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2020年度税制改正のポイント

税務・確定申告

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2020年1月 7日

2020年度税制改正のポイント

2020年度の税制改正大綱は、日本経済の成長や老後の資産形成を後押しするための内容が目立ちました。賃貸住宅経営や相続に関する大きな改正はありませんでしたが、これまでの優遇措置の期限延長などがいくつかあります。
民法改正も含め、賃貸経営や相続にかかわる環境は大きく変化しています。人生100年を見据えた自身のライフプランにとっても、また賃貸住宅の事業承継の観点からも税制動向に注目し、しっかりと把握することが必要です。

所有者不明の土地等に対する課税

所有者不明の土地を減らすため、登記とは別に、土地の遺産相続人を市町村に申告することが義務づけられます。2020年4月1日以後から適用。
また、所有者が不明でも、実際に使われている土地に対しては、使用者に固定資産税を課すことになります。2021年度以後の年度分から適用。

住宅ローン控除、他の特例との重複適用不可に

住宅ローン控除を適用開始した年から3年目に、前に住んでいた住宅を売却した場合、「居住用財産の3000万円特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」「特定居住用財産の買換え特例」との重複が可能でしたが(土地と住まいの税金講座参照)、重複適用ができなくなります。2020年4月1日以降の譲渡より

低未利用地を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の創設

空き家や未利用の土地が増えていることは、以前からの大きな課題です。創設されたのは、所有期間が5年を超える土地(空き家含む)を売却した際、譲渡所得から最大100万円を控除することができる制度です。譲渡所得には、所得税と住民税で20%かかりますので、最大20万円の税負担が減ることになります。ただし、売却額が500万円以下と比較的安価な土地が対象です。
期限は、土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日、または2020年7月1日のいずれか遅い日から、2022年12月31日までです。

国外財産調査制度の見直し

現在も海外に資産がある場合は、年に一回報告義務がありますが、さらに海外にある預金の入出金、不動産の購入・売却、賃貸借などの取引実態のわかる情報の保管が求められるようになります。義務ではないものの、提出を求められたときに提出できなければ、厳しい調査を受け、税負担が重くなるとしています。2020年以後の所得税、または2020年4月1日以後の相続等にかかる相続税について適用。

配偶者居住権等にかかわる譲渡所得の取り扱い

相続において、自宅以外に資産が少ない場合など、遺産分割で自宅を処分せざるを得なくなる場合があります。2020年4月より施行される配偶者居住権とは、自宅を「配偶者居住権」と「所有権」に分け、配偶者が引き続き自宅に住むことができるようにした権利です。(「相続が変わる!? 民法(相続法)改正のポイントは?」参照)

今回の税制改正で配偶者が、配偶者居住権が設定されている建物の所有権を取得するなどして、配偶者居住権が消滅し、その対価を得た場合は、譲渡所得として課税されることになりました。また、配偶者居住権が設定されている土地や建物を相続人が譲渡した場合の、取得費の計算方法が明確化されました。
配偶者居住権については、2019年の夏に通達があり、配偶者の死亡で消滅することになりました。つまり、二次相続で配偶者居住権の相続税等の課税はないことになります。この扱いについては、実際どのように実務に影響するのか、状況を見守る必要があります。

NISAの拡充、ジュニアNISAの終了

現在の一般NISAは2023年末で終了する予定でしたが、2024年以降は新・一般NISAとして、2028年まで期限を延長します。新・NISAの考え方は二階建て。一階部分の積み立て枠の年間20万円を利用すれば、株式投資などで二階部分の102万円を使えるようになります。年間限度額は合計122万円、最大で5年、610万円を非課税で投資できます。
20年間、年40万円の非課税枠がある「つみたてNISA」は投資期限を5年延ばし、2042年までになります。
また、両親や祖父母から子どもや孫のために投資できる「ジュニアNISA」は、延長はなく2023年末で終了します。

30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例は延長

賃貸オーナーが利用しやすい特例です。30万円未満の設備投資等(減価償却資産)であれば、一括して必要経費にできる特例は2年間延長され、2022年3月31日までとなりました。青色申告をしていることが要件になります。

土地・住宅税制に関する特例制度等の延長

■マイホームの買換えに係る特例制度、2年間延長
自宅を買換えた際に納める譲渡所得税のうち、自宅の買換えに充てた金額まで納税が繰り延べられる特例制度が2年間延長されます。2021年12月31日まで。

■マイホームの買換え等による譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例制度、2年間延長
自宅の買換えや売却で譲渡損が生じた場合に、他の所得と損益通算と繰越控除ができる制度が、現行のまま2年間延長されます。2021年12月31日まで。

■事業用資産の買換え特例、3年間延長
事業用の土地・建物を買換えて発生する譲渡所得の80%を繰り延べることができるものです。事業用資産は、10年を超えていれば賃貸住宅、駐車場でも大丈夫です。一部見直した上で3年間延長されます。2023年3月31日までとなります。

■新築住宅に係る固定資産税の減額措置、2年間延長
新築住宅のうち、一般の住宅は3年間、3階建て以上の耐火構造・準耐火構造の住宅は5年間、固定資産税が2分の1になる減額措置が、現行のまま2年間延長されます。2022年3月31日まで。

■リフォーム(耐震・バリアフリー・省エネ)した場合の固定資産税の減額措置延長
耐震改修した場合、固定資産税が1年間2分の1になる特例措置が2年間延長されます。2022年3月31日まで。
バリアフリー・省エネ改修した場合、固定資産税が1年間3分の1になる特例措置が2年間延長されます。2022年3月31日まで。賃貸住宅は対象外。

■認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の特例制度、2年間延長
認定長期優良住宅を取得した場合の登録免許税、不動産取得税、固定資産税の優遇措置が、現行のまま2年間延長されます。2022年3月31日まで。
また、認定低炭素住宅の所有権保存登記の軽減措置が2年間延長されます。2022年3月31日まで。

■住宅用家屋の登録免許税の軽減措置、2年間延長
住宅用家屋の売買では、以下の登録免許税の軽減措置が2年間延長されます。2022年3月31日まで。
・住宅用家屋の所有権の保存登記0.15%(本則0.4%)
・住宅用家屋の所有権の移転登記0.3%(本則2.0%)
・住宅ローン等にかかわる抵当権の設定登記0.1%(本則0.4%)

■不動産取得税の軽減措置、2年間延長
住宅用土地を取得した場合に係る不動産取得税の減額措置について、土地取得後から住宅新築までの経過年数を2年以内から3年以内にする特例措置が、現行制度のまま2年間延長されます。2022年3月31日まで。

■印紙税の軽減措置、2年間延長
不動産の譲渡に係る契約書印紙税の軽減措置が、現行のまま2年間延長されます。2022年3月31日まで。

■優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得特例、3年間延長
個人が優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合、譲渡所得の2,000万円以下の部分は譲渡所得の14%(所得税10%+住民税4%)になる軽減措置が2年間延長されます。本則は20%(所得税15%+住民税5%)。2022年12月31日まで。

自身のライフプランや事業承継の観点からも税制に注視すること!

少子高齢が進む日本が直面する課題は多々あります。特に2020年の税制改正大綱では、持続的な経済成長を促すための内容が注目されました。7年連続で過去最高となった大企業の内部留保の資金をいかに市場に流すか。ベンチャー企業や5Gへの投資で減税となる税制が創設されました。また、人生100年時代を見据えた、老後資産づくりへの支援ともいうべき家計に影響する内容が盛り込まれました。

一方、富裕層へは課税強化が見られます。5000万円超の海外資産を持つ富裕層の資産把握が強化されました。背景は、富裕層の所得税の申告漏れの増加にあります。2018事務年度の申告漏れ所得の総額は763億円、追徴税額は203億円で、統計を取り始めた2009事務年度以降で最も多かったようです。特に海外資産が申告漏れの4割を占めているとのこと。租税回避地といわれるタックスヘイブンも一時話題になりました。今後も実態把握については強化されるものと思われます。

また、2020年分より所得税の基礎控除が38万円から48万円に引き上げられます。ここだけ見れば減税ですが、賃貸住宅オーナーなど個人事業主の場合、所得が2,400万円を超えると基礎控除は32万円に、2,450万円を超えたら16万円に、2,500万円を超えたら基礎控除なし、となり増税となります。富裕層への課税強化は今後も注意が必要です。

さらに、青色申告特別控除65万円も電子申告または電子帳簿を採用しないと、55万円に減額されます。電子申告は以前より簡便化が進んでいますので、チャレンジしてみてもよいでしょう。


※今回のマンスリーレポートは「令和2年度税制改正大綱」(2019年12月12日に発表)に基づいて作成しています。正式には今後の審議を経て決定されます。場合によっては、内容が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

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