化学装置材料の基礎講座

第17回 欧米の化学企業が集まって装置材料や設備管理に関する共同研究を行っている、MTIという組織があるそうですが、その活動内容を教えてください。

   MTI (Materials Technology Institute of Chemical Process Industries)は、 欧米の主要な化学会社など50数社が会員の化学装置材料や設備管理に関する研究機関で、 日本からも旭化成が会員となっています。創立以来、約30年経ており、会員共同出資の非営利で運用されています。

   主な会員企業は以下の各社です。

  • 化学会社
    DuPont, Dow, BASF, BP, ExxonMobil, Akzo Nobel, Lyondell, Air Products, 3M, Shell Chemical,
    P&G, ConocoPhillips, Eastman Chemical, Rohm and Haas, Monsanto, Asahi Kasei
  • 装置製作やエンジ会社
    DNV, Honeywell , Equity Engineering, Lloyd’s Register Capstone, FMC
  • 材料メーカ
    Special Metals, Allegheny Technologies, Haynes International, Sandvic

MTIのロゴ

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   また、以下のような活動を行っています。

  • 共通課題についての検討(プロジェクト)実施
    共通的な課題に関して、会員による検討テーマ設定、進捗管理、検討結果の妥当性評価のもとで研究機関やコンサルタントが検討業務を実施している。検討結果は報告書やソフトとして会員に配布され、会員会社で自由に活用できる。また、成果の一部は市販されている。
  • 会員相互の議論の場やネットワークの構築
    年に3回程度会員が集まり、互いの個別の材料や装置の信頼性のついてTACと称する会議が開催される。毎回、数十件のQ&Aが行われるが、共通性の高い課題に関しては分科会の設定や前項のプロジェクトが作られ検討が行なわれる。また、ホームページ場での情報交換も行なわれている。
  • 会費制の研究基金の創出
    会員会社より売上高に応じた会費を徴収し、報告書の販売収入等も含め年間約1.5億円程度を集め、活動の原資としている。
  • OBの活用と組織化
    化学会社や材料メーカのOBが事務局を構成し、プロジェクトの管理や検討の技術的な品質確保を行なっている。

   これまでの代表的な検討成果として以下のものがあります。

  • 種々の環境での材料選定(硫酸、硝酸、苛性ソーダ、アンモニア、一過式冷却水、フッ酸、リン酸)
  • 熱交換器、配管(保温材下腐食含む)、FRP、タンク底板等の非破壊検査方法と検査マニュアル
  • メタルダスティング、微生物腐食、浸炭等の劣化現象とその評価方法
  • リスク評価方法、RBI(Risk Base Inspection)等の設備管理
  • 教育用のビデオやソフト(腐食判定、ステンレス鋼、ボルトの種類等)

   このMTIやAPI(American Petroleum Institute)などの活動を通して、欧米では化学会社が共同で技術課題の検討や情報の共有化を積極的に行なっています。これにより、各企業の設備信頼性の向上および競争力強化を図っています。日本の企業も、これらの活動の実態を把握すると共に、これらの活動に参画し情報の活用やそれによる設備信頼性の合理的な向上に努めていく必要があるのではないでしょうか。

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