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これからの生前贈与(相続税対策)のポイント

相続

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2016年7月 5日

これからの生前贈与(相続税対策)のポイント

相続増税の影響が大きく表れたデータが、先頃、国税庁から発表されました。贈与税の申告件数の増加です。生前贈与は以前から相続税対策として行われてきた手法ですが、税制や環境は目まぐるしく変わっています。昨今の環境変化を踏まえて、これからの生前贈与のポイントを解説します。

贈与税の申告件数が年々増加している

国税庁より、平成27年度の贈与税の申告状況が発表されました。
申告件数を見ると平成18年から20、21年まで、減少していましたが、22年からは年々増加しています。申告納税額もそれに合わせて増加し、25、26年度は大きく増加しました。相続税の基礎控除の引き下げなど、大幅な相続増税が発表されたのは平成25年度の税制改正でした。実施されたのは平成27年度からで、平成27年度の申告納税額は、前年に比べれば減少ですが、依然高い水準です。

■平成27年度 贈与税の申告状況

贈与は、相続税対策における定番手法の一つです。相続税も贈与税も累進課税ですが、相続税で高い税率が適用される場合は、贈与税を支払ってでも毎年コツコツと生前贈与をした方が節税になるケースは少なくありません。相続税の増税が発表されて以来、贈与税の申告納税額が年々増加しているのは、その表れでしょう。

また生前贈与は、自分が生きているうちに資産を子や孫などに移転できるというメリットもあります。国の政策も、若い世代に資産が移転されれば、それが活用されて経済も好転するという理由から、住宅取得資金の非課税枠などのさまざまな生前贈与の特例が制定されています。

贈与税の申告件数が年々増加。納税額も増加傾向。相続対策として生前贈与が活用されている。

資産透明化の時代、暦年贈与に気をつける

生前贈与の中で、最も活用されているのが暦年贈与です。先の贈与税申告件数の9割ほどは暦年贈与です。
暦年贈与とは、1年間の贈与の基礎控除110万円を活かして、贈与する方法です。毎年110万円ずつの贈与であれば、贈与税はかかりません。たとえ、贈与税がかかっても相続税対策としては有効な場合があります。
例えば200万円贈与した場合は基礎控除110万円を差し引いた90万円に10%の税率で9万円の贈与税がかかることになります。この200万円に将来相続税の最高税率55%がかかるとすると、110万円もの相続税がかかることになり、その差は歴然です。

ここで注意したいのが、名義預金です。子どもや孫名義の銀行口座をつくり、そこに子どもや孫に黙ってお金を振り込むケースです。

当たり前のことですが、贈与は受ける側がしっかりと受け取り、通帳、印鑑は本人が管理するというのが原則です。その都度、契約書を作成し事実を明確にすることをお勧めします。

税務調査が入ると、名義預金は特に注意して調べられると聞きますが、今後はマイナンバーの銀行口座への紐付けが予定されています。そうなると簡単に名義が特定される可能性がありますので、注意が必要です。

マイナンバー制度で資産透明化の時代へ。名義預金などはすぐに発覚するので、暦年贈与には注意する。

ジュニアNISAを活用して生前贈与

若い世代に資産を移転させ有効に活用させようと、住宅取得資金の非課税枠、そして人気の教育資金一括贈与制度、結婚・子育て資金一括贈与制度が創設されましたが、今年の4月から、新たにジュニアNISAが創設されました。
ジュニアNISAは、NISA同様、株や投資信託で得た売却益や配当金が非課税になる制度です。名前の通り、対象年齢が0〜19歳までに限られ、年間80万円まで非課税で、投資期間は5年間です。この制度を最大限活用すると、5年間で400万円を非課税で運用できることになります。期限は平成35年までとなっていますが、恒久化されるのではと見られています。

特長としては、口座は親権者が管理し、投資資金は原則18歳になるまで引き出すことができない点です。この特長を活かせば、親から子へ、祖父から孫への暦年贈与がしやすくなるでしょう。先にも述べた通り、暦年贈与は受け取る方も確実に認識しなければなりません。しかし、小学生の孫に現金を何十万円も贈与するのは、抵抗があるでしょう。ジュニアNISAを活用すれば、80万円は18歳になるまで引き出すことができませんので、貯金のように貯めることが可能なのです。
一方で注意したいのは、投資にはリスクがあるということです。NISAは含み益があって初めて、メリットの出る制度です。元本割れしているような状態ではメリットはないことを十分に理解し、長期的な視点で投資することが大切です。

■ジュニアNISAとNISA

孫への生前贈与は世代飛び越しといって、一世代分の相続税を回避することになりますので、特に相続対策には有効といわれています。また、孫への贈与については、1,500万円まで非課税となる「教育資金一括贈与制度」もあります。30歳未満の子、孫、ひ孫への贈与であれば、1,500万円まで(うち学校等以外の塾や習い事は500万円を限度)が非課税になります。教育資金については、その都度、毎年贈与しても非課税なのですが、一括して贈与できるのが便利なようで、年々増加傾向にあります。その他1,000万円まで非課税となる「結婚・子育て資金一括贈与制度」、「住宅取得等資金の非課税枠」などがあり、うまく組み合わせれば、かなりの額の生前贈与が可能になります。

ジュニアNISAの口座は親権者が管理し、18歳まで払い出しができないため、低年齢の子や孫への暦年贈与に利用しやすい。

地価上昇、相続時精算課税制度で不動産を贈与

本来、生前贈与で節税効果が高いのは、将来、価値が上がると予想されるものです。なぜなら、贈与は贈与された時の時価で評価されるからです。かつてリーマンショックで大幅に株が値下がりした時、一部の富裕層は株式を今とばかりに生前贈与したと言われています。値下がりは一時的なもので、将来はまた元に戻ると予測したのです。
もう一つ、値上がりが予測されるのが、都心部の地価です。三大都市圏を中心に、景気動向とは関係なく、地価は上昇しています(全用途で8年ぶりの上昇!「平成28年公示地価」)。しかし、土地そのものは価格が高いので、まずは土地活用をして、地価の評価額を引き下げることが先決でしょう。
仮に土地活用をして、アパートを建てた場合、アパートを生前贈与するというのも相続税の節税対策としては有効です。アパートを生前贈与する場合の評価額は固定資産税評価額となるため時価より低い上、さらに借家権割合の分が評価減になり、おおむね時価の40%程度で贈与することができます。ただし、ローンを借りている場合は負担付き贈与になり、固定資産税評価額ではなく、時価で評価されてしまいますので注意してください。
仮に建築費6,000万円でアパートを建てた場合は次のようになります。

■建築費6,000万円、固定資産税評価額=時価の60%、借家権割合=30%の場合

アパートの評価額が2,520万円なら、相続時精算課税制度の非課税枠2,500万円を使えば、税額は4万円になります。
アパートを贈与すれば、その後のアパートの家賃収入は相続人のものとなり、将来の相続税の納税資金として確保することもできます。ただし、相続人が複数いる場合は、不公平が生じないように、全員の了承が必要でしょう。節税対策ばかりが先行しがちですが、相続の基本はどう分割するか、でもあります。
また、アパートのみを贈与した場合、その土地を相続する時に貸家建付地の評価減を受けるには、建物の借主に変更がないこと、つまり一括借上げの場合に限られます。一括借上げの場合、借主は借上げ業者になりますので、変更することはまずありませんが、一括借上げでない場合は借主が入居者になるので、むしろ変更しないことのほうが少ないはずです。その点を注意しないと、建物を贈与した相続税対策の効果が減殺されてしまうこともありますので、実行の際には専門家に相談されたほうがよいと思います。
生前贈与に関しては「知っておきたい基礎知識/相続・贈与の基礎知識:財産の移転編ー生前贈与を活用する」でも詳しく解説しています。

アパートの生前贈与は、評価が下がって40%程度になる。相続時精算課税制度を活用すれば、有効な相続税対策になる。

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