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事例で見る「借地権と底地の交換」と「借地権の一部売却」

借地

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2009年12月 1日

事例で見る「借地権と底地の交換」と「借地権の一部売却」

前回は、借地権の名義変更に関する事例を取り上げ、借地権の名義あるいは借地上の建物の名義を変更する方法(地主への相談および許可を得ること、名義変更料の支払い)について紹介しました。

今回は、借地権と底地を交換することは可能かどうか、また借地権の一部売却を希望する場合はどうすればよいか、その手順について見ていきます。借地権(一部を含む)を手放すことで、どのようなメリットが望めるのでしょうか。

◆事例1◆ 借地権と底地を交換する

借地権と底地の交換は、地主が所有する底地と、借地人が所有する借地権とを交換して「借地権譲渡承諾書」に以上の項目が明記されていれば、、双方を土地の所有者とすることです。実際にはどのように交換するのか、事例を見てみましょう。

≪交換のきっかけ≫

fig01.gif借地人のBさんは、地主のAさんから100坪の土地を借りて自宅などを所有していました。このたび、借地人Bさんは自宅の建て替えを検討する際に、地主Aさんに相談して借地権と底地の交換を行い、土地を所有することを希望しました。

≪交換内容≫

fig02.gif100坪の土地を図のように分割して考えてみましょう。A-1、A-2を地主であるAさんの所有の土地として、B-1、B-2を借地人Bさんの借地権割合とします。そして、A-2の底地とB-1の借地権とを等価で交換します(仮に5対5の交換をしたとします)。

≪交換後≫

fig03.gifA-2とB-1の交換を行うことで、結果的に地主のAさん、借地人Bさんはそれぞれ50坪ずつ土地を所有することになりました。こうしてBさんは、自分の所有となった土地に家を建てることができました。

◆事例1・参考◆
1.交換差金とは

借地権と底地の交換を行う場合、交換面積について合意に達しない場合があります。そのようなときに、交換を成立させるため面積の差を補うお金として授受されるのが「交換差金」です。通常は、借地権と底地の交換に際して、互いに土地が等価であることに合意して「固定資産の交換の特例(所得税法第58条)」を適用する旨を申告すれば、実質上、譲渡所得税の課税はされません。ただし、交換差金を授受した場合は、その差金については土地の譲渡があったものとして課税されるので注意しましょう。

2.登録免許税と不動産所得税について

借地権と底地の交換を行うと、借地人は新たに交換取得した土地の所有権移転登記を行いますが、その際、登録免許税(国税)が課税されます。また、土地の取得に対しては不動産取得税(地方税)が、土地を取得した数カ月後に課税されます。なお、不動産取得税については、取得した土地に一定の建物を新築等した場合に、土地に関わる不動産取得税が減免される特例があります。

◆事例2◆ 借地権の一部を第三者に売却し、残った借地に建物を新築する

Cさんは、親から相続で引き継いだ100坪の借地に住んでおり、建物が老朽化してきたため建て替えを検討していました。しかし、借地面積が100坪と大きいため、建て替えに関する承諾料がかなり高額になる可能性がありました。また、地代の負担も大きかったため、Cさんは借地権の半分を売却し、残った借地に売却資金で自宅を新築しようと考えました。さて、このようなことは可能なのでしょうか?

◆事例2・回答◆ 地主に相談してみる

借地権の一部を売却することは、地主にとって特別不利になる事情がない場合は、一応は認められるものと解されています。また、地主が借地権の一部売却を拒否しても借地非訟の申し立てによって、地主に代わる許可を裁判所が出した例は多くあります。しかし、やはり話し合いによって地主の承諾を取ることがベストなので、まずは地主に相談してみるのがよいでしょう。

一部売却の承諾をもらうことができたら「借地権譲渡承諾書」を地主に発行してもらいましょう。この譲渡承諾書がないと、地主が借地権の名義変更を許可しているかどうかが不明になる上、どんな条件で土地を借りられるか分からないため、買い手を募ることもできなくなります。

なお、「借地権譲渡承諾書」には以下の事柄について条件を明記してもらい、地主の署名捺印をしてもらうようにしましょう。

・借地権一部売却部分の明示・特定(図面を添付することが望ましい)
・名義変更料(借地権譲渡承諾料)の金額の特定とその支払い方法
・借地権譲受人の事前承諾の有無
   ※借地権売買契約前に、地主が譲受人の面談を希望することもあります
・借地権譲受人が建物を新築できることと、新築できる建物の構造・種類の特定
・借地権譲受人が土地賃貸借契約を締結する際の契約書のひな型、および借地期間と地代、さらに特約がある場合のその内容
・住宅新築資金を譲受人が利用する場合には、そのローン実行の協力をすること

「借地権譲渡承諾書」に以上の項目が明記されていれば、借地権譲受人も安心して借地権を購入することができます。しかし、実際のところはかなり面倒な手続きになりますので、借地権の売買について経験のある不動産仲介業者に依頼することになるでしょう。いずれにせよ、地主の協力が得られなければ大変です。

◆参考◆ 借地権の境界が不明瞭な場合はどうするか

借地権の地境は不明瞭な場合がよくあります。特に一筆の土地に借地権者が数名いる場合は、土地賃貸借契約書上の借地面積と、実際に占有利用している土地の面積が一致していないことが往々にしてあります。借地権の一部を売却する場合には、地主に依頼して土地家屋調査士に境界杭を設置してもらい、借地の境を明らかにした図面を交付してもらうようにしましょう。そうすれば、借地権譲受人も安心して借地権を購入してくれます。測量費については、借地権者の事情に基づいて土地実測を行うので、借地権譲渡について地主の承諾を得ていても、折半にはなるでしょう。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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