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2019年度税制改正のポイント

税務・確定申告

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2019年1月15日

2019年度税制改正のポイント

今年はいよいよ10月に消費税増税が控えています。2019年度の税制改正で注目されたのは、消費税増税後の景気後退を避けるための対策である自動車税と住宅ローン減税でした。その他、土地オーナーにも影響があると思われる相続・贈与に関する税制も改正が行われています。また、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことで(2022年4月1日施行)、対象となる税制の年齢要件が改正されました。アパート経営や相続など、土地オーナーが注目すべき税制改正のポイントを整理します。

住宅ローン減税3年間延長

住宅ローン減税は、年末のローン残高の1%が所得税から税額控除される制度です。控除額の限度額は、一般の住宅(長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外)の場合、年間最大40万円(長期優良住宅などは50万円)で、期間は10年間です。

今回の改正で、10年間は今と同じ仕組みで、11年目以降3年間延長されることになりました。11年目からの3年間の控除額は、購入価格の2%を3等分した金額と年末のローン残高(4,000万円を限度)の1%の金額とを比べ、低い方の金額が控除されます。
例えば3,000万円の物件を全額ローンで購入した場合、購入価格の2%を3等分した金額は20万円です。この金額に比べて、11年目のローン残高が1,900万円だとすると、1%は19万円なので、控除額は19万円です。11年目のローン残高が2,300万円だとすると、1%は23万円なので、控除額は20万円になります。
2019年10月1日から、2020年12月31日までに自ら居住する住宅に限ります。

■住宅ローン減税延長の仕組み

この他、住宅購入への支援策は、住宅ローン減税以外にも以下のものが決定済みです。ただし、賃貸住宅の新築・リフォームに関しては住宅ローン控除を含め支援策はありませんので注意が必要です。

・「すまい給付金」
消費税8%の場合、最大30万円(収入の目安510万円以下)が収入に応じて給付されます。消費税10%の場合は、収入の目安が775万円以下に引き上げられ、最大50万円が給付されます。適用には、自ら居住すること、床面積50m2以上であることなどの要件があります。

・「住宅資金の贈与税の非課税枠」
2019年4月より、最大限度額1,200万円から最大限度額3,000万円に引き上げられます。適用要件は今までと同様です。詳しくはこちらをご覧ください。

・「次世代住宅ポイント制度」
省エネや耐震性、バリアフリー機能のある住宅を新築・リフォームした場合に、新築で最大35万ポイント(35万円相当)、リフォームは最大30万ポイントがもらえます。2019年4月〜2020年3月までに請負契約・着工をし、2019年10月以降に引渡しをした自宅の新築、自宅・貸家のリフォームが対象になります。

教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与制度は対象を限定して延期

子や孫に、教育資金として上限1,500万円、結婚・子育て資金として上限1,000万円を非課税で一括贈与できる特例措置の期限が2年間延長され、2021年3月31日までとなりました。2013年に始まった制度ですが、一括で贈与できるとあって、祖父母から孫への贈与に活用されるケースが多いようです。

期限は2年間延長されましたが、格差や機会平等の観点から、要件が厳しくなっています。まず、教育資金、結婚・子育て資金どちらも、受け取る側の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、対象から外れます。教育資金に関しては、祖父母から未成年の孫への贈与が一般的だと思われますので、この要件はあまり影響ないでしょう。
また、教育資金は受け取る側が23歳以上になると、スポーツジムやピアノのレッスンなどの習い事には使えなくなります(2019年7月1日以降)。

成人年齢引き下げで年齢要件が改正

昨年、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が決まりました。それに合わせ、以下の年齢要件が改正されます(2022年4月1日以降に適用)。
・相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢を20歳未満から18歳未満に。
・相続時精算課税制度の受贈者の年齢要件を20歳以上から18歳以上に。
・直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率特例の年齢要件を20歳以上から18歳以上に。
また、NISAについての口座開設の年齢要件を20歳以上から18歳以上に引き下げ、ジュニアNISAの対象は20歳未満から18歳未満に引き下げられます(2023年1月1日以降に適用)。

空き家の売却による譲渡所得の特別控除は4年間延長

相続した実家などが空き家の場合、相続から3年以内に家屋を解体して土地を売却するか、耐震改修を行った上で家屋・土地を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例措置が4年間延長され、2023年12月31日までになりました(1981年5月31日以前に建築された家屋が対象)。
また、被相続人が亡くなる直前まで居住していたことが条件でしたが、要介護認定を受け、かつ相続開始の直前まで老人ホームなどに入所していた場合も対象となることになりました。本人以外が居住したり、貸したりしていないことが要件です。

民法(相続関係)改正に伴う、配偶者居住権、寄与分の取り扱い

昨年、相続に関係する民法改正案が国会で成立しました。2019年度の税制改正大綱では、「配偶者居住権」と「特別寄与料」に関する、評価の仕方や税務上の取り扱いについて明記されました。

■配偶者居住権(2020年4月1日以降に施行)
配偶者居住権は、配偶者に自宅の相続が発生した場合、配偶者が死亡するまで自宅に住むことができる権利です。一般的には使う必要がなさそうな権利ですが、例えば相続人が配偶者と子どもで、遺産が自宅しかなかったとします。子どもが法定相続分の2分の1の相続を主張した場合、自宅を売って現金にして分割するしかなく、配偶者は自宅を失ってしまいます。そこで、超高齢社会でのセーフティーネットの意味を含めて、自宅に居住する権利を法律で定めたものです。
自宅の建物と敷地は配偶者居住権と所有権に分けることができます。その場合の配偶者居住権等の評価額が定められました。
建物=建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数※)/残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
所有権は、建物の時価から配偶者居住権の価額を引いたものになります。

※存続年数とは平均余命年数のことで、配偶者が若いほど「配偶者居住権」の割合が大きくなるようになっています。敷地に関しても平均余命を考慮した評価額になります。

■特別寄与料(2019年7月1日以降に施行)
特別寄与料とは、被相続人に対して生前に介護などをしていた場合に、相続人でなくても請求できる金銭のことです。例えば被相続人の息子の嫁などです。特別寄与料に関しては、以下のように明記があります。
・特別寄与者は被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税される。
・相続人が支払うべき特別寄与料の額は、その相続人の相続税の課税価格から控除される。

特別寄与料の算定方法はまだ具体的にはなっていませんが、今後の課題になるでしょう。

民法(相続関係)改正案に関しては、バックナンバー「相続が変わる!? 民法(相続法)改正のポイントは?」で解説しています。ぜひ、ご覧ください。

個人事業者の事業用資産に承継制度創設

中小企業法人については、昨年度に相続税・贈与税の納税が猶予される事業承継税制度が創設されましたが、個人事業者についても、同様の相続税・贈与税の納税猶予制度が創設されました。事業に使う土地(面積400m2まで)や建物(床面積800m2まで)、また機械などの減価償却資産を承継する場合、贈与税や相続税が猶予され、事業を継続すると税負担はゼロになります。2019年1月1日から2028年12月31日までの10年間の時限措置で、廃業した場合は猶予していた税金を納める必要があります。
町工場や個人病院などを想定しており、賃貸住宅経営などの不動産貸付事業等は除きます。

相続税の納税猶予制度は、現行の小規模宅地の特例と選択になりますが、事業用の特定事業用宅地等については、要件が厳しくなりました。相続開始前3年以内に事業用として使用された事業用宅地は除外されます。
今年から賃貸住宅等の土地には3年しばりが適用されるようになりましたが、事業用宅地も同様の要件が適用されることになります(2019年4月1日以降に取得した特定事業用宅地等に適用)。

その他の土地・住宅税制

■土地の所有権移転登記の登録免許税の特例措置を2年間延長
土地の売買による所有権移転登記には、登録免許税が1.5%(本則2.0%)となる軽減措置があり、2年間延長されます。2021年3月31日まで。

■サービス付き高齢者向け賃貸住宅の固定資産税減額措置2年間延長
新築のサービス付き高齢者向け賃貸住宅の固定資産税について、新築後5年度分に限り3分の2を減額する措置が2年間延長されました。2021年3月31日まで。

今後、超高齢社会を踏まえた税制改正に注目

今回の税制改正では、消費税率の引き上げに伴う対応策に注目が集まりましたが、新たな土地活用、賃貸住宅建築に関する抜本的な税制改正は行われませんでした。
消費税増税に関しては税制改正よりも、増税そのものに注意する必要があります。賃貸経営は非課税事業ですが、設備投資やリフォーム、そして新たな賃貸住宅建築をする際には、消費税がかかります。特に賃貸住宅建築は費用が大きいだけに、消費税増税は大きな負担を強いられます。これを回避するには、2019年の3月31日までに建築請負契約を済ませる必要があります。
消費税増税と賃貸経営についてはバックナンバー「消費税増税で賃貸経営はどうなる!?」でも解説しています。

今後は、超高齢社会での課題を克服するための税制改正がより進むものと思われます。
相続に関する民法の改正も、超高齢社会の中で起きうる問題に対処したもので、それに合わせて税制も改正や制度の創設が必要になってくるでしょう。
今回の改正でも相続の寄与分に関する税制上の扱いが明記されました。超高齢社会では、介護はますます日常的になっていくと思いますが、被相続人に対して介護した人の寄与分もたびたび問題になっていました。寄与分は、これまで認められにくかったのですが、今回の法改正を機に相続人も含めて寄与分が認められやすくなるでしょう。

教育資金の贈与制度は恒久化が望まれていましたが、期間延長にとどまりました。条件が少し厳しくなりましたが、老老相続が当たり前となりつつある昨今の状況では、早く資産を若い世代に回すことは景気対策としても重要なことです。今後も生前贈与については優遇措置が続くものと思われます。

また、成人年齢が20歳から18歳に民法が改正されたことで、相続関係の制度の適用年齢が改正されています。細かいことですが、実務レベルではこの2歳の差は大きいでしょう。制度によって、使えるか使えないかが変わってきますので、注意してください。

消費税増税や民法改正など、賃貸経営や相続に関わる環境は大きく変化しています。税制改正を含めて、動向をしっかりと把握することが必要です。

※今回のマンスリーレポートは「平成31年度税制改正大綱」(2018年12月14日に発表)に基づいて作成しています。正式には今後の審議を経て決定されます。場合によっては、内容が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

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