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コロナ禍で考えたい「生前贈与」の基本

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2020年8月25日

コロナ禍で考えたい「生前贈与」の基本

リーマン・ショックの時、富裕層は暴落した保有株式を今がチャンスと生前贈与したといいます。将来、値上がりが期待される資産を生前贈与することは、相続税対策としてとても効果が期待できる手段です。また、長寿社会では老老相続になってしまう前に、早い段階で資産を次世代に移したほうが、資産も有効に活用できるとも考えられます。生前贈与の基本について解説します。

生前贈与のメリットとデメリット

コロナ禍で将来への不安が増す中、資産運用や相続に関しても万が一のことをあらためて、強く意識しはじめた方も多いと思います。そこで、早めの対策として考えたいのが資産の移転、生前贈与です。

生前贈与は、事前に資産を移転することで、相続税の課税対象を減らすことができ、相続税対策に大きな効果が期待できます。しかし、贈与税は税率が非常に高いのが特徴です。相続税率と比較しても、高いことがよく分かります。方法を間違えるとかえって高い負担を強いられてしまうことがあるので十分に注意して計画しなければなりません。

■相続税の速算表 ■贈与税の速算表

今、超高齢社会では老老相続が問題になっています。問題の一つは資産が相続されても有効に活用されないという点です。90歳代の親から、70、60歳代の子どもに資産が受け継がれても、子育てが終わった世代では資産の使い道がありません。資産は守ることも大切ですが、有効に活用してこそ活きるのです。ましてや、認知症などになると資産が凍結され、資産活用できなくなってしまう可能性もあります。

このことは、日本経済にとっても消費されない資産として大きな課題となっています。そのため、生前贈与における税制の優遇策がいくつか講じられています。詳しくは後ほど解説しますが、将来相続を受ける現役世代がいるのであれば、早めに資産を移転することも、資産の有効活用になるでしょう。

生前贈与は、遺産分割の一部を自分の目で見届けることができるという安心感も大きなメリットです。よく計画して実行するようにしてください。
資産の運用・管理については、バックナンバー「人生100年時代のリスク-資産寿命を延ばす」でも解説しています。ご覧ください。

生前贈与は有効な相続対策の一つ。資産が必要な世代に早く移転させることも、資産の有効活用としては大切なこと。

暦年贈与は毎年110万円以上の贈与でも効果大!

それでは、具体的な贈与の方法をいくつかご紹介します。
よく使われているのが、贈与税の基礎控除110万円を活用して毎年コツコツと贈与する「暦年贈与」です。110万円以下であれば非課税ですが、仮に10年間続けたとしても1,100万円です。資産が多い場合には、効果が低いかもしれません。

その場合は、110万円を超えて贈与税を支払ってでも贈与したほうが、結果的に相続税の節税効果が期待できる場合があります。
例えば、1億円の財産を、子ども一人が相続するとして、10年間、
1)何もしなかった場合
2)110万円の暦年贈与を行った場合
3)300万円の贈与10年を毎年行った場合
で比べてみます。

300万円の贈与に対しては、贈与税=300万円-基礎控除110万円×10%×10年=190万円が10年間でかかります。しかし、その分相続財産は3,000万円少ない7,000万円になりますので、相続税はかなり抑えられます。
結果を下の表にまとめましたが、無税となる110万円の贈与よりも、贈与税のかかる300万円を10年間贈与したほうが効果が高いことが分かります。

■贈与額による税負担額の違い

また、贈与税は「受贈者ごと」の課税なので、例えば3人に贈与をすれば上記効果はさらに大きくなります。

暦年贈与で注意したいのが「名義預金」。つまり形だけの贈与とみなされれば、無効になってしまいます。以下の点に注意してください。

■暦年贈与の注意点
・その都度、契約書を作成し事実を明確にする。
・通帳・印鑑は必ず受け取った本人が管理する。
・贈与を受けた資産は受取人が自由に使える状態になっている。

暦年贈与に関しては、バックナンバー「贈与税で節税できる相続対策!」でも詳しく解説しています。ご覧ください。

現金贈与は、贈与税を支払ってでも、相続税対策に大きな効果が期待できるケースがある。

教育資金、結婚資金、住宅資金の優遇制度を活用

現役の若い世代への資産の移転については、日本経済にとってもプラスです。国も優遇策を打ち出しています。

■教育資金一括贈与制度

祖父母等(曾祖父母、両親も可)から、孫(または子)に教育資金を1,500万円まで非課税で一括贈与できる制度です。孫への贈与は、一世代飛ばしとなりますので、相続税対策としても有効です。活用するには、信託銀行などを利用します。教育資金の贈与に関しては、その都度贈与しても非課税なのですが、自分の意志で贈与したい人にまとめて一括で贈与できることがメリットです。23歳までは習い事にも使えますが、30歳までに使い切れなかった場合は、その残額に贈与税がかかりますので、注意が必要です。

■結婚・子育て資金一括贈与制度

教育資金同様、直系尊属から、孫(または子)に結婚・子育て資金を1,000万円まで(結婚式資金は300万円まで)が非課税で一括贈与できる制度です。受贈者は20歳以上50歳未満です。教育資金一括贈与制度も含め、手続きの簡素化や要件の拡充、例えば不妊治療も適用されるなど、税制改正で利便性は改善しています。こちらも、50歳までに使い切れなかった場合は、その残額に贈与税がかかりますので、注意が必要です。

■住宅取得資金の贈与税の非課税特例

父母・祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の金額について贈与税が非課税となる特例です。こちらは、従来から続いている特例です。

■住宅取得資金の贈与税の非課税特例

今、コロナ禍の影響が懸念されていますが、立地のよいマンションなどの販売は好調のようです。有効活用できるでしょう。

■相続時精算課税制度

2,500万円までの贈与は、贈与時には非課税となり、相続時にあらためて相続財産として課税する制度です。基本的には節税にはなりませんが、今のコロナ禍で株式の時価が下がっている場合に活用すれば、贈与時の時価で評価されますので、結果的に相続時に株式が値上がりしていれば、その分節税できたことになります。また、早めに資産を移転したい場合なども有効に活用できます。

優遇制度を活用して、計画的に生前贈与を。どの制度をどう活用するかは、専門家を交えて効果をシミュレーションすることが必要。

自宅や賃貸住宅など不動産の生前贈与にメリットはあるか?

■配偶者への自宅の贈与は損得ではない

自宅に関しては、一定の要件(婚姻20年以上など)を満たす配偶者への贈与には、2,000万円の控除があります。基礎控除を含めれば2,110万円まで非課税で贈与できます。ただし、これを活用すると評価が8割減になる小規模宅地の特例は使えません。また、配偶者に関しては、相続時に1億6千万円までの非課税枠があります。節税対策として有効かどうかは十分なシミュレーションが必要です。

しかし、配偶者への自宅の相続は、民法(相続法)の改正で「配偶者居住権」が創設されたように、問題が生じるケースがあります。また、同改正で、以前は自宅の生前贈与は相続が発生すると相続財産として加算されていましたが、2019年7月1日以降は加算しなくてよいことになりました。自宅の所有権を配偶者に確実に移すことを、自分の目で見届けらけれるという点では、生前贈与が安心です。このことに関しては損得の問題ではないでしょう。

■賃貸住宅の生前贈与は家賃収入を移転することができる

賃貸住宅など収益不動産を生前贈与することで、節税効果が得られる場合があります。
例えば賃貸住宅は、毎月家賃収入が入ってくることで、その分資産が膨らんできます。そこで、家賃収入分の資産を移転する目的で、賃貸住宅を生前贈与するのです。賃貸住宅の評価額は固定資産税評価額で、さらに借家権割合による評価減もありますので、時価より大幅に評価が下がり、おおむね時価の40%で贈与することができます。贈与を受けた方は、家賃収入を将来の相続税の納税資金として準備することもできるのです。

仮に、建築費6,000万円で賃貸住宅を建てた場合をシミュレーションすると下図のようになります。

■建築費6,000万円(固定資産税評価額:時価の60%、借家権割合:30%)のアパートを親から子へ贈与した場合

注意したい点が3つあります。

1.「負担付贈与」はしない
借入金も一緒に贈与すると「負担付贈与」となり、建物の評価が固定資産税評価ではなく、時価評価となり、時価からローン分を差し引いた金額に贈与税がかかります。

2. 貸家建付地の評価減を受けるために、「一括借上げ」で管理する
将来、土地相続の時に、貸家建付地の評価減を受けるには入居者が変わらないことが条件になっていますが、長期で考えると入居者が変わらないことは考えられません。しかし、一括借上げの場合は借上げ業者との賃貸借契約になりますので、借上げ業者が変わらないかぎりは、貸家建付地としての評価減が適用されます。

3.「遺産分割の公平性」に配慮すること
大きな資産の贈与となりますので、他に相続人がいる場合は、全員に了解を得るなど、後にトラブルにならないよう家族間でよく話し合うことが大切です。

賃貸住宅の生前贈与も相続対策としては大きな効果が期待できる。遺産分割の不公平感が出ないよう、他の相続人に配慮すること。

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