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遺言、誤解しやすい5つのポイント

相続

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2017年11月 7日

遺言、誤解しやすい5つのポイント

11月15日は「いい遺言の日」。11月22日の「いい夫婦の日」までの間は、りそな銀行より「夫婦の遺言週間」と制定されています(日本記念日協会認定)。全国で作成された公正証書遺言の件数は増加傾向ですが、まだまだ割合的には少ないようです。また、遺言そのものについても、間違って認識しているケースもあるようです。この機会に、遺言について改めて見直してみます。

遺言書の作り方には決められた方式がある

まず遺言書の作成方法をおさらいします。
遺言書が効力を持つためには、民法で決められた方式で作成しなければなりません。大きく分けると「普通方式」と「特別方式」の2種類があり、それぞれの方式でさらにパターンが分かれます。

■普通方式

■特別方式

遺言書の基礎知識は、バックナンバー「知っておきたい遺言書の基礎知識」でも解説していますので、参考にしてください。

誤解その1ー遺産分割の内容だけを書けばいいの?

遺言を書く大きな目的の一つは、スムーズな遺産分割や事業承継のためです。特に、相続財産に複数の不動産などがある場合は、法定相続分通りに分けることが難しいため、誰にどの不動産を相続させるかをはっきりと示すことが必要です。また、亡くなった息子の嫁に晩年、介護をしてもらったので、財産を残したいと思った場合、息子の嫁は法定相続人ではありませんので、遺言書に明記しないと、何も相続できない可能性があります。

このように見ていくと、実際の遺産分割は、いくぶん偏った分割になることも多く、相続人の間でトラブルになりかねません。それを防ぐ意味で大切なのは、遺言書にその理由や相続人に対するメッセージをしっかりと書くことです。
遺言書には「付言事項」というのがあります。付言事項とは、「法律に定められていないことを遺言書で付言する事項」のこと。つまり、法的効力はありませんが、相続人に対する遺言者の最後のメッセージという位置づけです。

付言事項に、それぞれの財産を指定分割した理由をきちんと書いておけば、遺言者の意思として尊重され、分割に対する争いを防止する効果があります。例えば、ただ「不動産は次男に相続させる」と書いてあるだけでは、長男は納得できないかもしれません。どういう理由で次男に相続させたのかを明確に書くことで、長男も納得しやすいのは間違いありません。

また、相続人一人ひとりに感謝の言葉を書くだけでも、相続人の受け取り方はかなり変わってきます。恥ずかしがって、一般的な定型文句にするケースもあるようですが、できるだけ自分の言葉で明記した方が、効果は高いでしょう。

■遺言の分割内容と付言事項

遺言書は、遺産の分割方法を指定するだけではない。付言事項で、なぜそう分けたのか、また家族への感謝の気持ちなど、最後のメッセージを明記することも、トラブルを避ける上で大切。

誤解その2ー自分で書いて、しまっておいていいの?

自筆証書遺言は、他の遺言書に比べれば手軽に作れます。紙とペンと印鑑さえあれば作成できますので、この方式を選択して遺言を残そうとしている方も多いでしょう。ただし、法律で定められた要件や形式を満たさないと、結果として無効となる場合もありますので注意が必要です。

まず、自筆とあるように手書きで作成しなければいけません。パソコンで作成したものやレコーダーに音声で残したものは認められません。また、引き出しの奥などに隠しておくと発見されないという可能性もあります。

書いた遺言書は、封筒に入れ封印します。気をつけなければならないのが、その遺言書を発見した人が、勝手に開けてしまわないようにすることです。開けてしまうと遺言書が無効になったり、5万円以下の過料が科せられる場合もあります。自筆証書遺言、秘密証書遺言を発見した相続人は、すみやかに遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります。封筒に「家庭裁判所で開封してください」といったコメントを書いておくようにしましょう。

その他、自筆証書遺言が無効となるケースは、押印がない、署名がない、日付の記載がない、遺言者以外が書いた、2人以上で共同で書いた、内容が不明確、などがあります。一度書いた遺言書は弁護士等専門家に確認してもらったほうがよいでしょう。

■封筒のポイント

自筆証書遺言は手軽だが、要件が厳しいので、不備がないように気をつける。また、遺言書が勝手に開封されないように、封筒に但し書きをするなどしておく。

誤解その3ー十年前に書いてあるから大丈夫?

遺言書は、何度でも書き換えて構いません。一度作ったら、それっきりという場合は気をつけなければなりません。例えば、十年前に遺言書を作った時と、現在の資産の状況や家族の状況が変わってないかということです。特に不動産や有価証券といった資産は、価値が変わっている可能性があります。その場合、あらためて評価し直すと遺言書にある分割では不公平になるといったことも考えられます。

また、税制や相続のルールも変わりますので、その時代にあった相続対策が必要になってきます。不動産を買い替えたり、現金を不動産に替えたりと、資産の組み替えを行った場合は、資産の状況が大きく変わっていますので、改めて分割の割合も再考し、遺言書を書き換えなければなりません。

遺言書は一度作成したら終わりではありません。資産の値上がりや値下がりがあった時、税制等の大きな変更があった場合、相続人の増減があった場合や、相続させたい相手が変わった場合などは、遺産分割を見直しし、遺言書の変更も必要になってきます。

経済状況によって、不動産や有価証券といった資産は価値が増減する。また税制、相続ルールも変更になるので、遺言書は定期的に見直しし、書き換えることが必要。

誤解その4ーまだ若いから大丈夫。病気になったら考えればいい。

遺言書はいつ作成するのがよいのでしょうか?
一般的には、早ければ早いほうがいいと言われており、民法上は15歳以上であればいつでも作成できると定められています。遺言書の作成には体力や判断力が必要です。高齢になっても、まだ元気だからと先延ばしにしていると、作成そのものが億劫になってしまい、作れなくなることもります。知力体力のある若い内に作成するのがおすすめです。

ライフサイクルで考えると、結婚した時、子どもが生まれた時、自宅を購入した時、定年退職した時、配偶者が亡くなった時が一つのタイミングです。結婚した時はまだ早すぎると思われるかもしれませんが、万が一、若くして亡くなった場合、相続人は配偶者と被相続人の親になります。つまり、場合によって嫁と両親の間で遺産分割協議をしなければなりませんので、話し合いをスムーズに進めるためにも遺言書はあったほうがよいでしょう。これは、子どものいない高齢者夫婦にも言えることで、法定相続人が誰かを確認して遺言書を作成する必要があります。
万が一のことを考え、生命保険には誰しもが早く加入すると思いますが、遺言書の作成も同じで早すぎるということはないのです。

そして、超高齢社会の相続で気をつけなければならないのが、認知症のリスクです。現在、65歳以上の4人に一人は、認知症またはその予備軍と言われています。いつ誰が認知症になっても決しておかしいことではありません。そして、認知症の初期は症状もまだらですが、認知症の時に作成した遺言書は無効になります。公正証書遺言で作成する時、遺言者が高齢の場合は、認知症になっていないか医師の診断書を求められることもあるようです。
認知症の発症は、本人が気づくことはあまりありません。認知症リスクを考えても、遺言書は早く作成したほうがよいでしょう。

■認知症高齢者の現状(平成22年) 厚生労働省資料より作成
認知症高齢者の現状(平成22年)

遺言書作成のタイミングは知力体力のある早い内に。認知症リスクへの対応策としても早めに作成するのがよい。

誤解その5ー遺言の効力は絶対なの?

これもよくある誤解ですが、「遺言書に書かれていることは、必ず従わなければならない」という誤解です。
従わなくてもよいケースの一つが、遺留分が侵害されている場合です。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取れる遺産の範囲のことです。例えば、配偶者と子ども1人が相続人だった場合は、法定相続分は配偶者2分の1、子ども2分の1ですが、「それぞれ4分の1」が遺留分として認められます。つまり、遺言書に法定相続人以外の誰かに全ての財産を相続させる、と書いてあっても、相続人は遺留分を請求できるということです(兄弟姉妹には遺留分はありません)。なお、遺留分が侵害される場合には「遺留分減殺請求」をする必要がありますので、専門家にご相談ください。

遺言に従わなくていいもう1つのケースは、相続人全員が合意した場合です。何らかの理由で遺言書に記載している遺産分割では相続人に不都合が生じる場合は、遺言を絶対のものとして従う必要はありません。ただし、全ての相続人、遺言執行人の合意があること。また、遺言で遺産分割が禁止されていないことなどが条件になります。遺言執行人とは、遺言を実行するために、公的な手続きなどを進めていく担当者のことで、遺言書で指定できます。

遺言は、遺言者の最後のメッセージになりますので、原則、尊重すべきです。遺言の大きな目的は、分割で遺族がもめないためのものです。スムーズな「遺産分割の道しるべ」となるような遺言を残しましょう。

原則、遺言は尊重し従わなければならない。ただし、遺留分を侵害している場合や、相続人全員の合意がある場合は従わなくてもよい。

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