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贈与税で節税できる相続対策!

税務・確定申告

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2018年10月23日

贈与税で節税できる相続対策!

贈与税は高いという印象を持っている方も少なくありません。確かに税率は高いかもしれませんが、実は相続税との関連を見ると一概には言えません。今回は、贈与税を払ってでも、結果的には相続税の節税が期待できる相続対策を解説します。

贈与税を払う人は増えている

国税庁が発表した贈与税の申告件数は、平成29年分で50万7千人です。平成27年をピークに若干減少したものの、平成20年から比べると約1.46倍に増えています。平成27年は、相続税の増税が始まった年です。ちなみに、平成28年の相続税の申告件数は10万6千人ですので、贈与税申告は5倍近くになります。
特に注目したいのが、実際に贈与税を納税した人です。贈与税を申告した50万7千人のうち、贈与税を納税した人が36万9千人、割合にすると72.8%です。贈与税の基礎控除は年110万円ですが、それを超えた金額を贈与し、贈与税を納税したということです。平成20年の納税割合は68.0%ですので、割合からいっても贈与税を納税する人が増えているということになります。

■贈与税の申告状況

贈与税の納税者数は高水準。相続対策として、生前贈与が活用されている。

贈与税は本当に高いのか?

生前贈与というと、無税となる基礎控除の年110万円以内の範囲で行うケースが多いと思います。なぜなら、贈与税は高いというイメージがあるからです。ただし、毎年コツコツと110万円を贈与しても、10年間で1,100万円です。相続財産が多い場合、効果は低いと言わざるを得ません。

本当に、贈与税は高いのでしょうか? 贈与税も相続税も累進課税で金額が多くなれば、税率は上がっていきます。実際にどれだけ違うのか、下記の表で比較してみます。
単純に、5,000万円の相続の場合は20%の税率、しかし、5,000万円の贈与の場合は最高税率の55%がかかってしまいます。また、少額の場合でも110万円を超えると税金がかかってくるので、もったいないという心理が働きます。
しかし、一度に多額の贈与をする場合を除いて、贈与税を支払ってでも、効果的な節税効果が期待できる場合があります。贈与税の納税者の増加が、そのことを物語っています。

■相続税の速算表 ■贈与税の速算表

相続税と贈与税の税率を単純に比較すると贈与税のほうが高く見えるが、贈与の仕方によっては贈与税を払うほうが相続対策として有効な場合がある。

贈与税を負担して相続税を節税する

先ほどは、単純に同じ金額での税率を比べましたが、この表の見方のポイントは累進課税であるということです。
仮に400万円の贈与をした場合は15%の税率ですが、相続の時、その400万円が相続課税価格の7億円のうちの一部だとすると55%の税率がかかることになり、贈与の方が節税効果は高いということになります。相続課税価格が7億円ではなく1,000万円だと相続の税率は10%なので、逆に贈与は損だと言えます。
つまり、相続時に相続資産がいくらあるのかで変わってくるのです。

もう少し、具体的なケースでシミュレーションをしてみましょう。
・一人親の母親が他界し相続が発生(贈与後3年経過後)
・相続人は子ども一人(贈与時20歳以上)
・相続財産は1億円

1)贈与なしで1億円を相続した場合
相続税=(1億円-基礎控除3,600万円)×30%-700万円(控除額)=1,220万円

2)生前に110万円の贈与を10年間していた場合
贈与税=0円
相続税=(1億円-贈与分1,100万円-基礎控除3,600万円)×30%-700万円(控除額)=890万円

3)生前に300万円の贈与を10年間していた場合
贈与税=300万円-基礎控除110万円×10%×10年=190万円
相続税=(1億円-贈与分3,000万円-基礎控除3,600万円)×20%-200万円(控除額)=480万円
合計670万円

整理すると下の表のようになります。

■贈与額による税負担額の違い

この場合は、年間300万円の贈与をして贈与税を納税する場合が、相続税と合わせると節税効果が一番高いことが分かります。これは、期間が5年間でも同様の結果が出ます。

贈与税を納税しても、結果的に相続対策としての節税効果が高いケースがある。

相続対策としての暦年贈与の注意点

暦年(1月1日〜12月31日)ごとに贈与を行い、基礎控除の年110万円を差し引いた贈与額で贈与税を計算することを暦年贈与といいます。この暦年贈与をする際の注意点があります。
一つは、言うまでもなく「名義預金」です。子どもや孫の預金口座を作り、本人には知らせずに、その口座に積み上げ、通帳も印鑑も贈与者が管理しているケースです。もし税務調査が入った場合は、必ず金融機関は調べられますので、隠し通せるものではありません。確実に、通帳、印鑑は贈与を受けた本人が管理し、自由に使える状態になっていなければなりません。

また、贈与税のかからない100万円を10年間贈与する場合でも、1,000万円の贈与を分割して贈与した定期贈与と見なされ1,000万円に対する贈与税が課せられる場合があります。これを防ぐには、贈与の度に贈与契約書を作ることです。その都度、贈与契約の合意をしたということになるので、定期贈与と見なされにくくなります。
贈与税を納税する場合は、毎年その都度、贈与があったことを事前に知らせることになるので、そういう意味でも有効だといわれています。

もう一つ注意したいのが、相続税の3年しばりです。つまり、相続開始前3年以内に受けた贈与は、相続財産として見なされるというものです。これは、110万円以下の贈与でも適用されます。病気で余命宣告を受けたからといって、あわてて相続人に生前贈与しても遅いということになります。
また、認知症になった場合も、意思能力の程度によっては贈与が無効になることがあります。相続対策としての生前贈与は、早期に取り組む必要があるのです。

さらに、最近気になるニュースが報道されました。それは、政府税制調査会が「相続税の増税と生前贈与の促進」についての検討を始めたというものです。相続税は基礎控除が平成27年に縮小され増税になったばかりですが、贈与税と比べれば、負担が軽いとの見解を政府は持っているようです。政府が最も懸念しているのが、「老老相続」、つまり消費の旺盛な子育て世代への資産移転が進まず、資産が有効活用されていないことです。今後は、米国のように相続税と生前贈与を一体的に課税する制度も参考にしながら生前贈与の促進を目指す方針だということです。

暦年贈与は、名義預金などに注意し、確実に贈与したという証拠を残しておくこと。また、相続開始前3年以内の贈与は相続財産となる。さらに今後ますます相続増税の傾向が強まることが予想される。相続対策としての生前贈与は、早期に取り組む必要がある。

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