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2022年分確定申告の変更点と進む電子化

税務・確定申告

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2023年1月26日

2022年分確定申告の変更点と進む電子化

今年(令和4年分)の確定申告には、いくつかの変更点や注意したいポイントがあります。合わせて、この数年の変更点についても改めて解説します。また、確定申告のデジタル化も進み利便性が高まると同時に、「記帳水準向上」のための税制改正等にも注意が必要です。賃貸オーナーに関するポイントを解説します。

確定申告書様式が変わる!

今年の確定申告で大きく変わる点の一つに申告書様式の統合があります。これまで、申告書は、A、Bの二種類があり、賃貸オーナーの場合はBを利用していました。
今年からはAが廃止され、一つの様式に統合されます。見た目はBとほとんど変わりないので、違和感はないと思います。

申告用紙の統一とともに、修正申告がある場合に利用していた「第五表」も廃止されます。修正申告は、申告した税額が本来納付すべき額より少なかった場合に修正して申告するものです。「第一表」に修正申告用の欄が設けられ、そこに記載して修正申告できるようになりました。
新しい確定申告書は「第一表」と「第二表」がメインになります。

また2021年分の税務関係書類から押印が不要になりましたが、今回の確定申告書をはじめ、「開業届」「青色申告承認申請書」などにも押印の欄がなくなりました。

期限に間に合わない場合は、申請書提出が必要

確定申告の期限は2023年2月16日から3月15日です。この数年コロナ禍の影響により申告期限延長の緩和措置が取られていましたが、今年もコロナの影響があれば申告期限は延長されることになりました。ただし、注意が必要です。

これまでは、3月15日の期限を過ぎた場合は、申告用紙の上に「新型コロナウィルスによる申告・納付期限の延長申請」と一行記す簡易な方法でよかったのですが、今年はコロナの影響終了から2カ月以内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する必要があります。そこに、具体的な状況を書かなければなりません。例えば、本人や税理士がいつ感染し、いつまで療養していたので申告業務ができなかった等の内容です。

また、毎年確定申告会場に行って、相談しながら確定申告をしている方も少なくないと思います。今年も入場整理券の配布が会場で行われるようですが、LINEを通じたオンライン自動発行も可能なので、確認してみてはいかがでしょうか?
国税庁HPでは「チャットボット(AIによる自動回答)」や「令和4年分確定申告特集」などで詳しく解説していますので、それらを利用してe-Taxに挑戦してみるのもよいでしょう。

■自宅から納税者ご自身によりe-Taxで申告書を提出した方の数の推移

コロナの影響で3月15日の期限に間に合わない場合は申請書提出が必要になるので注意。国税庁のサイトを活用してe-Taxに挑戦するのもお勧め。

不動産収入の区分1、区分2とは?

確定申告書の作成について、昨年の確定申告(2021年分)から不動産所得の欄に「区分1」「区分2」の欄が増えました。

■不動産所得の「区分1」「区分2」の欄

「区分1」は国外に中古の不動産を所有していて、赤字になり損益通算の特例を受ける場合に「1」を記入します。それ以外は、何も記入する必要はありません。

「区分2」は、帳簿の記帳作成状況について、次の5つの中から該当する番号を記入します。
帳簿の作成については、今後、税制改正などで経理業務に大きな影響が出るかもしれません。しっかりと把握したいものです。

1.「電子帳簿保存法の規定に基づき、税務署長の承認を受けて、総勘定元帳、仕訳帳等について電磁的記録等による備付け及び保存を行っている場合」→事前に税務署に届出をしている場合です。
2.「会計ソフト等の電子計算機を使用して記帳している場合(1に該当する場合を除きます)」→ご自身または依頼している会計事務所が会計ソフトを使って記帳している場合です。賃貸オーナーの場合はここに該当する方が多いと思います。
3.「総勘定元帳、仕訳帳等を備え付け、日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)に従って記帳している場合(1及び2に該当する場合を除きます)」→会計ソフトを使わず、紙の帳簿に複式簿記で記帳している場合で、専門知識が必要です。
4.「日々の取引を正規の簿記の原則(複式簿記)以外の簡易な方法で記帳している場合(2に該当する場合を除きます)」→簡易な手書きの帳簿、またはパソコンでも会計ソフトではなく、エクセルなどで簡易な記帳をしている場合です。数十年も賃貸経営をしているベテランオーナーの中には該当する方がいらっしゃると思います。
5.「上記のいずれにも該当しない場合(記帳の仕方が分からない場合を含みます)」→ここに該当するということは、ほぼ帳簿がないに等しいことになります。

確定申告や帳簿のデジタル化が進んでいます。政府もペーパーレス化や管理のしやすさから、税制で優遇策を講じたり義務化を図ったりしています。今後も税制改正含め、後述する電子帳簿保存法などに注意が必要です。

帳簿に関する記帳の状況を記入する欄を創設。間違えると信憑性が問われるので注意が必要。

マイナンバーカードによる電子申告が便利に

確定申告や記帳業務においては、デジタル化が進んでいます。電子申告もずいぶん簡単になりました。
今回からはマイナンバーカード方式による電子申告がより便利になりました。これまでは、マイナンバーカードを読み取るのにICカードリーダライタが必要でしたが、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンがあれば読み取ることができます。「マイナンバーカード読取対応のスマートフォン」とは、いわゆるおサイフケータイなどのNFC機能のあるスマートフォンです。

また、マイナポータルとの連携機能を利用することで、確定申告に必要な控除情報のうち、ふるさと納税や公的年金等の源泉徴収票、国民年金保険料等の情報が取得できますし、国税庁HP「確定申告書作成コーナー」を利用すれば自動入力ができるようになりました。取得できる情報は、順次拡大される予定です。

この他、スマートフォンで青色申告決算書・収支内訳書が作成できるようになったり、納税もスマートフォンからPay払い(上限30万円)ができるようになったりと、利便性が高まっています。

■e-Tax利用状況の推移

また青色申告特別控除65万円を適用させるには、電子申告が最も便利で簡単です。
改めて青色申告特別控除65万円の適用要件をまとめると以下の通りです。
(1)事業的規模で経営し、正規の簿記(複式簿記)の原則により記帳を行い、かつ確定申告書類に貸借対照表および損益計算書を添付し、期限内に申告した場合。
(2)e-Taxによる電子申告または、電子帳簿保存を適用している場合。
従来の(1)の要件に、(2)が追加されています。

(2)の電子帳簿保存の適用についてですが、単に電子帳簿保存をするだけなら、事前の承認申請は不要ですが、65万円控除を受けるには事前に承認申請が必要です。申請も煩雑なため、電子申告をおすすめします。

国税庁HPに「令和4年分確定申告特集」が解説されています。動画による解説など、分かりやすくなっていますので、参考にしてください。

■令和4年分確定申告特集

確定申告書作成や電子申告の利便性が高まっている。うまく活用すれば確定申告業務の負担が軽減する。

電子取引のデータ保存、インボイス制度の緩和措置

帳簿のデジタル化については、会計ソフトの進歩もあり、税制改正でも「記帳水準の向上」を目指して、今後もいくつかの改正があると思います。
その一つが電子帳簿保存法です。企業を対象にした内容が多く、個人事業主の賃貸オーナーにとっては分かりづらいところもありますが、すべての事業者にかかわることなので、注意が必要です。
直近で影響があるのが、電子取引の際の電子データ保存義務化です。2024年1月1日よりスタートします。電子取引とは、請求書がメールにPDFで添付されていたり、インターネットで備品を購入したりした場合です。これまでは請求書や領収書は紙に出力して保存していたと思いますが、これからは原則データでの保存が義務づけられます。
ただし、2023年度の税制改正で、以下の場合は紙保存でもよいことになります。
・データ保存対応ができないことに相当の理由がある。
・データのダウンロードの求めにも応じることができる。

もう一つ、注目されているのが消費税に関する「インボイス制度」です。消費税が非課税である、居住用の賃貸住宅の場合は影響ありません。しかし、店舗、事務所、駐車場など賃料に消費税をかけている場合は影響があります。
この制度には、2023年度の税制改正を含め、様々な緩和措置が講じられていますが、制度が本格的にスタートすれば、いずれはインボイス発行事業者となって、消費税の納税負担を強いられることになるでしょう。インボイス制度は2023年10月1日よりスタートする予定です。スタートに間に合わせるための申請期限は9月30日までになりましたが、まだ詳細が決まっていないこともありますので、動向に注意が必要です。

記帳業務、申告業務のデジタル化、相続税・贈与税の一体化、インボイス制度など、様々な税務環境が大きく変化しています。専門知識がないと理解が難しい制度もありますので、専門家とよく相談することが大切になってきます。

電子取引のデータ保存義務化やインボイス制度は緩和措置が取られたが、今後決まってくる詳細な改正内容等については注意が必要。

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