化学装置材料の基礎講座

第18回 繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic,FRPと略す)製タンクや配管は、種々の環境条件での使用中に劣化や損傷の顕在することがあります。その劣化・損傷の原因について教えてください。

   FRPが、種々の使用環境中で劣化する原因としては、以下の各項が挙げられます。

  1. 1.
    機械的損傷
  2. 2.
    化学的劣化(浸透、劣化、溶解)
  3. 3.
    外部環境からの劣化
  4. 4.
    製作時の欠陥

   以下で、これらの各項に関して、解説を加えます。

  1. 1.
    機械的損傷とは、過大な応力や繰り返し応力が負荷された場合に、き裂や破壊が生ずる現象です。これらの応力は、ノズルやアンカー固定部など応力集中部で高くなりやすいので、検査する場合はこれらの部位に注目して目視や浸透探傷などの評価を行なう必要があります。
  2. 2.
    化学的劣化には、内部環境から液やガスが浸透し、それによる樹脂や繊維の劣化、および溶解が挙げられます。内部溶液がFRPに浸透して、FRP内の層間の剥離や強化繊維(ガラス)を溶解させることもあります。これにより、FRPの強度低下を引き起こします。
    写真1に塩酸環境で長期使用したFRPの断面を示します。内面側より黒色に変色した層が生じ、同時に強度劣化も生じています。

    写真1.塩酸環境で使用したFRP断面

    写真1.塩酸環境で使用したFRP断面
    (黒色への変色が内面側より層状に進行している)

    溶解は、有機溶媒等でFRPの樹脂自体が表面から溶解し減肉する現象です。強化繊維の露出や樹脂からの剥離に至ることもあります。結果として、強度が低下します。
  3. 3.
    外部環境からのFRPの劣化としては「紫外線劣化」が代表的です。紫外線により樹脂が劣化し、雨水等の作用もあり外面から減肉につながります。これにより強化繊維が露出に至り、FRP外面が白色に変化することもあります。
  4. 4.
    製作時の欠陥としては、層間や表面の不溶着や割れ等があります。これらはFRP製作時の検査で顕在化していなくても、使用中に機械的な損傷の原因になったり、腐食環境で局部的な腐食の起点となり顕在化することがあります。これを防止するためには、製作後の検査を高精度で行なう必要があります。

   以上示したように、FRPには種々の劣化原因があります。このため、これらの劣化の兆候を目視観察や、必要に応じて非破壊検査(劣化形態により適用すべき検査方法が異なります)やサンプル採取しての破壊試験で評価し、健全性や寿命を評価する必要があります。

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