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相続が争族になる!こんなケースは要注意 その2-家族状況編

相続

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2014年12月16日

相続が争族になる!こんなケースは要注意 その2-家族状況編

来年の相続税増税で、これまで相続税と無縁だった一般のサラリーマン家庭も課税対象者が激増することが予想されています。まだ、自分がその対象だと実感がない方、もう相続対策はしてあるからと安心している方は、思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。今回のテーマは、子どもの成長とともに変化していく家族環境における、相続の見落としがちな注意点を解説します。

「家族全員で揃って顔を合わせることが年に一度もない」

相続対策で大切なのは、遺産をどう分けるかという「遺産分割対策」です。
そして、遺産分割で思いあたるのがまず「遺言」だと思います。最近では、相続紛争の増加に伴い、遺言の作成数も増えていて、平成25年に作成された公正証書遺言の件数が96,020件で、これは前年と比べて9%増、10年前と比べて約1.5倍になっています(日本公証人連合会)。

しかし、遺言は決して万能ではありません。いくら遺言があっても、その内容に相続人が不服ならば、もめてしまうこともあります。(マンスリーレポート「遺言は本当に万能か? 優先すべきは円滑な遺産分割協議」参照)

大切なのは、生前のうちに資産の分割、特に土地や賃貸住宅などの分割しづらい不動産の引き継ぎなどについてどうするかの意思表示をしておくことです。
しかし、昨今は子どもが独立してしまうと家族が一堂に会する機会も減ってきているのが現状でしょう。できるだけ、盆暮れ正月や記念日には集まってコミュニケーションをとることが大切だと思われます。集まったからといって、なかなか相続のことを切り出すのは難しいと思いますが、相続でもめるのは、結局、それまでの家族間の意思疎通ができていなかったからです。場合によっては、遺言書を事前にみんなに見せて、意見をもらうという方法もあります。そこで、不満があるようでしたら、みんなが納得できるよう改めて対策を立てるということもできます。遺言は何度でも書き換えることができます。

また、昨年相続に関する民法が改正されました。それは法定相続分の割合の改定で、嫡出子(実子)と嫡出でない子の相続分を同等にするというものです。改正前は、嫡出でない子の法定相続分は実子の2分の1でした。これも、相続が起きてから発覚するともめる原因となりますので、注意が必要です。

なるべく家族が一堂に会する機会を持ち、相続について家族間でのコミュニケーションを図ることが大切。

「子どもは全員独立し、それぞれマイホームを持っている」

自宅の相続については、相続税が払えなくて自宅を手放すことがないように、自宅の敷地(240平米まで・平成27年より330平米まで)は評価額が80%も減額されるという小規模宅地の特例があります。しかし、この特例は平成22年度の税制改正で、要件が厳しくなっています。もう4年前のことなのですが、意外と知らない方もいるようですが、注意が必要です。

その要件は、相続人である子どもが独立して持ち家に住んでいる場合は、適用外というものです。つまり、持ち家がなく同居しているか、独立していても賃貸住宅に住んでいる場合でないと適用されません。核家族化が進む現代では、多くの場合が独立してマイホームを持っているかと思われます。
特例が適用されないと敷地の評価減は一切ありません。加えて、平成27年1月1日から相続税の基礎控除が4割減額され、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となります。東京都など、土地評価の高いエリアで自宅を持っていれば、課税対象となる可能性が高いと言えるでしょう。

この対策として、最近では離れていた子ども夫婦を呼び寄せ二世帯住宅を建設したり、賃貸併用住宅を建設(賃貸の場合は220平米までは50%減額)したりして、少しでも自宅の敷地の評価減を図るケースが増えています。なにしろ、評価が80%減額されるのとされないのでは大きな違いです。中には、便宜的に住民票だけ移しているケースもあるようですが、もちろんそれは認められません。税務署は、そこに住んでいるという実態について近隣への聞き込みなどをして、綿密に調べるようです。
また、配偶者がいる場合では、配偶者が相続すればよいのですが、やがて二次相続が起きると同じ問題に直面しますので何らかの対策が必要となってくるでしょう。

●小規模宅地等の特例

宅地の種類

上限面積

減額割合

  居住用(自宅・保有継続)

240平米
(平成27年より330平米)

80%

  貸付用(賃貸住宅)

200平米

50%

  事業用(事業承継)

400平米

80%

自宅の敷地の評価額が80%減額される小規模宅地の特例は、原則、相続人の同居が要件。相続人が独立して持ち家に住んでいる場合は適用外なので注意。

「本人には内緒だが、暦年課税贈与で資産を移転している」

相続対策の一つとして、「財産の移転」があります。これは、生前のうちに相続財産を相続人等に贈与するという方法です。特に将来価値が上がると判断した土地や株式などは、価値が低いうちに移転したほうが、値上がりした時に相続する場合に比べ負担が少ないと考えられるからです。

そして一番よく使われるのが、贈与の基礎控除110万円を利用して現金を毎年贈与するケースです。つまり、年間110万円までは無税なので、毎年110万円を将来の相続人、または孫などに贈与するというものです。これを「暦年課税」の贈与と言います。しかし、これには注意が必要です。
たまに見られるのが、受贈者には内緒にしていて、通帳・印鑑を贈与者が管理しているというケースです。これは「名義借り預金」とみなされ、贈与とはみなされません。税務署は、確実に贈与の実態があるかどうかをチェックします。

そこで以下の点に注意してください。
・贈与者と受贈者の間で、お互いが贈与の事実を認識する。または契約書をつくる。
・贈与者と受贈者の通帳にお金の動きがあったことを記帳しておく。
・受贈者が通帳・印鑑を管理する。
・分割でもめないように、他の法定相続人にも認識させる。

また、注意点の最後に書きましたが、特定の相続人が生前贈与を受けた利益のことを「特別受益」といい、その相続人はその分を相続時に相殺されます。例えば、同居の子や孫に資金援助を度々している場合や、同居するための二世帯住宅の資金を全部出してもらった場合などです。では、具体的にどんな生前贈与が「特別受益」になるかというと、結婚資金、マイホーム資金、孫の教育資金などです。どこまでが「特別受益」なのかの判断は難しいため、もめないように注意が必要です。生前贈与も、法定相続人全員になるべく平等になるようにし、みんなに納得してもらうことが大切です。

暦年課税贈与は、贈与の実態をきちんと残していないと認められない。通帳・印鑑は受贈者が管理し、贈与の実態を明確にすること。

「子どものうち一人と同居、介護もしてもらっている」

これも相続の時に、よくもめる原因となります。
被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人には、「寄与分」といって、法定相続分にプラスして財産がもらえる制度があります。しかし実際、寄与分は認められるケースは少ないのが実態です。子どものうち一人が同居して親の介護をしている場合もそうです。相続が発生すると、その一人はずっと親の面倒を見てきたと寄与分を主張します。亡くなる前、数年間は寝たきりで介護に明け暮れていたというケースでは、当然、寄与分を主張したくなります。

寄与分が認められるのは、
・被相続人の事業に関する労務の提供があった場合
・被相続人の事業に関する財産の給付があった場合
・被相続人の療養看護、その他の方法などにより、被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与をした場合

とありますが、では何をすれば寄与分となるのかの基準はなく、寄与分とはいくらなのかという算定も難しく、余程のことがない限り、認められないのが現状のようです。

また、寄与分が認められるのは相続人だけで、実質、息子の奥さんが介護をしているケースでは、寄与分も相続も主張できません。そういった場合は、やはり遺言に残すのが有効でしょう。

親の介護などの寄与分は、判断が難しい。被相続人が生前に寄与分を認めたい人に対しては、遺言で対策を。

「認知症の親がいる」

超高齢社会の相続対策では、見落としがちで実は最も大切なのが、認知症対策といっても過言ではないでしょう。厚生労働省研究班の調査では、認知症になる可能性があると言われている軽度認知障害(MCI)を含めると65歳以上の4人に1人は、認知症またはその予備軍と言われています。今や認知症は、誰でもなり得る身近な病気なのです。

仮に、将来の被相続人が認知症などで判断能力が著しく低下していると判断されると、基本的に財産は凍結されます。銀行預金も勝手に引き出すことはできません。さらに、土地活用などの相続対策もできなくなり、また遺言も書けなくなります。
相続対策というと、死亡時のことを想定しますが、長寿社会では認知症などの病気になる可能性のほうが高く、そうなる前の対策が必要なのです。

元気なうちにご自身がそうなると仮定して対策を取るのは考えにくいかもしれませんが、残された家族を困らせないためにも事前対策は必要です。具体的には任意後見制度を活用し、将来自分が認知症になった時に、どのように財産を管理するか、将来の相続はどうするかといったことを後見人に話します。それによって、万が一の時も財産は凍結されることなく、後見人によって管理することができるのです。詳しくはマンスリーレポート「超高齢社会の相続対策を考える」を参考にしてください。

認知症になり判断能力が著しく低下していると金融機関などが判断した場合、基本的に財産は凍結され、土地活用などの相続対策もできなくなる。任意後見制度を活用して、事前の対策が必要。

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