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ミオイノシトールすぐに役立つQ&A

こちらは医療関係者の皆様への情報提供ページです。

Q01:ミオイノシトールは生体内のどのようなところに存在し、その役割は何ですか?

ミオイノシトールは主に細胞中に存在しており(血液中の数十倍)、遊離の形あるいはホスファチジルイノシトールの構成成分として広く生体内に存在しています1), 2)。このホスファチジルイノシトールが受容体活性化などにより分解され、イノシトール3リン酸となり細胞内の‘second messenger’として働くといわれています3)。そして糖尿病状態(高血糖)において、殊に神経系においては細胞内ミオイノシトールが減少(ソルビトールは増加)し、終局的にはNa, K-ATPase活性が低下し、神経伝達障害をもたらすと言われています1), 4)

Q02:何故ミオイノシトールは糖尿病患者尿中に高濃度に排泄されるのでしょうか?

健常者ではミオイノシトールはグルコースと同様、尿細管において大部分が再吸収され、血中濃度が一定に維持されています1),5)。ところが血糖が高くなると、ミオイノシトールは尿細管においてグルコースによる再吸収阻害を受け、尿中に排泄されます6)参考図)。

Q03:糖負荷前後での血中のミオイノシトールは変化するのでしょうか?

同意を得られた146名に75gブドウ糖負荷試験を実施し、糖負荷前後の血中ミオイノシトールと耐糖能の関係を調べた山縣らの報告によると、正常型、境界型、糖尿病型とも糖負荷前後の血中ミオイノシトール濃度には有意差はありませんでした7)

Q04:ミオイノシトールはどのように測定できますか?

『ルシカMI』は酵素法(酵素サイクリング法)を測定原理としており8)、本法は試料の前処理が不要で、汎用の生化学用自動分析装置による多検体測定が可能です。

Q05:ミオイノシトール検査とはどのようなものですか?

75gブドウ糖負荷前(0時間)と負荷2時間後に採尿を行い、尿中のミオイノシトールとクレアチニン(酵素法、Q9参照)を測定します。ミオイノシトールをクレアチニンで補正し、2時間値から0時間値を差引いた値(ΔUMI)を指標として用います。採血が不要ですので一度に多くの人の検査が可能です。

Q06:保険請求はできますか?

保険請求可能です。保険請求の際には、下記の点に注意してください。
注意点として、『ミオイノシトール(尿)は、空腹時血糖が110mg/dL 以上126mg/dL 未満の患者に対し、耐糖能診断の補助として、尿中のミオイノシトールを測定した場合に1年に1回に限り算定できる。ただし、既に糖尿病と診断されている場合は、算定できない。』(令和2年3月5日 保医発0305第1号)
また、保険点数は120点です。(D001 尿中特殊物質定性定量検査 13 ミオイノシトール(尿), 令和2年 厚生労働省告示第57号 )

Q07:クレアチニン測定試薬もセットなのでしょうか?

クレアチニン測定試薬はセットになっていません。別途購入していただき測定して下さい。またその場合、クレアチニンに特異性の高い酵素法の試薬であればメーカーは問いません。化学法の試薬は酵素法と値が異なる場合がありますので使用を避けて下さい。

Q08:糖負荷(75gブドウ糖負荷)は必ず行う必要がありますか?

ミオイノシトール検査は糖負荷後に耐糖能異常を検出する検査ですので糖負荷は必要です。また既定の食事後の尿を試料とした検討では、食事負荷時のΔUMIと糖負荷時のΔUMIに相関が認められました9)

Q09:糖負荷前後に2回採尿する必要がありますか?

糖負荷前後の増加量であるΔUMIを指標としていますので2回採尿する必要があります7)

Q10:尿検体中のミオイノシトールはどの位安定ですか? また防腐剤などを添加する必要はありますか?

冷凍であれば2年以上、冷蔵であれば2週間は安定です。尿糖の場合は、落下菌や細菌尿などの影響で短期間に濃度が低下する場合がありますが、ミオイノシトールの場合はこのような現象は認められておりません。防腐剤の使用は、同時に測定するクレアチニン測定結果には悪影響を与えますので避けて下さい。

Q11:患者さま向けのMI紹介ページはありますか?

はい、こちらのページにアクセスください。

 

参考文献

1) 中村二郎、堀田堯:ミオイノシトール 日本臨牀 56: 129-134, 1998.

2) Clements RS, et al : Myoinositol in diabetes mellitus. Effect of insulin treatment. Diabetes 26: 215-221, 1977.

3) Nishizuka Y : Calcium, phospholipid turnover and transmembrane signaling. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 302: 101-112, 1983.

4) Greene DA : Sorbitol, myo-inositol and sodium potassium ATPase in diabetic peripheral nerve. Drug 32(suppl 2): 6-14, 1986.

5) Clements RS, et al : The role of abnormal polyol metabolism in diabetic complication. In: Brodoff BN, Bleicher SJ, editors. Diabetes Mellitus and Obesity. Baltimore, London: Williams and Wilkins; 117-128, 1982.

6) Daughaday WH, et al : The renal excretion of inositol in normal and diabetic human beings. J Clin Invest 33: 326-332, 1954.

7) 山縣文夫 他:75gブドウ糖負荷試験時の尿中ミオイノシトールの測定-正常型、境界型、糖尿病型患者尿の比較とカットオフ値の設定-. 医学と薬学 52(6): 975-980, 2004.

8) Yamakoshi M, et al : Determination of urinary myo-inositol concentration by an improved enzymatic cycling method using myo-inositol dehydrogenase from Flavobacterium sp. Clin Chim Acta 328: 163-171, 2003.

9) 山縣文夫 他:食事負荷試験における尿中ミオイノシトールと耐糖能の関係 人間ドッグ 24:879-884.2009


 

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