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上昇トレンドが全国に広がる!「2019年公示地価」

市場動向

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2019年4月 9日

上昇トレンドが全国に広がる!「2019年公示地価」

2019年1月1日時点の公示地価が発表になりました。地価の上昇トレンドは続き、三大都市圏は6年連続の上昇、地方の住宅地も上昇に転じました。訪日外国人に人気のエリア、また首都圏ではこれまで地価が低迷していたエリアの上昇が目立ちます。国土交通省が発表した公示地価について、大都市圏ごとに見ていきたいと思います。

三大都市圏は6年連続の上昇、地方住宅地は27年ぶり上昇

三大都市圏の住宅地は6年連続の上昇、それ以上に強い動きを見せたのが地方中核都市の四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)で、こちらも6年連続の上昇となり、上昇幅も5年連続で拡大しています。
また今回特徴的だったのが、地方圏の住宅地がプラスに転じたことです。これは、1992年以来27年ぶりのことです。地方でも観光地が地価上昇をけん引していますが、その他、自治体による生活環境の整備や再開発が進み、地価を押し上げているようです。
これまで三大都市圏や地方四市で顕著だった、地価の回復基調が全国に広がっています。

商業地は、三大都市圏の中心部で過熱感があるといわれ、中心部の伸び率はやや鈍化しています。しかし、三大都市圏の平均で見ると6年連続の上昇、上昇幅も拡大し上昇基調を強めています。オフィス需要については、企業業績の改善が続く中、働き方改革等に対応したオフィス環境の拡張・移転の動きがあり、空室率は低下傾向が続き、賃料も上昇しているとのことです。加えて、訪日旅行客の増加によるインフラ、ホテル開発も旺盛で、法人投資家などによる不動産取得意欲が強く、商業地の地価は堅調に推移しています。
また、地方4市が三大都市圏を上回る状況は今年も続いています。

地価上昇の要因は、これまで同様、訪日旅行客の増加によるホテル・商業施設開発、堅調なオフィス需要、マイナス金利政策による投資マネーの不動産への流入などです。今回、全国の上昇率トップは、商業地、住宅地ともに外国人に人気のスノーリゾート・ニセコの麓、北海道倶知安町(くっちゃんちょう)です。もともと、地価が安いこともあり、昨年から地価が急上昇しています。

■三大都市圏公示地価の変動率推移

■2019年公示地価変動率(単位:%)

東京圏の傾向-住宅地、商業地ともに下町エリアが上昇幅拡大

これまで商業地は、主に都心3区(千代田、中央、港)を中心に地価が上昇していましたが、地価が高騰し、収益用不動産の利回りが低下しています。例えば、銀座エリアでは再開発事業も一巡感があり上昇率は大きく縮小しているといいます。
それでも区の平均で見ると、千代田区7.7%、中央区8.9%、港区8.8%と上昇し、上昇率もやや拡大しています。

今回上昇率が大きかったのは都心区に隣接し北東側に位置するエリアが多く、台東区11%、江東区9.7%、荒川区9.4%、北区、渋谷区9.0%でした。渋谷を除いて、いわゆる下町エリアです。商業地の変動率上位3位は台東区の浅草で、言わずと知れた観光地として、訪日旅行客に人気があります。国際通り周辺のホテル用地の需要が旺盛で、中には従来の価格から大きく乖離した取引事例もあるとのことです。

住宅地も同様の傾向が出ています。上昇率が大きかった区は、荒川区8.6%、台東区7.2%、北区7.1%、豊島区・文京区7.0%です。都心部への交通利便性が高いものの、これまで地価が低く割安だったエリアです。さまざまな住みたい街ランキングがありますが、北区・赤羽、荒川区・日暮里、足立区・北千住といった街の人気が上がっています。
各自治体も人口減少を食い止めるため、北千住のように大学を誘致したり、子育てのための助成や環境整備に力を入れていることも要因の一つだと思います。

■東京圏公示地価の変動率推移

■東京圏変動率上位ー住宅地 ■東京圏変動率上位ー商業地

名古屋圏の傾向-中心部の住宅地が急上昇

名古屋圏では、中心部の住宅地が大きく上昇しました。全国の上昇率トップ10内に5地点が入っています。名古屋圏以外は北海道と沖縄のリゾート地で、名古屋圏だけで見ても6地点が20%を超える大幅な上昇率です。
最も大きな上昇を見せたのが、名古屋市中区栄で昨年の9.8%から26.1%と上昇幅も大きく拡大しました。このエリアは、店舗、事務所、賃貸アパートが混在する地域で、多様な用途の需要が見られますが、栄中心部に近く交通利便性が高いことから賃貸マンション用地等としての需要が高い地域です。
次に上昇率が高かったのは、名古屋市中区上前津24.3%、名古屋市東区泉23.2%、名古屋市中区丸の内23.1%です。中区、東区は市内においてもマンション用地の取得需要が強い地域で、特に駅から徒歩圏のマンション適地については高値で取引されているとのことです。また、一宮市も名古屋駅への利便性が高く、中区、東区同様にマンション用地の取得需要が強い地域で、20.9%も上昇しています。

商業地は名古屋圏で4.7%上昇しました。名駅周辺は、リニア中央新幹線の開通を見込んで再開発が進み、地価が大きく上昇しました。今は複数の大型ビルが竣工し、名駅エリアの大規模ビルはほぼ満室稼働の状態で、テナントの平均募集賃料は対前年比4.3%上昇しているとのことです。

また、名古屋市以外でも、駅前再開発などで地価が上昇しています。例えば、豊田市は自動車産業が堅調で、豊田市駅東口の再開発が完成、ラグビーワールドカップ2019の開催地でもあり、市全体が盛り上がっているとのことです。

■名古屋圏公示地価の変動率推移

■名古屋圏変動率上位ー住宅地 ■名古屋圏変動率上位ー商業地

大阪の傾向-大阪、京都の商業地が大幅に上昇

大阪圏では、商業地の上昇が目立ちます。上昇率は6.4%で、東京圏、名古屋圏よりも上昇幅は大きくなりました。全国の商業地上昇率トップ10の中に、大阪府4地点、京都府3地点の合計7地点が入っています。昨年は大阪北部地震や台風21号があり、影響が心配されていましたが、地価への影響は短期的なものでした。

商業地で最も上昇率が高かったのは、訪日旅行客に人気のアーケード商店街・黒門市場で44.4%。全国で見ても北海道倶知安町に次ぐ2位の上昇率です。昨年、大阪府の最高価格地点がキタからミナミに変わりましたが、今年もインバウンド需要による影響で最高価格となり25.3%の上昇です。キタもオフィス需要が旺盛で26.7%上昇しています。
大阪市以外では、堺市北区のなかもず駅前の収益用マンション適地や賃貸マンション一棟が高値で取引されているとのことです。

京都は、もともと狭いエリアで建築条例も厳しく、再開発がしづらい中での用地取得競争が繰り広げられているだけに、地価も上昇しやすくなっています。ホテルは2020年オリンピックまでに、まだ数千室の部屋が不足しているといわれていますが、ホテル・旅館の新設スピードは鈍いようです。一方、小規模な簡易宿所は、少額投資で始められることもあり、他業種や個人の参入が大幅に増えていて、これも地価上昇の要因の一つとなっているようです。

大阪圏の住宅地は0.3%の上昇にとどまり、まだ横ばいといった印象ですが、エリアによっては大きく上昇しています。上昇率トップは大阪府箕面市で19.3%の上昇。北大阪急行の新駅予定地です。上昇トレンドが強まったのは京都府で、大阪圏上昇率トップ10の中で7地点が京都でした。

■大阪圏公示地価の変動率推移

■大阪圏変動率上位ー住宅地 ■大阪圏変動率上位ー商業地

地価上昇は今後も続くのか?

三大都市圏、地方中核都市がけん引してきた地価の上昇トレンドは、地方圏にも拡大しています。2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2025年大阪万博、2027年リニア新幹線開業、といった大イベントを控え関連するエリアは再開発が進み、地価を押し上げる要因となっています。
三大都市圏の中心部はいまだに上昇しているものの、利回りの低下から不動産投資マネーが訪日旅行客に人気の地方の観光地に流れています。
昨年から地価が上昇している北海道の倶知安町は、商業地、住宅地共に50%以上の上昇です。さらに投資マネーは第二のニセコはどこなのか注目しているといいます。

三大都市圏でも中心部から、周辺の地域に地価上昇トレンドは移っています。東京圏でも、商業地は銀座から渋谷、そして今回は浅草の上昇が目立ちます。さらに、住宅地も含めて北区や荒川区といった下町エリアが上昇基調を強めています。
要因は訪日旅行客だけに限りません。自治体などによる街づくりで再開発が進んでいるエリアは地価が上昇しています。どの自治体も人口減少に歯止めを掛けるべく、さまざまな人口流入を促す政策を打ち出しているのです。
これは、賃貸市場にも言えることです。これまで、東京圏では割安エリアとされていた下町に人気が出始め、賃料も回復傾向にあります。割安だった要因は、都心への交通の利便性は良いものの、街のイメージやネームバリューの低さからです。最近では、そういったマイナスイメージは払拭されつつあり、いわゆる穴場エリアが穴場ではなくなりつつある印象を受けます。

一方で二極化も進んでいます。都市部にあっても、駅から遠いエリアなどは地価が下落しているといいます。また、マンション市況を見ると、今回の公示地価調査では、供給過剰感のあった湾岸の大型タワーマンションの分譲動向は好調とあります。しかし、首都圏の2月の販売戸数は前年同月比で2カ月連続の減少で、月間契約率は65.6%と好不調の境目となる70%を下回っています。1戸あたりの平均価格は、首都圏全体で6,284万円、東京23区は7,841万円です(不動産経済研究所)。高値警戒感が出るのは否めません。

これまで、商業地の上昇が目立った地価動向ですが、じわじわと住宅地が上昇していることは事実のようです。二極化も進んでいるとはいえ、三大都市圏においては、今後も上昇が続くものと思われます。
アパート・マンションオーナーにとっては、住宅地の地価上昇は要注意です。公示地価が上昇すれば、おのずと夏に発表される路線価も上昇します。今後の相続対策にも大きな影響を与えることになるでしょう。今後も地価動向に注視していきたいと思います。

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