異常気象による自然災害、いつ来てもおかしくないと言われている大地震。年々、深刻化する自然災害に備えるには「自助」「共助」が防災・減災の要の一つであることは、これまでの自然災害から得た教訓です。それは、賃貸住宅であっても同じです。特に「共助」に関しては、近隣との関係性が希薄な賃貸住宅では、大きな課題となっています。いかに賃貸住宅のコミュニティを築いていくか、考えてみたいと思います。
まず、賃貸住宅の防災力とは何かについて、あらためて確認したいと思います。
一つは、「入居者の命を守ること」です。当たり前のようですが、強固なイメージのある鉄筋コンクリートの建物であっても、阪神・淡路大震災では多くの建物が倒壊しました。大地震の場合は、二次災害の火災にも気をつけなければなりません。
建物の耐震・耐火性能については、あらためて確認しておくことが大切です。
このことは次に大切な「入居者の暮らしを守る」ことにつながります。
大地震が起きた場合、耐震・耐火性能の高い建物については「在宅避難」が優先されます。仮にライフラインなどの復旧が遅れ、避難生活が長期化したとしても、避難所よりも自宅で生活できれば、精神的には大きな安心感があるでしょう。
そして、賃貸経営にとっては、早く修復できることがその後の経営に大きく影響します。「経営の維持・継続」、それは同時に「入居者の早期生活復旧」です。災害が発生しても、入居者の暮らしを守り、賃貸経営が継続できること。それが、賃貸住宅に求められている防災力なのです。
入居者も賃貸住宅の防災力については意識し始めています。部屋選びの際には「災害に対する強さ」が決定要因になったと77.8%の人が答えました。
災害が発生しても、入居者の暮らしを守り、賃貸経営が継続できること。それが、賃貸住宅に求められている防災力。
阪神・淡路大震災での大きな教訓の一つが地域のコミュニティの存在です。災害時、多くの人命を救ったのは、消防隊や自衛隊だけではなく、コミュニティ、つまり近所の人々による「共助」が大きかったと言われています。ただし、近所づきあいが希薄な賃貸住宅では、コミュニティを形成するのは難しく、「共助」を促すのは難しいとされてきました。
しかし、賃貸住宅であってもゆるやかなコミュニティが形成され、「共助」が促されているケースが多く見られるようになっています。いくつか、その例をご紹介します。
コミュニティをコンセプトとした賃貸住宅の場合、同じライフスタイルを持った入居者に限定することで、自然とゆるやかなコミュニティが形成されます。
入居者を女性限定として防犯・防災性能を高めた賃貸住宅「ヘーベルメゾン New サフォレ」もその一つです。一人暮らしの賃貸住宅では、コミュニティは敬遠され匿名性が求められると思われていますが、調査の結果、一切の関係性を否定しているわけではなく、「顔は知っている」程度の関係性はあったほうが良く、「共助」の意識も高いことが分かりました。
そこで、「Newサフォレ」では、入居時に「マナー同意書」にサインすることを条件としています。「マナー同意書」には、マナーを守ることや防犯・防災上も、何かあったときは助け合うといったことが書かれています。入居者の潜在的な「共助」の意識を"見える化"したのです。入居者からも「住んでからの安心感が高まる」と高い評価をいただいています。
子育て家族を対象とした賃貸住宅「ヘーベルメゾン 母力」では、入居者同士が子育ての不安や悩み、楽しさや喜びを共有し、交流が盛んなため、コミュニティも自然に育まれています。ここでも「共助」の意識を確認するために、住民憲章「子育てクレド」を定め、入居時に賛同していただいています。
これにより、子育ては「みんなで見守る」「分かち合う」という意識が高まり、賃貸住宅の防災や防犯の機能を高めています。
コミュニティ賃貸住宅では、「共助」の意識を高めるために、賃貸住宅のコンセプトや生活ルール、「共助」の意識を明文化し、契約時に賛同してもらい入居してもらう。
賃貸住宅でコミュニティを形成するには、コミュニティの形成をサポートする専門のスタッフの存在も欠かせません。
「母力」では、お母さん業界新聞社「お母さん大学」と旭化成不動産レジデンスとの共同運営による「BORIKI倶楽部」があり、イベントや新聞による情報発信を行っています。その他の例もご紹介します。
コミュニティのある賃貸住宅として、早くから注目されていたのがペット共生型賃貸住宅「ヘーベルメゾン プラスわんプラスにゃん」です。「ペットと共に生きる」という価値観を持った入居者が集まるため、どの部屋にどんなペットが入居しているかを自然と把握するようになり、ゆるやかなコミュニティが形成されています。
ペット共生型賃貸住宅が増え始めたのは10年ほど前になります。それ以前もペットニーズは高かったのですが、なかなか増えませんでした。その要因の一つが管理の問題です。ペットに対する適切な管理・運営ができなかったのです。
「プラスわんプラスにゃん」では、ペット専門のスタッフが、ペットの入居審査も行います。ペットにしつけができているかどうかを確認するのです。
入居後は、「+わん+にゃん倶楽部」という入居者様向けサイトで、ペットのお役立ち情報やペット紹介などの情報発信とあわせて、専属獣医師やドックトレーナーへの無料相談もしていただけます。さらに、しつけ教室やペットの防災といった専門のイベントを開催し、コミュニティ形成をサポートしています。
(コロナ禍が収束するまでは、オンラインイベントを開催予定です)
元気なシニア向けの賃貸住宅も、ニーズが高かったものの普及が遅れていました。やはり、管理・運営の面で課題があったからです。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が、その一端を担うはずでしたが、実質的には施設タイプのものが多く、元気なシニアのニーズを満たすものではありません。
「ヘーベルVillage」は、元気なシニアが自由気ままに生活できることはもちろん、万が一の健康不安などにも対応できるサービスが整っています。例えば、社会福祉士などによる定期訪問やセンサーによる見守り駆けつけサービス、看護師による電話健康相談、連携医療機関の紹介などです。そして、コミュニティをサポートする茶話会などのイベントの開催。これらのサービスの実現には、介護事業者や地域医療機関、警備会社との連携があって、できることです。
コミュニティ賃貸住宅では、コミュニティの形成をサポートする専門スタッフとの連携が必要。
コミュニティの形成と共に、賃貸住宅で「自助」「共助」を促す設備や機器にはどのようなものがあるでしょうか。それを実現させたのが「ヘーベルメゾン 防災パッケージ」です。
例えば、住戸内にはローリングストックを促すパントリーを設けたり、壁面に家具固定用の下地補強を設置し「家具固定OK」のプレートを表示するなど、「自助」を促します。
そして、特徴的なのがエントランスに設けられた「防災ステーション」です。ここには、太陽光発電と蓄電池により、停電時にも使える非常用コンセントを設置しています。停電時には入居者がゆずり合いながら、スマートフォンの充電や、テレビ・ラジオからの情報収集、電気ポットによるお湯の確保などができ、まさに「共助」の場となります。
毎日これらを目にすることで、コミュニティの存在を感じながら、「共助」の意識も促すことにつながっていきます。
ヘーベルメゾン防災パッケージについては、バックナンバー「防災力で賃貸住宅の付加価値を高める」でも解説しています。ご覧ください。
コミュニティ賃貸住宅については、コチラをご覧ください。
賃貸住宅でも防災ステーションを設けたり、各部屋の設備の工夫で、入居者の「自助」「共助」を促すことができる。