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2022年度税制改正のポイント

税務・確定申告

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2022年1月11日

2022年度税制改正のポイント

2022年度税制改正大綱は、「賃上げ」と「住宅ローン控除」が焦点でした。相続に関する大きな税制改正はありませんでしたが、特例措置の延期など、賃貸経営にとって注意しなければならない改正があります。土地オーナーが注目すべき、いくつかの税制改正についてポイントを整理します。

住宅ローン控除4年間延長、控除率引き下げ

住宅ローン控除は住宅ローンの超低金利が続く中、毎年の控除額が住宅ローンの支払利息額を上回る、いわゆる「逆ざや」が指摘されていました。2022年度税制改正では、控除率が1.0%から0.7%となり、期間が4年間延長されることになりました。また、新築住宅を対象とした減税期間は、原則13年に延長されます。まずは、改正前後の概要を表にまとめました。

■住宅ローン控除の概要

さらに、カーボンニュートラル実現の観点から、認定住宅、ゼロエネルギーハウス(ZEH)など住宅の種類によって、細かく借り入れ限度額等が設定されています。

■新築住宅の借入限度額

住宅取得等資金贈与の非課税限度額は引き下げ

父母、祖父母等の直系尊属から、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税限度額が引き下げられます。期間は2年間延長され、2023年12月31日までの契約になりました。また、受贈者の年齢要件は「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられます。

■住宅取得等資金贈与の非課税限度額

固定資産税の据え置き特例、住宅地は終了

3年に一度の固定資産税の評価替えが2021年度に行われましたが、基準はコロナ禍前の2020年1月の公示地価でした。つまり、コロナ禍で地価が下がったとしても、評価額は上昇する可能性がありました。そのため、2021年度の固定資産税は1年限りの特例として2020年度の税額で据え置かれていました。
しかし、今回の税制改正で、商業地に関しては引き続き負担調整があるものの、住宅地の据え置き特例は延長されず、終了となります。
コロナ禍以前の3年間、都市部の住宅地は上昇を続けているため、2022年度の固定資産税額は上がる可能性がありますので、留意してください。

相続・贈与一体課税の税制改正は見送りに

相続税・贈与税に関しては、「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する」との方向性が打ち出されており、一部マスコミでも大きな改正があると報道されていましたが、結果、見送られました。しかし、今回の税制改正大綱でも、改めて「現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」との記述があります。
問題の一つは老老相続により、若年世代への資産移転が進みにくい状況にあることです。税制改正大綱では「資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である」としています。今後の改正に注目しましょう。

電子保存義務化は2年間の猶予

2021年度の税制改正で、これまで紙での保存が義務づけられていた領収書や請求書等について、電子取引の場合はデータでの保存を義務化することが決まっていました。義務化は2022年1月1日からの予定でしたが、周知が徹底されていないことなどから、2年間の猶予期間が設けられることになりました。
電子取引による帳票類は、ネットショッピングをした場合の領収書や、メールに添付された請求書などが該当します。電子保存義務化は、個人事業主を含む全ての事業者が対象です。

30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例は延長

30万円未満の設備投資等(減価償却資産)であれば、一括して必要経費にできる特例は2年間延長され、2024年3月31日までとなりました。青色申告をしていることが要件になります。

土地・住宅税制に関する特例制度等の延長

■マイホームの買換えに係る特例制度、2年間延長

自宅を買換えた際に納める譲渡所得税のうち、自宅の買換えに充てた金額まで納税が繰り延べられる特例制度が2年間延長されます。2023年12月31日まで。

■マイホームの買換え等による譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例制度、2年間延長

自宅の買換えや売却で譲渡損が生じた場合に、他の所得と損益通算と繰越控除ができる制度が、現行のまま2年間延長されます。2023年12月31日まで。

■新築住宅に係る固定資産税の減額措置、2年間延長

新築住宅のうち、一般の住宅は3年間(認定長期優良住宅5年間)、3階建て以上の耐火構造・準耐火構造の住宅は5年間(認定長期優良住宅7年間)、固定資産税が2分の1になる減額措置が、現行のまま2年間延長されます。2024年3月31日まで。

■リフォーム(耐震・バリアフリー・省エネ)した場合の固定資産税の減額措置延長

耐震改修した場合、固定資産税が1年間2分の1になる特例措置が2年間延長されます。2024年3月31日まで。
バリアフリー・省エネ改修した場合、固定資産税が1年間3分の1になる特例措置が2年間延長されます。2024年3月31日まで。賃貸住宅は対象外。

■認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の特例制度、2年間延長

認定長期優良住宅を取得した場合の登録免許税、不動産取得税、固定資産税の優遇措置が、現行のまま2年間延長されます。2024年3月31日まで。
また、認定低炭素住宅の所有権保存登記の軽減措置が2年間延長されます。2024年3月31日まで。

■住宅用家屋の登録免許税の軽減措置、2年間延長

住宅用家屋の売買では、以下の登録免許税の軽減措置が2年間延長されます。2024年3月31日まで。
・住宅用家屋の所有権の保存登記0.15%(本則0.4%)
・住宅用家屋の所有権の移転登記0.3%(本則2.0%)
・住宅ローン等に関わる抵当権の設定登記0.1%(本則0.4%)

■不動産取得税の軽減措置、2年間延長

住宅用土地を取得した場合に係る不動産取得税の減額措置について、土地取得後から住宅新築までの経過年数を2年以内から3年以内にする特例措置が、現行制度のまま2年間延長されます。2024年3月31日まで。

■印紙税の軽減措置、2年間延長

不動産の譲渡に係る契約書印紙税の軽減措置が、現行のまま2年間延長されます。2024年3月31日まで。

今後の焦点

2022年度の税制改正は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」を見据えて、行われました。土地オーナーとして、注目すべきは「成長と分配の好循環」でしょう。特に、相続と贈与の一体課税は、これから議論が本格化しそうです。

先にも触れましたが、政府の考え方は、「資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくこと」です。暦年贈与(110万円の贈与税非課税枠)が廃止されるとの見方もありましたが、単に暦年贈与だけがなくなるのではなく、同時に相続時精算課税制度の限度額(2,500万円)を引き上げるなどの策を講じることで、若い世代への資産移転を促すような制度設計が予想されます。いずれにせよ、相続税対策に大きく関わってくるだけに、この税制改正には、注意が必要です。

今回、電子保存義務化が2年の猶予期間が設けられましたが、電子帳簿を含めデジタル化は、大きなテーマです。電子保存義務化のように、帳簿についてもデジタル化を義務づけられたり、優遇措置がとられるようになるかもしれません。デジタルに関する知識の習得は必須になりそうです。

また、2023年10月1日から、消費税に関する新しい制度、インボイス制度が始まる予定です。賃貸経営のうち、居住用に関しては非課税ですので影響ありませんが、オフィスや店舗を併用している賃貸住宅の場合は関係してきますので、課税業者になるなどの対策が必要になってくるでしょう。

まだまだ、コロナの感染状況は予断を許さない状況ですが、経済の回復を見据え、税制も様々な改正が行われると思います。今後も、注視していきたいと思います。

※今回のマンスリーレポートは「令和4年度税制改正大綱」(2021年12月10日に発表)に基づいて作成しています。正式には今後の国会での審議を経て決定されます。場合によっては、内容が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

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