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濃厚で酸味のきいたサワークリームを使った料理や「ピロシキ」など、素朴で温かみのあるロシアの味。

ロシアの食文化 ロシアの食文化

東西に長く、広大な国土を誇るロシア。中国、モンゴルなどの近隣諸国及びソ連時代の共和国など、多様な地域性がロシア料理に大きな影響を与えてきました。例えばヨーロッパに近く、肥沃な穀倉地帯として小麦などの穀物栽培や畜産が盛んなウクライナ共和国には、「キエフ風カツレツ」、「ボルシチ」、「ヴァレニキ(ウクライナ風水餃子)」などの名物料理があり、ロシア全体に広まっているという具合です。

ロシア料理の魅力は質素ながらも温かみのある素朴さにあります。料理には、そば・ライ麦などの穀物、きのこや野菜、魚が多く使われ、「シチー(スープ)」や「カーシャ(穀物粥)」に代表されるように煮込み料理が多いのが特徴です。乳製品も種類が多く、サワークリーム、サワーミルク、カッテージチーズなどがよく使われます。また、寒い地域では料理に油脂をたくさん使うため、油っこい料理に酸味を与え、さっぱりとした味わいに仕上げる工夫も見られます。

食料が不足する長く寒いロシアの冬には、保存食が欠かせません。春が来ると人々は「ダーチャ(菜園付きの質素な小屋)」に移動し、野菜や果物を栽培、収穫しては、ピクルスやジャムなどの多彩な保存食作りに励みます。また、夏から秋にかけてはきのこ狩り。ロシア人にとってきのこはとても重要な食材。たくさんのきのこを収穫し、乾燥、マリネ、瓶づめなどにします。そして冬にはペチカと呼ばれる暖炉に保存食を用いた温かい料理をかけ、寒さをしのいで春を待つのです。

厳しい気候条件に加え、ロシア料理が素朴な理由は、長く国教であったロシア正教の教えによる厳しい食事規制の習慣にあるといえます。春の復活祭までの40日間の断食をはじめ、「肉を断つ週」、「牛乳を断つ週」など、食事規制の期間は一年のうち200日近くにおよびます。このため、精進素材の家庭料理のバリエーションが増え、発達したのです。もとより農耕民族の国、大地の恵みを享受して暮らすロシア人の食文化の原点は、家庭料理にあると言えます。

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