2020年分の確定申告の所得税に関する変更点のポイントを解説します。国税庁の進める電子申告に関しての2021年度税制改正についても合わせて解説します。また、今年の確定申告会場での相談は、入場整理券が必要になります。入場整理券は当日各会場で配布、またはLINEを通じて発行されます。
2020年分の基礎控除は、38万円から48万円に引き上げられます。
ただし、所得制限が設けられることになりました。所得が2,400万円を超えると段階的に減少し、2,500万円を超えると、基礎控除の適用を受けることができなくなります。
つまり、所得が2,400万円以下の場合は減税、超えると増税ということになります。収入ではなく所得ですので、複数棟所有しているなど、大規模な賃貸経営の場合となるでしょう。
土地活用の収入と所得の違いは?(土地と住まいの税金講座)
また、基礎控除が48万円になったことで、配偶者控除の適用要件の一つ、配偶者の年間の合計所得は48万円以下になりました。
基礎控除が38万円→48万円に引き上げ。賃貸経営専業で、所得が2,400万円以下の場合は減税になる。
基礎控除は引き上げられましたが、サラリーマンや年金受給者の場合、給与所得控除・公的年金等控除が一律10万円引き下げられましたので、平均的なケースでは実質影響はありません。
ただし、こちらも所得制限があり、高額所得者は増税になります。
給与所得控除は、給与収入が850万円を超えると、子育て世帯等以外は給与所得控除額の上限が引き下げられたため、増税になります。
公的年金等控除は、年齢や収入によって変わってきます。例えば不動産収入など年金以外の年間所得が1,000万円を超え2,000万円以下の場合は控除額が20万円引き下げられ、2,000万円を超えると控除額が30万円引き下げられるなどの改正がありますので、高所得の年金受給者は増税になります。
賃貸経営の場合、他の所得との兼ね合いなどで増税となるのは、次のようなケースがあります。
・公的年金受給者で、不動産所得等が1,000万円以上の場合
・給与収入が850万円を超える場合
・所得金額が2,400万円を超える大規模経営の場合
公的年金、給与所得も高額所得者は増税となる。
青色申告特別控除の控除額が「10万円」「55万円」「65万円」の三段階になります。
控除額「10万円」の青色申告特別控除については、改正はありません。
控除額「65万円」を受けるには、従来の要件の他に、「e-Tax による申告(電子申告)または電子帳簿保存」が要件となり、満たすことができなければ「55万円」になります。
これまで、青色申告特別控除65万円を受けていた方は、「e-Tax による申告(電子申告)」または「電子帳簿保存」のどちらかを選択しないと、控除額「55万円」に引き下げられ、基礎控除10万円引き上げ分の減税効果がなくなってしまいます。
従来通り、青色申告特別控除65万円を受けるには、「e-Tax による申告(電子申告)」または「電子帳簿保存」のどちらかを選択しないと控除額が55万円に引き下げられる。
電子帳簿保存法とは、一定の要件の下で帳簿を電子データのままで保存できる制度です。この制度の適用を受けるには、帳簿づけを開始する日の3カ月前の日までに申請書を税務署に提出する必要があります。2020年分に限っていえば、申請の締め切りは終わりましたので、今から青色申告特別控除65万円を受けるには電子申告しかありません。
電子申告には、「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」があります。
マイナンバーカードを持っているのであれば、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書、決算書を作成し、そのデータをそのまま電子申告できるので簡単です。ブラウザもGoogle ChromeやMicrosoft Edgeが使用できるようになりました。
マイナンバーカードの読み取りにはICカードリーダーが必要ですが、ICカードリーダーは1,000円程度から市販されていますので、購入を検討してもよいでしょう。
また、「確定申告書等作成コーナー」と「マイナポータル」を連携させ、生命保険料控除証明書や住宅取得資金控除の証明書などの控除証明書が取得でき、申告書類への入力が省けるなど、少しずつ自動化が進んでいます。
「ID・パスワード方式」は、税務署で申請し、「利用者識別番号(ID)」と「暗証番号(パスワード)」を取得します。ID・パスワードは即日発行されます。あとはマイナンバーカード方式同様、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書、決算書を作成し、そのデータを電子申告します。ただし、「ID・パスワード方式」は暫定方式で、国税庁では「マイナンバーカード方式」を進めています。今後の利便性を考えてもマイナンバーカードを取得しておくことをおすすめします。
また、電子帳簿保存法は、2021年度税制改正で大きな改正がありました。これまで、制度の申請承認については、書類の作成などいささか煩雑な作業を要していたのですが、承認制度は廃止され、会計システムの厳しい要件も緩和されることになりました。これまでは、市販の会計ソフトであれば「電子帳簿ソフト法的要件認証」のロゴが目印でした。今後はなくても大丈夫となる可能性がありますが、人気の会計ソフトであれば、ほとんど承認ロゴはついていますので、そちらを活用するのがお勧めです。2022年1月1日から適用になります。
2020年分で、今から青色申告特別控除65万円を適用させるには、電子申告しかない。
今後の利便性を考えると「マイナンバーカード方式」がおすすめ。
パソコンに慣れている方であれば、会計ソフトをおすすめします。
賃貸住宅経営の場合、帳簿への記帳は入力件数も少なく、とてもシンプルなので、慣れている方であれば会計ソフトすら必要ないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、初心者の場合は、複式簿記での記帳や決算書の貸借対照表の作成は、かなりハードルが高いと言えます。会計ソフトを活用すれば、専門知識がなくても、自動で必要な帳簿や決算書を作成してくれます。
特に最近ではクラウド型の会計ソフトが主流になりつつあります。入力の方法も簡易化され、お金の出入りを記録していけば、必要な帳簿に自動転記されます。
また、銀行口座やクレジットカードと連携させることができ、例えば銀行口座に家賃が振り込まれると会計ソフトに自動で反映されるので便利です。もちろん、電子申告も会計ソフトの申告ツールを使って簡単に行えます。
賃貸経営の経理は、会計ソフトの活用が便利。クラウド型の会計ソフトが主流になりつつある。