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2021年「基準地価」、2年連続下落も下げ止まり!?

市場動向

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2021年10月 5日

2021年「基準地価」、2年連続下落も下げ止まり!?

国土交通省から、7月1日時点の基準地価が発表されました。コロナ禍から約1年半、全国平均(全用途)は2年連続下落となりましたが、上昇地点も出てきました。特に東京、大阪の商業地は依然厳しい状況ですが、再開発が進むエリアや郊外の住宅地では上昇も見られます。三大都市圏の基準地価動向を見ていきます。

三大都市圏-大阪圏は下落続くも、東京圏・名古屋圏はプラスに回復

三大都市圏の商業地は、大阪圏が9年ぶりにマイナスに転じましたが、東京圏は横ばい、名古屋圏はマイナスからプラスに転じています。
インバウンド需要が大きかったエリアはもちろん、飲食店の多い繁華街は大きな影響が出ています。大阪道頓堀地区はマイナス18.5%、新宿歌舞伎町地区はマイナス10.1%です。一方、名古屋圏は製造業の回復や再開発が進み、『錦二丁目』はコロナ禍前の地価を上回るなど、回復基調が強まっています。

上昇幅は縮小しているものの地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の商業地は4.6%伸びました。特に上昇が目立つのが福岡圏です。全国上昇率10位のうち、7地点が福岡市、1地点が太宰府市です。福岡市では100年に一度と言われる「天神ビッグバン」とJR博多駅周辺の再開発が進み、周辺では賃貸住宅の開発も活発だといいます。

三大都市圏の住宅地は昨年7年ぶりに下落しましたが、グラフを見ても分かる通り、今回は回復の兆候が見られます。大阪圏を除き、東京圏、名古屋圏では、マイナスからプラスに転じています。
東京圏では郊外が住宅バブルの様相を呈し、株高の影響もあり富裕層のタワーマンション取得が旺盛。名古屋は経済の回復と共に住宅需要が高まっています。

地方四市の住宅地で目立ったのが北海道です。全国上昇率10位のうち1位の沖縄県宮古島を除いて9地点が北海道です。札幌市の南東に隣接する北広島市が2位から4位を占めていますが、2023年にプロ野球日本ハムの新球場が開業予定のエリアです。その他、札幌市は2030年度に北海道新幹線が札幌駅まで延伸予定で、駅周辺は再開発が進み、札幌市周辺の地点が全国上昇率10位内に並んでいます。

■基準地価の変動率推移

東京圏の動向-繁華街の商業地は下落も住宅地は回復傾向も

東京圏全体で見ると、商業地はコロナ禍の影響が大きく、0.1%プラスのほぼ横ばい。特に繁華街のあるエリアで下落が大きく、新宿・歌舞伎町は10.1%下落、銀座7丁目は9.0%の下落でした。商業地下落率上位10地点のうち、6地点は新宿区と中央区です。

やはり、コロナ禍による外出自粛、訪日外国人の減少で、飲食店が入居するビルの空室が目立ち、収益性も低下していることが要因の一つです。一方、これから開業をしたいブランドショップなどのテナントにとっては、めったに空きが出ない銀座の一等地に空きが出て、チャンスと捉えられているようです。
また、同じ繁華街でも、例えば東急池上線の池上駅前では3.3%、JR中野駅北口再開発エリアでは2.7%の上昇です。

東京圏全体で見ると、商業地で上昇率が高かったのは横浜駅周辺で上位3位を占めています。横浜市では、横浜駅周辺の再開発やみなとみらい21地区への企業・大学の進出などで上昇基調が継続しています。

住宅地に関しては、昨年7年ぶりに下落に転じましたが、今年は0.1%と回復しています。
昨年から言われている郊外人気は続いているようで、住宅地10地点のうち、6地点が千葉県、4地点が神奈川県です。上昇率1位は、市川駅から徒歩10分ほどの住宅地で5.3%上昇です。東京駅まで約20分、テレワークにも通勤にもほどよい距離が人気のようです。

また、東京都心でも開発の進む江東区有明が3.4%上昇、高輪ゲートウェイ駅に近い港区芝浦が2.6%上昇です。首都圏の新築分譲マンションの1~8月の平均価格は6,541万円とバブル期の水準を超えています(不動産経済研究所)。
住宅ニーズは衰えることなく、商業地よりも早く回復傾向を見せています。

■東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の地域別変動率

■商業地変動率上位-東京圏(単位%)

■住宅地変動率上位-東京圏(単位%)

■東京圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

名古屋圏の動向-商業地、住宅地ともに早くも回復傾向

三大都市圏の中でも、回復傾向が強いのが名古屋圏です。商業地、住宅地ともに昨年の下落から上昇に転じました。

商業地上昇率の上位3地点は、名古屋市中心部の錦です。1位の『錦二丁目』名古屋鴻池ビルディングは11.5%上昇で、地価はコロナ禍前の2019年を上回っています。また『錦三丁目』も11.3%、『錦一丁目』も11.1%上昇しています。もともと錦はオフィス街と住宅エリアが共存し、インバウンドへの依存度が少なかったことが、早い回復の要因だと見られています。

名古屋圏は企業城下町とも呼ばれ、自動車産業の好調ぶりが地域経済を支え、商業地、住宅地の地価を押し上げています。住宅地は、名古屋圏も住宅ニーズが旺盛で、東京圏とは違い「職住近接」のマンションニーズが高いといいます。
住宅地の上昇率上位を見ると、錦、中区丸の内、自動車産業の多い刈谷市などの地点が上位を占めています。下の地図の色を見ても分かる通り、寒色系一色から暖色が増え(下落から上昇)、回復傾向が見て取れます。
ただ、8月以降、半導体不足や東南アジアのコロナ禍で、部品の調達が難しくなり、大手自動車メーカーも減産を強いられています。まだまだ、先行きが見えない状況です。

■商業地変動率上位-名古屋圏(単位%)

■住宅地変動率上位-名古屋圏(単位%)

■名古屋圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

大阪圏の動向-商業地は下落幅拡大

大阪の繁華街は、まだまだ厳しい状況が続いています。商業地で全国最大の下落率だったのは、道頓堀のデカ戎橋ビルで、18.5%の下落です。以前はインバウンド需要で大変な賑わいを見せていたエリアです。飲食店だけではなく、道頓堀近くのファストファッションのグローバル旗艦店も閉店しました。

全国下落率2位は難波の繁華街で、16.6%の下落。4位は、伝統的建造物の街並みや温泉が人気の観光地の岐阜県高山で10.9%下落、5位は京都の伏見稲荷大社周辺で、こちらも以前はインバウンドで賑わっていたエリアです。
大阪圏上昇率1位の箕面市船場東3-1-6は、大阪メトロ御堂筋線直通の北大阪急行電鉄延伸により、2023年に開業する「箕面船場阪大前駅」の予定地で、7.8%の上昇でした。

兵庫県の商業地でもインバウンド需要が強かった神戸三宮や元町は下落していますが、阪急逆瀬川や西宮北口、JR芦屋、伊丹などの駅前で上昇が目立ちました。神戸よりもインバウンドの影響が小さく、商業地が住宅地に近いため、コロナ禍の外出自粛の影響も受けにくいことが要因と見られています。

住宅地で上昇が目立ったのは、JR神戸線、阪急神戸線の灘区エリア。上昇率1位は新駅のオープンに伴って再開発の進むJR摩耶駅の神戸市灘区泉通です。

■商業地変動率上位-大阪圏(単位%)

■住宅地変動率上位-大阪圏(単位%)

■大阪圏住宅地

※国土交通省「令和3年都道府県地価調査」より 詳細はコチラ

行動制限緩和で、活気が戻れば地価上昇も

今回の調査は、コロナ第4波が収束したころの7月1日時点です。その後、第5波がきました。9月末には緊急事態宣言が解除されましたが、第6波が年明けにくるとの予想もあります。ウィズコロナの状況はしばらく続きそうです。

商業地、特に繁華街に関しては、行動制限がどの程度緩和されるかで地価への影響も変わるでしょう。ワクチン接種が進み、政府が行動制限を大きく緩和すれば、繁華街の賑わいは戻ります。ただし、経済全体で見ると、名古屋圏のように製造業などはグローバルな影響もあり、先行きの予測に注視する必要があります。

また、海外マネーによる影響も大きいといいます。2020年世界の都市総合力ランキングで、東京は、ロンドン、ニューヨークに次いで3位です(森記念財団都市戦略研究所)。コロナ禍で、大手企業が東京都内の本社ビルを売却するケースがありますが、買い手は外資系のファンドだといいます。東京の不動産は海外の主要都市に比べると割安で、海外投資家から注目されています。コロナ禍で諸外国に比べると、安全性や安定性が再評価されたともいえ、長期の視点で見れば今が買い時との判断をしているようです。

一方、住宅地に関しては、既に回復傾向が見られます。
東京圏ではテレワークや外出自粛の影響もあり、郊外の地価が上昇しています。2020年1~6月の統計(総務省住民基本台帳人口移動報告)では、神奈川県、埼玉県、千葉県の3県のみ、東京都から各県内に移住した人数が、各県から都内へ引っ越した人数を上回ったとのことです。
これで都心に人気がなくなったのかといえばそうではなく、都心の人気エリア、再開発エリアの住宅ニーズに衰えも見えません。テレワークの実施も限界があり、オフィス回帰も起こっているといいます。

今後は、個々のニューノーマルに合わせた住まいへのニーズが多様化してくると思われます。今後の賃貸住宅でも新たなニーズが出てくるかもしれません。今後の動向に注視していきたいと思います。

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