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やっておきたい賃貸経営6つの節税対策

税務・確定申告

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2023年2月 9日

やっておきたい賃貸経営6つの節税対策

賃貸経営には、規模や要件を満たすことによって様々な税制の優遇措置があります。それらをうまく活用すれば、節税メリットを最大限活用することができます。条件さえそろえば、今すぐにでも着手したい節税対策について解説します。

1-節税の王道は適切な経費計上でコツコツと

節税の王道は、たとえどんなに小さな支出でも賃貸経営で支出した経費はコツコツと計上していくことです。賃貸経営で発生する主な経費について表にまとめましたので、確認してください。

■賃貸経営の必要経費と認められるもの

どんなに小さな支出でも、コツコツと経費に計上することが、節税の王道。

2-青色申告のメリットを最大限活用する

確定申告には、白色申告と青色申告があります。特に事業的規模(5棟10室)の場合は、得られるメリットが大きいので必須といっても過言ではありません。事業的規模とは、経営規模が概ね一戸建てで5棟以上、賃貸住宅は10室以上であることとされています。ただし、10室に満たなくても相応の規模・収入であれば事業的規模とみなされる場合もあります。
青色申告を選択するには、青色申告の申請書を提出する必要があります。まだ白色申告の方は、今回の確定申告と一緒に申請書を提出することをお勧めします。申請書の書き方は、バックナンバー「確定申告実務編-青色申告承認申請書等の書き方」を参照してください。

青色申告のメリットと白色申告の違いは以下の通りです。
■青色申告のメリットと白色申告の違い

特に大きなメリットが青色申告特別控除です。控除額は要件によって、10万円、55万円、65万円と変わります。65万円の要件は以下の通りです。

(1)事業的規模で経営し、正規の簿記(複式簿記)の原則により記帳を行い、かつ確定申告書類に貸借対照表および損益計算書を添付し、期限内に申告した場合。
(2)e-Taxによる電子申告または、電子帳簿保存を適用している場合。

(1)のポイントは正規の簿記による記帳や貸借対照表の作成ですが、これらは会計ソフトを活用すれば、作成は比較的簡単です。
(2)の電子帳簿保存ですが、65万円控除を受けるには事前に承認申請が必要です。申請も煩雑なため、もう一つの要件である電子申告をお勧めします。

事業的規模なら、青色申告のメリットを最大限に活用すると、大きな節税メリットが生まれる。

3-事業的規模なら青色事業専従者給与で所得分散する

青色申告のメリットの一つに専従者給与があります。主に配偶者に給与を支払うものです。これを活用し、所得を分け合うことで所得税率が下がる「所得の分散効果」が得られます。要件は以下の通りです。

(1)青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること。
(2)その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
(3)年間6カ月を超える期間 (開業年度などで1年に満たない事業期間であれば、その期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

特に注意したいのが(3)です。文字通り専従者ですから、専従している必要があります。パートとの掛け持ちは認められないと考えたほうがよいでしょう。

また、給与額をいくらに設定するかですが、支払う金額は、妥当な労働の対価であれば、いくらでもかまいません。しかし、一括借上げの場合、日常的な業務はほとんどありません。帳簿整理などの経理業務と建物周辺の見回りや簡単な掃除(これも基本的には管理会社が行います)くらいです。このケースで月に何十万もの給与は認められないでしょう。あくまで、社会通念上、労働の対価として妥当かどうかが問われます。

経理上の負担で考えると、月に8万8,000円以上の給与を支払うと源泉徴収をしなければならず、経理業務に慣れていないと業務の負担が大きくなります。このあたりのことも考慮して設定するとよいでしょう。
専従者給与については、バックナンバー「アパート経営の節税対策-専従者給与編」で詳しく解説しています。参考にしてください。

事業的規模なら、配偶者に青色事業専従者給与を支払うことで、所得税率が下がる「所得の分散効果」が得られる。

4-サラリーマン兼業の賃貸オーナーは、損益通算で税金の還付を受ける

賃貸経営では開業した年など、減価償却費などの必要経費により、帳簿上赤字になることがあります。
この場合、給与所得など他の所得があれば、不動産所得の赤字と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。
サラリーマンの場合、不動産所得の赤字と給与で源泉徴収された税金が相殺され、還付金として戻ってきます。

ただし、土地の取得に係わる借入金の利子は損益通算に含められません。不動産所得の計算のときに、土地取得分に相当する利子を除いた上で、損益通算を行う必要があります。

■損益通算のイメージ

サラリーマンと兼業の場合、賃貸経営の赤字と損益通算して税金が還付されることもある。

5-賃貸専業オーナーは加入すべき!? 小規模企業共済で所得税・相続税を節税

この制度は中小企業の退職金制度ともいわれ、廃業時に毎月積み立てた掛金が退職金として支払われる制度です。国の共済制度で、安心して活用できる節税対策の一つです。
主なメリットは次の2つです。

(1)掛金が全て所得控除できる。上限額は月7万円、年間84 万円。
(2)廃業時に退職金として積み立てた掛金が支払われる。
   退職金は他の所得とは別個に取り扱われ、節税効果が大きい。
   相続の場合は、死亡退職金として支払われ、相続人×500万円まで非課税となる。

(1)については、最大84万円所得控除できます。つまり、必要経費が84万円増えたのと同じ節税効果が生まれます。
(2)については、賃貸経営で廃業することは少ないため、実際は相続の死亡退職金となるでしょう。この場合は、相続人×500万円まで非課税となり、相続対策としてもメリットがあります。

なお、不動産貸付業の場合は、小規模企業共済の加入要件に事業的規模であることと、本業であることがあります。サラリーマンと兼業の場合は、加入できません。
加入手続きは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構の業務を取り扱っている委託団体(商工会議所、青色申告会など)、または金融機関(都市銀行、信託銀行、信用金庫など)の窓口で行います。

小規模企業共済は、節税メリットが高い。掛金が全額所得控除になり、相続時に死亡退職金として支払われると相続人×500万円まで非課税となる。

6-「課税所得800万円」から考える法人化

賃貸経営の規模が大きい場合は、法人化したほうが節税メリットが生まれるケースもあります。
法人化の形態としては、賃貸住宅を所有する会社を作ることが主流です。この場合、個人所有の建物を会社に売却するか、初めから会社名義で建物を建てるかのどちらかになります。以前は不動産管理会社を設立するパターンもありましたが、管理費用だけでは売上が低く、効果は限定的です。

法人化の主なメリットは次の通りです。
(1)所得税の節税がはかれる
家族を社員にすることで所得分散の効果があります。給与には給与所得控除があり、節税効果を高める要因の一つとなっています。
(2)相続税の節税や承継がスムーズ
家族に給与を支払うことは、相続対策上も生前贈与と同じ効果が得られます。
また、個人の場合、相続が発生すると手続きが完了するまで銀行口座が凍結することがありますが、法人の場合は会社の口座なので、凍結されることはありません。

法人化のメリットを享受できる経営規模はどのくらいなのか、という質問が多く寄せられます。一概には言えませんが、おおよそ「課税所得800万円」が分岐点のようです。

法人化については、「アパート経営の基礎知識:経営の法人化編」で詳しく解説しています。参考にしてください。

課税所得が「800万円」を超えると法人化したほうが節税効果が高くなる。

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