉県・神奈川県が前期比上昇、東京23 区は3 期連続下落したものの業況DIは50 台を維持しています。前年同期比では東京23 区と神奈川県がプラスとなりましたが、全体的には大きな変動はありませんでした。

■14エリアにおける直近1年間の業況の推移(賃貸)

近畿圏・愛知県では、全4 エリアが前期比上昇し、前年同期比では京都府のみマイナスとなりました。特に愛知県は前期比+6.0 ポイントと大幅上昇し、業況DIが50 に迫りました。「法人契約が増えた(愛知県名古屋市)」など、企業需要の回復が背景にあると見られています。

今期はエリアによらず、外国人入居者の増加に関するコメントが多く見られたとのことです。また「家賃が高くてもファミリー向きは成約しやすい(神奈川県茅ヶ崎市)」のように、不動産価格高騰のため購入を見合わせたファミリー層が賃貸市場に流入していると見られるコメントも目立ちました。その他、繁忙期を前に「学生の部屋探しが早くなっている。総合型選抜の影響(兵庫県神戸市)」など、学生の部屋探しが入試方式の変更で例年より早まっているというコメントもあったとのことです。

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