2021 年の都市型住宅考

都市生活を豊かにするロングライフハウス

STUDY

平成の時代を通じてあらためてわれわれ日本人は、災害大国に暮らしていることを思い知らされた。
災害対策は不可欠であり、とりわけ都市部での災害対策は、過密する住宅対策を考えることからはじめなければならない。
国内のハウスメーカーがより高い安全性を求めて強靭な躯体の家を開発しているのも、その対策を重視するゆえである。
弊誌の住宅関連ページは、つねにその点に留意したうえで毎月のコンテンツを提供することにしている。
なかでも、建材や躯体構造など徹底的に「マテリアルファースト」にこだわって家造りを行うヘーベルハウスは、いまある都市型住宅のなかでベストな選択だとわれわれは考えている。

 同時にヘーベルハウスには、災害対応力だけでなく都市に暮らすわれわれにとって最も課題となる「住空間」対応力が備わっている。
狭小敷地や変形敷地の多い都市部に一軒家を建てる場合、十分な「住空間」を得るうえで鍵を握るのは、いまやタテ空間をいかに創りあげていくかということだ。
わかりやすい好例住宅がある。
ヘーベルハウスの3F建て住宅FREXのなかで都市型狭小住宅として考案された「TOWNCOMPO」(タウンコンポ)だ。

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ヘーベルハウスがデザインした狭小住宅「TOWNCOMPO」。
間口は3m強。奥行は約12m。
コンテナを3層に積んだような作りで、各層が完全独立し、それぞれの部屋の用途が明確になっている。
壁も柱もない空間を確保できるのは重鉄・システムラーメン構造の賜物。
よく見ると上階に行くほど南側が少しずつずれながら前にせり出した構造をしている。
このため3F奥の北側にプライベートバルコニーを設置することができたのだ

 都市部で売り出される狭小地は、敷地面積が大体25坪前後だ。
そのような限られた土地に建てる家は、当然ホソナガの構造になるだろう。
TOWNCOMPOは、構造壁を必要としない重鉄3F建てのメリットである"無柱空間"をたくみに生かし、狭小地の制限を逆手にとってワクワクするホソナガ住宅を生み出している。
弊誌がヘイルメリーハウス着工に向けて参考にしているTOWNCOMPOの「ケーススタディ#03」(下のイラスト参照)という住宅にクローズアップしてみたい。

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 家のサイズは、建築面積47.16㎡(14.3坪)、総面積123.60㎡(37.4坪)。
上階に行くほど前にせり出す構造になっているのが特徴だ。
1Fの正面(南側)にはピロティを設けていて、玄関から家屋に接続する道路までの距離を十分確保できる。
そのピロティ空間は、カーポートとして活用できる。
カーポートは天井高をさほど必要としない。
このためあえて1Fの高さを抑え、2F南側のリビング空間をダウンフロア構造にしている。

 また、南側の建物間口いっぱいに全面開口のピクチャーウィンドウを設け、十分に外光を採り入れている。
いっぽう北側は、1Fには約7.5帖のフリースペースが広がっていて、ここをホームオフィスとして活用したくなる。
2Fはキッチン、さらに階段をつたって3Fに上がると、もっとも北側のポジションにアウトドアリビングを設けている。
このテラス空間に使用されるヘーベルウォールは近隣の視線を遮断できるだけでなく、自然光を照らし、柔らかい光を採りこむリフレクターの役割も果たしている。
北側であっても暗さやジメジメ感とは縁遠い作りになっているのだ。

 家全体が3層のコンテナによって構成されていて、限られた敷地内で豊かなライフスタイルが反映できるよう創意工夫がなされている。

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HailMaryこちらのコラムはHailMary7月号に掲載されています。

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