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地域活性化を促す賃貸住宅の役割とは

入居者トレンド

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2014年7月 8日

地域活性化を促す賃貸住宅の役割とは

2014年5月、ニッセイ基礎研究所から「戦略的賃貸住宅誘導論ー賃貸住宅が地域を変える」と題したレポートが発表されました。地域を活性化させるには、賃貸住宅の役割が大きく、その可能性を秘めているというものです。土地オーナーにとっても、興味深く、また心にとめておきたい内容となっていますので、ご紹介したいと思います。

少子高齢社会は都市も地方も共通の課題

総務省発表の人口動態調査によると、2014年1月1日現在の日本の総人口は約1億2,643万人で5年連続の減少でした。一方、東京、名古屋、関西の三大都市圏の人口は全体の50.93%と過去最高を更新しています。政府は中長期の目標として、50年後の2064年に1億人程度は維持するとして、少子化対策などの政策を検討しています。

今回の人口動態調査でも都市部の集中が進んでいることが明らかになりましたが、中長期の視点で見れば、少子高齢社会は都市部の各地域でも大きな課題です。地域の防災、防犯、住民の孤立防止、子育て支援といった地域の課題を克服するためには、住民同士の共助も必要になり、そのためには、次の地域の担い手となる若い世代を地域に呼び込み定住させることが必要となるのです。新婚家庭に家賃補助を出すなど次世代の地域の担い手を確保しようと施策を打ち出している都市部の自治体の例もあります。

ニッセイ基礎研究所が発表したレポート「戦略的賃貸住宅誘導論ー賃貸住宅が地域を変える」では、これらの課題を解決するには、「行政だけに任せておくには限界があり、住民も一緒になって考えていく必要がある」としています。そこで、地域の担い手を確保するために、有効に機能する賃貸住宅を誘導することが一つの解決策ではないか、としたのがこのレポートなのです。では、具体的にその内容を見ていきたいと思います。

人口減少は、都市部も地方も共通の課題。地域を活性化させるには、次世代の地域の担い手を確保すること。

賃貸住宅が地域の担い手を呼び込む

地域の担い手が、その地域で持ち家を取得し定住するには、住み替え前の賃貸住宅が大きな役割を担います。レポートでは様々な統計調査から「担い手確保のための住み替え循環構造」を分析しています。

賃貸住宅と持ち家の割合は、おおよそ3対6。残りはその他です。賃貸住宅の約半数の世帯は5年未満で住み替え、そのうち約3割が持ち家を取得します。
そしてポイントは、賃貸住宅から持ち家に住み替える場合、約7割が同じ市区町村で持ち家を取得していることです。レポートでは、「民間賃貸住宅から持ち家を取得した若いファミリー層の多くは、地域への愛着感も含めた子育て環境を評価して、同地域内で持ち家を取得しているものと思われる」としています。
一般的に考えても、結婚して賃貸住宅に住み、子どもができて住み替える場合、住み慣れた地域内で家を持ちたいと思うのが自然でしょう。つまり、賃貸住宅には「若いファミリーを呼び込み、地域に定着させる装置としての機能」があるのです。

ただし、賃貸住宅に住んでいる数年間に、地域に愛着を持ち、将来地域の担い手になり得るかどうかがポイントです。単に、ファミリー向けの賃貸住宅があればいいということではありません。このレポートのタイトルが「戦略的賃貸住宅誘導論」とあるように、将来、地域の担い手になるような若いファミリーを呼び込むための賃貸住宅が必要だということなのです。

地域の担い手となり得る世帯とは、共助の関係に前向きな世帯。つまり、「人とのコミュニケーションをいとわず、身近な人との交流も含めて日々の生活を楽しもうとする姿勢を持つ世帯」です。そして、その世帯を呼び込む賃貸住宅が最近人気のコミュニティ型の賃貸住宅です。コミュニティ型賃貸住宅は、入居者同士や入居者と地域の住民との交流を促し、災害などの際に支えあう共助が発揮されるとしています。

賃貸から持ち家への住み替えは7割が同じ市区町村に移り住む。賃貸住宅には「若いファミリーを呼び込み、地域に定着させる装置としての機能」がある。

子育て共感賃貸住宅で地域も活性化する

コミュニティ型賃貸の例として挙げられているのが、ヘーベルメゾンの子育て共感賃貸住宅の「母力」です。「母力」は都市部の希薄な人間関係から孤立しがちな子育て世代が、入居者同士のコミュニティにより、安心して楽しく子育てできる仕組みを備えた賃貸住宅です。
また、お母さんによる子育て情報を発信する市民プロジェクト「お母さん大学」の会員などにより構成された「母力サポーターズ」による子育てや入居者コミュニティのサポートが受けられます。

プランニングにも特徴があります。遊ぶ子どもたちを見守りながらお母さん同士が交流できる「お母さんステーション」という屋根付きの屋外共用空間や、不審者の侵入や子どもの飛び出しを防止する見通しの良いエントランスゲートなどが設けられています。

そして、レポートで最も特徴的だとしているのが「住民憲章・子育てクレド」の存在です。子育てクレドは、入居者同士が共に暮らすための共通認識や基本的なルールを確認するためのもので、入居者同士が積極的に声を掛けコミュニケーションをすること、お互いを助け合うこと、子育ての喜びを共有することなどが書かれています。入居者はみな、このクレドにも共感して入居しています。
さらにクレドには、地域の人々とのつながりも大切にすることが書かれていて、将来の地域の担い手となることも十分期待できるとしています。

子育てクレド

ヘーベルメゾンの子育て共感賃貸住宅「母力」のようなコミュニティ型賃貸住宅の入居者が、地域への定住や担い手となり、活性化につながることが期待できる。

地域交流を義務付けた学生向け賃貸

コミュニティ型賃貸住宅の例として、学生向けの賃貸住宅も取り上げています。こちらもユニークな試みでマスコミなどに取り上げられた賃貸住宅です。場所は東京都千代田区。都心は昼夜の人口逆転現象が問題で、他の地域と同じように若い人がおらず地域活動が思うようにできないというのが課題でした。
この賃貸住宅は再開発ビルの最上階2フロアに設置され、周辺相場より安い家賃で入居できます。ただし、条件として地域活動への参加が義務付けられています。再開発エリアには地域交流活動の組織ができていて、入居学生はその組織の会員となって活動する他、神田祭、千代田区の運動会、町会主催の夜警活動などに参加します。
このケースでは、地域の活性化の担い手の一助を学生入居者に託しています。学生が地域に根を張って暮らし、様々な属性の人をつなぐ媒介役となって、地域の魅力を引き出すことを期待されているのです。

都心の再開発エリアでも地域の活性化が課題。学生を地域活動に参加させることで、地域の活性化を期待。

地域の活性化を促す“共助の関係を築く賃貸住宅”

コミュニティ型賃貸住宅は、あるライフスタイルに共感する人たちが集まる賃貸住宅です。そして、お互いが共助の精神を持つことを明確に掲げる必要があります。
これまで、賃貸住宅入居者にコミュニティという意識は希薄であり、こうしたコミュニティ型賃貸住宅は敬遠されてしまうのでは、と思われがちでした。しかし、「母力」などのコミュニティ型賃貸住宅は、まだまだ数は少ないものの周辺の相場より高い家賃でも入居者には人気の賃貸住宅です。レポートに事例は出ていませんでしたが、ペット共生型賃貸住宅にもゆるやかなコミュニティがありますし、シェアハウスが人気なのも、賃貸住宅でのコミュニティを求めるニーズが、確立しはじめたと言っていいでしょう。レポートでも「コミュニティ型賃貸住宅への入居者ニーズは着実にあると感じる」としています。

さらにレポートでは、コミュニティ型賃貸住宅で、入居者同士、また入居者と地域が活発にコミュニケーションをするには、管理会社などが積極的にイベントなどの催しものを仕掛ける必要があり、また、持ち家を取得するために、地域の販売物件を優先的に斡旋する仕組みもあると良いのでは、と提案しています。

これらのコミュニティ型賃貸住宅の機能を考えると、今後は行政も含めて、将来の地域の活性化のために、コミュニティ型賃貸住宅を積極的に誘導するようになってくるかもしれません。そしてもう一つ大切なことは、オーナーにコミュニティ型賃貸住宅導入の必要性に対する認識を深めることだとしています。レポートの最後に「地域の一員である賃貸住宅オーナーが、自身の資産は地域の将来にとっても重要な資産であることに思いをはせる必要がある。この思いをオーナーと地域住民、自治体が共有したときに、賃貸住宅が地域を変える力を発揮するのである」と締めくくっています。

コミュニティ型賃貸住宅でのライフスタイルが見直され、一定の入居者ニーズとなって存在している。オーナー自身、資産は地域の将来にとっても重要な資産であることを認識する必要がある。

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