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リスクに備える!土地オーナーの認知症対策

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2024年6月 6日

リスクに備える!土地オーナーの認知症対策

人生100年時代において、土地オーナーの相続対策として重要になってくるのが認知症対策です。今や認知症は誰もがなり得るとても身近な疾病です。特に土地オーナーの場合は、認知症になると資産の管理・運営に大きなデメリットが生じてしまいます。そのデメリットや対策について解説します。

現在、高齢者の4人に1人は認知症

厚生労働省の調査(2024年5月発表)によると2022年の高齢者の認知症は12.3%、軽度認知障害(MCI)が15.5%で、合わせると27.8%。約4人に1人が認知症またはその予備軍となります。この有病率が同じだとすると、2040年には3人に1人が認知症またはその予備軍となると推測しています。
もはや認知症は誰もが発症し得る身近な病気といっても過言ではありません。当然高齢になればなるほど認知症の発症率は高くなり、過去の推計では85歳以上の約2人に1人は認知症です。人生100年時代といいますが、長生きすればするほど認知症のリスクは大きくなるのです。

がんは広く認知された疾病なので、"いつかは自分も"と思い、保険の加入など対策を取っている方は少なくないでしょう。認知症も同じで、いつ、誰がなってもおかしくない病気なのです。いつかは、自分自身もそうなる可能性があることを自覚する必要があり、特に土地オーナーは何らかの対策が必要です。

■認知症などの高齢者の推計

認知症は誰もが発症し得る身近な病気。人生100年時代のリスクとして対策が必要。

土地オーナーは注意! 認知症になるとできなくなること

認知症の主な症状には、記憶障害の他に理解力・判断力の低下があります。認知症になると意思決定ができないとされ、銀行口座の凍結の他、本人しかできない契約などが法的に認められなくなります。
よく聞くトラブルは、認知症になって遺言書を書いても無効になってしまうということ。遺言書の日付が認知症になる前なのか後なのかで問題になるケースがあるのはこのためです。
そして土地オーナーが気をつけなければならないのが、土地活用など不動産の管理・運営ができなくなる可能性が高いということです。

認知症になると本人の意思判断では金融資産だけではなく、不動産を含めたすべての資産の管理・運用が自由にできなくなります。特に、資産を運用する行為である土地の売却や土地活用などは、原則的に不可能となります。また賃貸住宅の改築や大規模修繕も、余程の理由がないとできなくなる可能性があります。
第一生命経済研究所の試算では、2030年の認知症患者の資産が約200兆円にものぼり、対策を講じないと、この約200兆円が凍結されると懸念しています。少なくとも遺言は認知症になる前に作成することをお勧めします。

■認知症の診断が降りるとできなくなること

認知症になると金融資産だけではなく、不動産を含めたすべての資産の管理・運用ができなくなる可能性が高い。何らかの対策が必要。

生前贈与という選択

認知症になる前に遺言書を書いておけば、遺産分割でトラブルになる可能性は低くなると思います。しかし、書いた後に認知症になると、結局それ以後の資産管理に影響が出てしまいます。
そこで、検討したい対策の一つが生前贈与です。

金融資産については、暦年贈与で生前贈与を行っている方も少なくないでしょう。注意点は、「名義預金」にならないようにすることです。名義預金とは子や孫の名義で勝手に銀行口座をつくり、実質は親や祖父母が管理している預金口座のことです。また、暦年贈与については税制改正があり、生前贈与加算の期間が3年以内から7年以内に延長されました(2024年1月1日より)。
詳細はバックナンバー「2023年度税制改正のポイント」をご覧ください。

では、不動産を生前贈与する場合はどうでしょう。メリットとデメリットを解説します。

不動産を生前贈与するメリット

1. 不動産から得られる収益を早期に移転できる
不動産が賃貸住宅などの収益不動産の場合、賃料による資産増加は相続税の負担を大きくします。そこで早期に収益不動産を生前贈与すると、相続税の負担を抑える効果が期待できます。

2. 不動産の値上がり分の相続税を軽減できる
この十数年、都市部の地価は値上がりしました。将来値上がりが予測できる土地は、早期に生前贈与することで、値上がり分の相続税を軽減できる効果があります。また、更地などの遊休地の場合、土地を有効活用することで資産価値を高めることができますが、土地活用には気力体力が必要です。生前贈与し、次の世代に一任するのもよいでしょう。

3. 不動産を確実に承継できる
不動産は遺産分割が難しいといわれています。相続が起きて、誰が不動産を引き継ぐかでトラブルになることがあるからです。そこで生前贈与することで、不動産を確実に特定の相続人に引き継がせることができます。

不動産を生前贈与するデメリット

1. 費用がかかる
不動産取得税や所有権移転登記の登録免許税などがかかります。相続の場合、不動産取得税は不要です。登録免許税は原則、贈与税なら評価額に対して2%、相続税なら0.4%かかります。

2. 小規模宅地等の特例が使えない
土地の相続については、自宅は8割、賃貸住宅の土地は5割、相続評価を軽減できる小規模宅地等の特例があります。それが生前贈与するとこの特例が使えません。どちらの節税効果が高いかはケースバスケースです。

不動産を生前贈与するかどうかは、節税を目的にするのか遺産分割を目的にするのかなど、資産や家族の状況によってもケースバイケースで変わってきます。専門家に相談して、検討することが大切です。

家族信託か任意後見制度で資産管理を委託する

もう一つの対策として注目されているのが民事(家族)信託と任意後見制度です。
家族信託は、自分が元気なうちに自分の財産を信頼できる家族に託す制度です。生前贈与で、資産を早期に移転することに抵抗がある方もいると思います。家族信託を利用すれば、管理のみを委託し、得た収益は自分のものにすることができます。

例えば賃貸住宅ではオーナーが認知症になると、その後の経営ができなくなります。賃貸住宅に家族信託を適用すると、親が「委託者」、所有権を移転し管理・運営を委託する子どもを「受託者」、そこから得る利益を受ける「受益者」を親にすることもできます。こうしておけば、万が一のときも不動産の管理・運営は問題なく継続できます。

■民事信託の仕組み

「任意後見制度」は成年後見制度の一つで、家族信託同様、元気なうちに財産管理・処分を任せる任意後見人と契約をしておくものです。
家族信託との違いは、まずその理念にあります。成年後見制度自体、「本人の保護」を目的としています。そのため、任意後見人の他に家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、管理・処分に関して監督が入ります。つまり、任意後見人が財産管理を自由にできるわけではないのです。どちらかというと積極的な管理・運用はできなくなると考えた方がいいでしょう。また、監督人には一定の報酬を払い続けなければなりません。
任意後見制度は本人が認知症などで判断能力がなくなり、家庭裁判所によって任意後見監督人選任の審判がなされるとスタートします。

■「民事信託」と「任意後見制度」の違い

賃貸住宅など、不動産の管理・運営上の認知症対策としては、管理・運営が自由にできる民事信託のほうが使いやすいと思います。
成年後見制度は2000年から、家族信託は2007年から始まった制度です。どちらの制度も何度か改正が行われています。専門家に、現状の制度内容をよく確認して相談してください。

不動産の管理・運営の認知症対策として、民事(家族)信託と任意後見制度がある。現状では管理・運営が自由にできる民事信託のほうが使いやすい。

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