土地・賃貸オーナーにとって、毎年気になる税制改正。内容によってはアパート経営や土地活用にも大きく影響するだけに、ポイントは押さえておきたいものです。昨年末、平成26年度税制改正大綱が発表されました。果たして影響のある税制改正はあったのか、ポイントを整理してみます。
平成26年度の税制改正については、総じて大きな税制改正はありませんでした。
それでも大きな注目となったのが、軽減税率の導入についてです。今年の4月から消費税は8%になりますが、来年の10月には10%になる予定です。消費税のアップは家計への負担が大きいことから、軽減税率の導入が検討されていましたが、今回その導入については明言されませんでした。
よく日本の消費税は、ヨーロッパの国々に比べれば低いといわれます。しかし、ヨーロッパなど消費税が20%前後の国では、食品や医療品などの生活必需品については、軽減税率が導入されています。一方、低所得者への対応は軽減税率ではなく、他の優遇措置で対応すべきとの意見もあり、まだまだどうなるか、来年度の税制改正でも注目となるでしょう。
もう一つの注目が、法人税制改革です。中でも注目されていたのが「岩盤」といわれていた法人実効税率の引き下げでした。しかし、これも「引き続き検討する」との表現にとどまり、先送りされました。法人実効税率の引き下げは国内企業だけでなく、海外企業の日本進出にも影響するもので、今後も激しい議論が続くものと思われます。
法人税制については、それ以外で復興特別法人税の廃止や大企業の飲食のための交際費を50%まで損失算入することを認める措置が盛り込まれ、一部の企業支援は手厚くなったのも事実です。
また、富裕層の増税も盛り込まれています。賃貸オーナーの中には、サラリーマンと兼業の方も少なくありませんが、年収1千万円を超えるサラリーマンを対象に、給与所得控除の減税が2段階で縮小されることが決まりました。さらに、来年からは所得税の最高税率がアップされることも決まっています。
給与所得と不動産所得は損益通算することになりますので、何かしらの節税対策を講じたいものです。
家計への負担増、企業には支援の税制改正。ただし、抜本的な改革につながる税制改正は行われていない。
次に、アパート経営や土地活用に直接影響のある税制改正を見ていきます。
この特例は、相続で引き継いだ財産を3年10カ月以内に譲渡した場合、支払った相続税のうち譲渡した財産に相当する部分を取得価額に加算することができるものです。特に土地の譲渡に関しては、土地の一部を譲渡しても、相続した全ての土地に対する相続税相当額を加算することができました。
これにより、譲渡益に対する所得税・住民税を大幅に削減することができていました。
しかし、今回の改正により、他の財産と同様に、譲渡したその土地に相当する相続税しか加算できなくなります。以前と比べれば、大幅な増税にもなりかねないものですので注意が必要です。
今年の3月末までの経過措置として、青色申告を選択している場合、30万円までの資産は、一括して損金算入できるという特例措置があります。この特例が2年間延長され、平成28年3月31日までとなりました。例えば、新たな設備投資として30万円かけてシステムキッチンを導入した場合、減価償却せずに一括して必要経費に算入できます。なお、年間の上限が300万円までと決められていますので、1個30万円の資産なら10個が限度ということになります。
その他の土地・住宅税制に関する改正は、既存の特例の延長がほとんどです。いずれも、土地の流動化を促進することが狙いです。
・優良住宅地の譲渡に関する軽減税率、3年間延長。
優良住宅地のために土地を譲渡した場合、長期譲渡所得のうち2,000万円以下の部分については、所得税を15%から10%に、住民税を5%から4%に税率を軽減する特例が3年間延長されます。平成28年12月31日まで。
・新築住宅に係る固定資産税の減額措置、2年間延長。
新築住宅のうち、一般の住宅は3年間、中高層住宅は5年間、固定資産税が2分の1になる減額措置が2年間延長されます。平成28年3月31日まで。
・認定長期優良住宅の特例措置、2年間延長。
耐久性、耐震性、維持保全容易性などに優れた認定長期優良住宅を取得した場合の登録免許税、不動産取得税、固定資産税の優遇措置が2年間延長されます。平成28年3月31日まで。
・居住用財産の買換え等に係る特例措置、2年間延長。
自宅を買換える場合に出た譲渡損や譲渡益に関して、優遇される特例措置が2年間延長されます。平成27年12月31日まで。
平成26年度の税制改正では大きなものはありませんでしたが、すでに決まっている税制改正の施行には注意しなければなりません。アパート経営や土地活用に関係する税制改正をあらためておさらいします。
・白色申告記帳義務化ー平成26年1月1日より
これまで、年間所得が300万円以下の白色申告者は記帳の義務がありませんでしたが、平成26年1月1日より、全ての方に記帳および帳簿書類の保存が義務化されます。これを機会に青色申告への切り替えをおすすめします。
・小規模宅地等の特例の要件緩和、二世帯住宅も適用可能にー平成26年1月1日より
小規模宅地の特例は自宅や事業用地の相続評価額が8割減額されるという特例です。しかし、要件の厳格化により、原則、同居している相続人に限られていました。しかも、完全分離型の二世帯住宅は同居とみなされず適用外でしたが、要件緩和により、適用されるようになりました。
・相続税の基礎控除縮小ー平成27年1月1日より
相続税の基礎控除縮小は、小規模宅地の特例の要件厳格化と同様、課税対象者が増加すると言われている税制改正です。その施行時期が、いよいよ、約1年後に迫ってきました。基礎控除が4割引き下げられます。
現 行 5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数 |
・相続税の最高税率引き上げー平成27年1月1日より
基礎控除縮小と合わせて、相続税率も見直されます。税率区分が増え、最高税率が6億円超で55%となります。
・贈与税の税率見直しー平成27年1月1日より
贈与税率も見直されます。贈与税も最高税率が引き上げられましたが、直系尊属からの贈与は部分的に減税になっています。
・相続時精算課税制度の要件緩和ー平成27年1月1日より
相続時精算課税制度の贈与者の年齢が65歳から60歳以上に、受贈者の範囲が子および孫に拡充されました。
・小規模宅地等の特例の適用面積拡大ー平成27年1月1日より
小規模宅地等の特例の適用面積が240平米から330平米に拡充されます。さらに、事業用の土地がある場合は400平米をプラスして、最大730平米まで適用されます。なお、賃貸の不動産貸付用地は事業用地ではありません。しかし、居住用330平米を使い切れなかった場合は、その残った割合分を賃貸の土地に適用することができます。不動産貸付用地は50%の減額になります。
・所得税最高税率引き上げー平成27年1月1日より
先に少し触れましたが、所得税の最高税率が引き上げられます。具体的には、課税所得4,000万円を超えると45%の税率が課せられることになります。
これらのほとんどは、平成25年の税制改正で決まったものです。詳細は、マンスリーレポート「平成25年度税制改正のポイント」を参照してください。