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借地権とはどんなもの?

借地

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2009年6月 1日

借地権とはどんなもの?

賃貸経営は、土地活用の有効な手段の一つです。節税対策にもなるため注目度や関心も高く、急に土地を相続することになって検討する人も多いでしょう。しかし、その土地が借地だった場合には注意が必要です。

借地の活用では、何よりもまず地主との話し合いが必要です。自分が使っている土地といっても、単独で活用方法を決められず、事前に地主と交渉して了解を得る必要があります。交渉が必要だということから、借地にまつわるトラブルがよく起こります。古くからの人間関係や、地域の付き合いにヒビが入ることもあるのです。契約関係に限らず、借地に関する法律や税金の取り扱いが多岐にわたり、分かりにくいことも一因かもしれません。多くの場合、事前の知識不足のために地主との交渉で無用の軋轢を生んでいるように思われます。

これから8回にわたって借地に関する基本的な知識をはじめ、事例を通して借地に関する留意点、借地の活用方法などを見ていきます。ぜひ、土地を有効に活用するためのヒントにしてください。

借地の法的な地位は大きく分けて2つ

借地の法的な地位には、大別すると「地上権(物権)」と「賃借権(債権)」の2つがあります。
まず、地上権とは、地主の所有権に準じる強い権利です。物権として登記をすることができ、所有権と同様に自由に利用することができます。その土地に建てた建物を、第三者へ転売したり転貸したりすることもできます。例えば、借地権付分譲マンションでは多くのものが地上権となっているようです。しかし、一般的には地主側がこうした強い借地権を設定することを嫌うため、地上権となっているものはわずかです。一戸建ての場合では、まず見ることがありません。以前から自宅で使われていた借地権の場合は、以下の賃借権がほとんどでしょう。

賃借権とは、賃貸借契約に基づく債権です。地代を払い契約を守っている限りにおいて、建物を建て、利用することができます。ただし、譲渡または転売などをする場合には地主の承諾が必要となり、その際、地主へ承諾料を支払うのが通例です。また、その土地に建てた住居などを建て替える際にも地主の承諾が必要です。

例えば、Aさんの所有する土地をBさんが借りたとします。このとき、Bさんが地上権を得ている場合には、Bさんは借りた土地の借地権(地上権)をCさんに売ることができ、その土地で賃貸経営を行うこともできます。しかし、Bさんが賃借権しか得ていない場合には、Cさんに借地権(賃借権)を売る、あるいはその土地に建てた自宅を建て替える際にも、地主であるAさんの承諾が必要になります。このように地上権と賃借権では、権利の強さはずいぶん違います。

借地権は相続税や贈与税の課税対象

借地権は、民法の上では上記のように制約のある権利ということになります。しかし、地代を払い建物を利用して維持し続ける限りおいては、逆に大変強い権利ともいえます。従って、借地権はその財産価値が認められ税法の上では大きな評価になるため、借地権といえども相続・贈与の対象となるわけです。

土地の相続税評価額の基準となる路線価を見ると、平米あたりの単価とともに、CとかDのアルファベットが付いていますが、これはその土地の借地権割合を示しています。国税局が相続税評価のために設定しているもので、商業地などのAで9割を最高に、B、C、D、Eと1割ずつ下がっていきます。住宅地ではC、Dの7割、6割が多いようです。それでも、土地の更地価格の過半の割合が借地権の評価となっています。便利な場所でまとまった規模の借地を引き継ぐとなれば、借地権割合で評価額が決まりますので、相続税の心配もしなければなりません。

しかし、税金の上では大きな評価になるといっても、第三者に売却しようとすれば、前述のように地主の承諾も必要ですし、取引価格はあくまでも売主、買主の交渉で決まるわけで、評価額相当で売れる保証があるわけではありません。

底地と借地はカップ&ソーサーの関係!?

このように、地上権や借地権が設定されている土地を「底地」と言い、また、底地の所有者(地主)が持っている所有権のことを「底地権」という場合があります。実はこの底地、その土地の1~6割程度の権利しか有していないという事実があります。

それもそのはず、「底地=更地の評価-(マイナス)借地権の評価」となるためで、底地だけでは収益を生むことが難しく、土地としての資産価値は低くなります。土地の価値は、その土地を利用する人がいて、その土地が価値を生んでこそ評価が上がるもの。つまり、借地権(人)あってこその評価であり価値なのです。このため、底地と借地権の関係は、カップ&ソーサーに例えられることもあります。

何かとトラブルが多いといわれる借地問題。実際、借地・借家紛争は、民事事件の過半数を占めるという話もありますが、そこには借地という概念が生まれた歴史的な背景や、地主と借地人という立場の違い、法律の内容など、様々な要因が絡んでいます。

しかし、借地をうまく活用することは、地主・借地人双方にとって多くのメリットがあります。そのメリットを受けるためにも、双方の権利を振りかざすのではなく、お互いの権利を知り、十分な知識や情報を持って事にあたりたいものです。

次回は、そもそもなぜこのような借地の問題が生まれるようになったのか、その背景と関連する法律について見ていきます。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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