アパート経営・土地活用の知恵袋
マンスリーレポート 最新情報をレポートします

賃貸経営の事業承継対策

相続

タグ :

2020年5月12日

賃貸経営の事業承継対策

賃貸経営を次の世代にスムーズに引き継ぐには、どうすればよいのか?そんな土地オーナーの声を聞くことがあります。知識のない子世代が、相続で突然、賃貸経営を任されても戸惑ってしまい、手放してしまうケースも少なくありません。そうならないために、どんなことに気をつけて承継の準備をしていけばよいのか、ポイントを解説します。

後継者の育成-土地活用の有効性、そして事業計画を伝える

■後継者が賃貸住宅を相続したがらないことも多い

賃貸経営の事業承継者は、相続が発生して初めて賃貸経営の詳細を知らされ、右も左も分からないまま承継せざるを得ないケースも少なくないでしょう。中には多額の借入金だけに目がいき慌ててしまうこともあります。最近、税理士の方々から、子世代が不動産の相続を嫌がり、早めに現金化してしまうケースがあるという話を聞きます。ですが、そうすることで、かえって相続税の負担が増えてしまうことがあります。

■税理士と一緒に勉強会を開催

そうならないためにも、事前に賃貸経営について、後継者に学んでもらう必要があります。まずは、賃貸経営のメリット・デメリット、特に、事業計画、採算シミュレーションでキャッシュフローの推移をしっかりと説明しておくことが大切です。特に、借入金についての説明が必要でしょう。会社経営でもしていないかぎり、借入金と事業の関係性については、頭では分かっていても納得しにくいものです。
また、事業性や相続税などだけでは表せない、代々受け継いできた不動産に対する想いなども後継者に引き継いでおくことをお勧めします。

結果、それが遺産分割や相続税の納税対策に有効に働き、代々受け継いできた土地を守ることにつながることが伝えられればよいと思います。しかし、実際これについて直接伝えることは難しいでしよう。そこで、税理士と一緒に勉強会のような形で、第三者の専門家に説明してもらうのがよいと思います。

■賃貸住宅の計画から後継者を参加させる

また、これから新たに土地活用を行う場合は、後継者も一緒になって計画から参加してもらうのも良いと思います。一緒になって計画した賃貸住宅なら愛着も湧いてくるでしょう。

事業承継のポイントは、まず後継者を育てること。税理士と一緒に勉強会を開くなどして、
賃貸経営のメリット・デメリット、事業計画を後継者に教える。

実務の引き継ぎ-経理とスタッフの紹介

■帳簿の場所と税理士を紹介する

最も重要な実務は、経理を引き継ぐということです。具体的には、帳簿の作成と確定申告です。これは、まったくの素人であれば習得するのに時間がかかるかもしれません。しかし、一括借上げであれば、帳簿の作成はそう煩雑なことではありません。月に一度、記帳する時間をつくる程度でできてしまいます。
一括して税理士に依頼しているのであれば、税理士を紹介しておけば大丈夫です。少なくとも、帳簿はどんなものを使っているか、どこにあるかを伝えておく必要があります。

■所有と管理の分離で、管理面の引き継ぎは容易

また、もう一つ重要な実務として、賃貸住宅の管理・運営があります。しかし、これについては、一括借上げであれば管理会社が全て運営していますので、細かい管理ノウハウを一から伝える必要はありません。これも、一括借上げのメリットで、所有と管理の分離ができているので、管理面の引き継ぎが容易です。管理会社を伝えておけばよいでしょう。

■関係者は全員紹介する

その他、懇意にしている弁護士など、関係者を紹介しておくことも大切です。相続が発生して、初めて後継者が関係者と顔合わせをするケースも多いと思いますが、それだとお互いの信頼関係もそこからのスタートとなってしまいます。事前に人間関係ができていれば、その後の事業承継もスムーズにいくでしょう。

税理士、弁護士、不動産管理会社などには、事前に後継者を紹介し、人間関係を築かせておく。

相続発生時の引き継ぎ実務

仮に相続が発生した場合の、賃貸経営に関する事業承継に関する実務をまとめます。

■被相続人(亡くなった方)の準確定申告

相続が発生すると当然本人は確定申告ができません。そこで、亡くなった人(被相続人)の代わりに相続人が確定申告を行います。これを「準確定申告」といいます。
準確定申告では、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について確定申告します。期限は、相続の開始(死亡)を知った日の翌日から4カ月以内です。
気をつけたいのは、前年分の確定申告をする前に、相続が発生した場合です。その場合は、前年分と本年分の準確定申告が必要になります。前年分の期限は、3月15日ではなく相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内です。例えば2月10日に相続が発生した場合は、前年分、本年分ともに6月10日までになります。

■後継者の開業届、青色申告承認申請書

賃貸経営を引き継いだ後継者は、あらためて自分が開業した旨を「開業届」で提出します。また、青色申告をする場合は合わせて「所得税の青色申告承認申請書」、配偶者に給与を支払う場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。提出期限は亡くなられた日により変わります。準確定申告より短くなる場合もあるので注意してください。
■「開業届」「所得税の青色申告承認申請書」「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限

■賃貸借契約の署名と家賃

オーナーが代わったわけですが、あらためて入居者と再契約する必要はありません。しかし、賃貸借契約書には被相続人の署名が残っていますので、遺産分割協議後、後継者が決まったら賃貸借契約を作り直したほうが安心です。
また、家賃の振込みについて、被相続人の口座は死亡により凍結されますので、後継者の口座を早めに賃料支払者に連絡する必要があります。遺産分割協議が終わるまでは、相続人全員が共有しているとして、家賃は相続人全員に法定相続分の割合で分割しますが、後継者が代表して受け取るとよいでしょう。
敷金も相続しますが、同時に「敷金返還義務」も負いますので、入居者の退去時には状況に応じて敷金を返還します。

相続発生時にスムーズに事業承継するために、「準確定申告」「後継者の届け出」「家賃の振込み先変更の連絡」をすみやかに行うこと。

賃貸住宅オーナーの認知症対策

■万が一に備え「管理業務委任契約」を

以前、このコーナーでも解説しましたが、オーナーが認知症になると事実上、賃貸借契約が結べなくなります。その場合は、成年後見制度を活用することになりますが、家庭裁判所への後見申し立てから後見開始まで数ヶ月かかりますので、その間空室が出ても新しい賃貸借契約が結べないなど、経営がスムーズにできなくなる可能性があります。
そこで、代理権を授与する「管理業務委任契約」を活用する方法があります。「管理業務委任契約」は、アパートなど賃貸借契約(サブリース含む)の締結・解除、修繕等の「代理権」をオーナーが後継者などの代理人に授与し、万が一認知症になった場合でも、代理人が変わって契約等ができるように委任するものです。後継者育成の際に後継者と締結し、管理会社にもその旨を伝えておくのがよいでしょう。

「管理業務委任契約」についてはバックナンバー「認知症になったら、アパート経営はどうなるのか?」で解説しています。

■家族信託(民事信託)、任意後見制度の活用

「管理業務委任契約」は、財産管理全般を委任しているわけではありません。本格的には家族信託(民事信託)や任意後見制度を活用するのがよいでしょう。
どちらも、自分が元気なうちに、万が一の時に賃貸住宅の管理・運営を託す後継者を指定できる制度です。特に家族信託は管理だけでなく、運用や処分といったことまで柔軟に託すことができ注目されています。

■生前贈与と法人化で、一足早く事業承継

賃貸住宅を生前贈与や、法人化によって経営権を移転することで、相続を待たずに事業承継する方法もあります。どちらも専門性が高くなりますので、メリット・デメリットを踏まえて、行う必要があります。専門家に相談することをお勧めします。

「管理業務委任契約」「家族信託」「任意後見制度」「賃貸住宅の生前贈与」「法人化」などを活用した認知症対策が必要。

土地活用・アパート経営の資料プレゼント

セミナー・イベント情報を見る

窓口・WEB・電話で相談する

▲ページトップへ

マンスリーレポートトップへ